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「とにかく観た方がいい」「傑作だと思う」今までなかった新しい“入れ替わり”映画、“東京国際映画祭”でも相次ぐ好評の声

  • 2025.11.11

ある日突然、同級生の男女の体が入れ替わってしまい、そのまま15年間も元に戻れず生きてきた2人。“入れ替わり”をテーマにした作品は多々あれど、長い年月、入れ替わったまま、お互いの人生を生きるというストーリーが斬新な、君嶋彼方の同名小説が映画化された。初共演となる芳根京子と髙橋海人が、感性と才能を生かした演技で観客の心を鷲づかみにする映画『君の顔では泣けない』が、2025年11月14日より公開される。本作は、第38回東京国際映画祭のガラ・セレクション部門に出品され、好評を博した。

SNSには「予告だけで涙腺崩壊」「結末がかなり気になる」といったコメントが上がり、公開前から期待が高まっている様子。東京国際映画祭で鑑賞した人からは、「今ある自分の生活を大切にしたいと思った」「傑作だと思う」「とにかく観た方がいい」といった感想も書き込まれた。

映画『君の顔では泣けない』

30年の人生のうち、半分を他人の体で生きている坂平陸と水村まなみ。高校の同級生だった2人の関係は、恋愛には発展せず、普通の友達とも違うが、2人にしか理解できない、唯一無二の間柄となっていく。

外見がまなみで中身が陸を演じるのは芳根京子、外見が陸で中身がまなみを演じるのは髙橋海人。10代の陸とまなみ役の西川愛莉と武市尚士は、オーディションで抜擢された。

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(C) 2025「君の顔では泣けない」製作委員会
ストーリー
高校1年生の夏、坂平陸と水村まなみは、プールに一緒に落ちた翌朝、体が入れ替わってしまう。必ず元に戻ると信じ、家族にも秘密にすると決めた二人。だが、“坂平陸”としてそつなく生きるまなみとは異なり、陸はうまく“水村まなみ”になりきれず戸惑ううちに時が流れていく。もう元には戻れないのだろうか。“自分”として生きることを諦め、新たな人生を歩み出すべきか ――。迷いを抱えながらも二人は、さまざまな人生の転機を経験していく。しかし、入れ替わったまま15年が過ぎた30歳の夏、まなみは「元に戻る方法がわかったかも」と陸に告げる…。
出典:『君の顔では泣けない』

キャスティングの条件は“絶対的な演技力”

2004年、15歳の時に体が入れ替わった陸とまなみ。2019年、30歳になった2人は、例年通り、喫茶店“異邦人”で待ち合わせ、仕事やプライベートといった近況を語り合う。これまで、陸はまなみの体のまま、実の親を亡くし、結婚して出産までをも経験。“まなみの人生”の大きな出来事を体験してきた。新しくできた家族のためにも、この体に留まるべきか否か悩み、まなみと話し合おうとするが、元に戻る方法を模索してきたまなみは、唯一と思われる“チャンス”をつかもうと陸に持ち掛けるが……。

これまで観てきた入れ替わりものは、どちらかと言うとコメディタッチの作品が多かったように思う。性差に焦点を当てていても、本作の陸のように、女性であるまなみの体で出産もするという設定の作品は、ほかには思いつかない。

原作者の君嶋は、映画化にあたって、監督と脚本を担当する坂下雄一郎から、コメディタッチにしないという方針を聞き、作品を理解してくれていると感じて託したという。

今回の映画化は、陸とまなみという難役を体現するということで、制作段階から大きな注目を集めた。本作のキャスティングの条件は、“絶対的な演技力”だったという。映画『Arc アーク』や『累 -かさね-』などで実績を証明済みの芳根と、テレビドラマ『だが、情熱はある』での演技が坂下監督の心をつかんだという髙橋が、見事な演技力を発揮し、制作陣を唸らせた。

芳根京子と髙橋海人の魅力的な演技

陸の人物像を内面から作ることに専念し、撮影前から陸としての時間を重ねたという芳根。中身が男性である陸が妊娠し、まなみにしか心情を明かせず、感情が溢れ出るシーンでの、芳根による陸の想いの強弱のバランスの付け方が秀逸だ。

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(C) 2025「君の顔では泣けない」製作委員会

髙橋は、脚本の読み合わせ段階から、誰が見ても“まなみそのもの”だったという。まなみは男性の姿で生きているが、時折り見せるまなみの苦しい本心を、髙橋が繊細に表現しており、映画を観ている間、何度も切ない想いが込み上げてきた。

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(C) 2025「君の顔では泣けない」製作委員会

King & Princeのメンバーとして絶大な人気を誇る髙橋だが、芳根と共に本作で俳優としての魅力を大いに発揮していると感じた。SNSでも「2人の演技の化学反応が楽しみ」「表情豊かな演技が観る人の心に深く響くはず」などの期待コメントが見られた。

話題を集める注目の共演者たち

陸の親友・田崎淳一役を、NHK連続テレビ小説『あんぱん』で注目され、映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』の公開も控える中沢元紀が演じている。中身は陸なのに、まなみとして惹かれてしまう田崎のシーンはユーモアがあって、ホッとできる要素となっている。

まなみ(陸)の結婚相手・蓮見涼役は、フジテレビ系ドラマ『波うららかに、めおと日和』でも芳根と共演した前原滉。穏やかで優しい涼と結婚し、子どもも生まれたことで、陸には涼を傷つけたくないという気持ちが芽生える。前原は、陸にそんな想いを抱かせる夫を好演しており、複雑な設定ながら、芳根と理想的な夫婦像を表現している。

陸の弟・坂平禄を演じるのは、映画『愚か者の身分』の林裕太。陸は実の親を亡くすが、まなみの姿であるがゆえに、家族に受け入れてもらえず、心を痛める。だが、大切な弟である禄と言葉を交わす瞬間があり、そのシーンでの林の好演に引き付けられた。

『君の顔では泣けない』は、15年間も入れ替わっているという驚きのストーリーではあるが、決して大げさであったり、ドラマチックすぎたりせず、静かに時が流れていくような作品に仕上がっている。とても素敵な映画なので、ぜひおすすめしたい。


『君の顔では泣けない』2025年11月14日(金)全国公開

出演:芳根京子、髙橋海人、西川愛莉、武市尚士、中沢元紀、林裕太、石川瑠華、前野朋哉、前原滉、ふせえり、大塚寧々、赤堀雅秋、片岡礼子、山中崇
原作:君嶋彼方「君の顔では泣けない」(角川文庫/KADOKAWA 刊)
監督・脚本:坂下雄一郎
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト:https://happinet-phantom.com/kiminake/
(C) 2025「君の顔では泣けない」製作委員会

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(C) 2025「君の顔では泣けない」製作委員会

ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP