1. トップ
  2. ファッション
  3. フェティコ、“親密さ”と“大胆さ”で切り開く5年目の新章【2026年春夏 東京コレクション】

フェティコ、“親密さ”と“大胆さ”で切り開く5年目の新章【2026年春夏 東京コレクション】

  • 2025.9.4

会場は国立代々木競技場第二体育館。事前にビューティブランド、スリーTHREE)の参加がアナウンスされていたが、ロビーではブランド設立15周年を機に今年の3月に発売されたジンが振る舞われている。そして、アリーナに設けられたパネルに覆われた空間に向かうにつれ、すっきりとした香りが漂う。クラシック音楽が流れる中、照明で真っ赤に染まった客席に置かれた資料によれば、「エッセンシャルセンツ R」の「04 SPIRIT OF EDEN」をベースにショーのために特別に調香されたという。また、ランウェイのメイクにはフェティコFETICO)とコラボレーションした目もと、チーク、リップ、眉に使えるカラーバーム「カラーカスタード」が使用される。デザイナーの舟山瑛美による、「by R」の支援への感謝を綴った手紙も添えられていた。

やがて不穏なムードが漂う音楽へと変わり、照明が切り替わってそこが真っ白な空間であったことがわかる。そしてファーストルックが登場した。

冒頭は黒をメインとし、レースを多用したランジェリーの要素を感じさせるルックが続く。目隠しやヴェールなどで顔を覆ったモデルもいて、ファッションウィーク期間中に配布されている業界紙で舟山が着想源として名前を挙げていたイリナ・イオネスコの作品を彷彿とさせる。1970年代、幼い実の娘エヴァをモデルに官能的な写真を撮影して話題となり、のちに女優となったエヴァから児童ポルノとして訴えられた、というスキャンダラスなフォトグラファーだが、そのタブーを犯しかねない危うさのようなものも感じられた。

ショーの後取材に応じた舟山によれば、いつもより肌の見せ方が大胆なルックが目立ったのは、イリナがランジェリー姿の女性を多く撮影していたことに加え、今年ワコールが手がけるブランド、ユエ(YUE)とランジェリーを共作したことが影響しているようだ。

「もともとランジェリーのディテールや素材感がすごく好きなのですが、ユエさんとの共作が楽しく、美しい仕上がりだったので、ランウェイでも見せたいと思いました」

着想源としてもう1人挙げたのは、昨年逝去したドイツの現代美術家、レベッカ・ホルン。「羽根や角などで体を拡張させようとしたり、“遠くへ行きたい”という欲望を表現していましたが、放射状に広がる造形や、ストイックな姿勢にすごく惹かれました」。そこで、羽根や放射状のシルエットを意識。また、ランウェイを白いパネルで囲ったのは、レベッカ・ホルンの作品に似つかわしい「美術館みたいな、緊張感のある真っ白な空間」を目指したからだという。

イリナの作品の「退廃的で、1920年代のフラッパーのムードや、デコラティブな要素がある」部分に注目したという舟山。その世界観をダマスク柄でも表現したようだが、それらはまさにフェティコらしさを形成している点で、今季はリバーレースの上からさらにサテンの羽根のモチーフを刺繍するなど、手の込んだディテールで凄みを増していた。

広大な体育館の一部しか使用しなかったのは「できるだけ近くで見てもらい親密さを感じてもらいたかったから」で、「ファンと親密に関われる場所も作っていきたい」と言っていた舟山だが、一方でグローバルな展開も目標としているという。設立5年目にして揺るぎないブランドらしさを確立し、毎季その価値観に沿った着想源をピックアップしてアップデートしているように見えるフェティコ。ブランドを支える多くのファンのためにもリアルクローズとのバランスを取りつつ、ということになるのかもしれないが、今後も一層大胆で、迫力のあるコレクションを期待したい。

Photos: Gorunway.com

READ MORE

元記事で読む
の記事をもっとみる