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30年前、同世代バンドと一線を画した“軽やかなのに濃密な”ソウルフルソング 3度にわたり表情を変えた“ネオンを駆ける都会グルーヴ”

  • 2025.10.13

1990年代半ば、渋谷や新宿の街にはネオンがきらめき、深夜まで人々が行き交っていた。カフェバーからクラブまで、夜という言葉そのものがカルチャーの象徴のように響いていた時代。その空気に重なるように登場したのが、オリジナル・ラブのシングルである。

ORIGINAL LOVE『夜をぶっとばせ Let’s spend the night together』(作詞:小西康陽・作曲:田島貴男)――1995年4月26日発売

夜に響いたカバーの挑戦

『夜をぶっとばせ Let’s spend the night together』が世に広まるまでの道のりは、決して単純ではない。もともとはORIGINAL LOVEがインディーズ時代からライブで演奏していたレパートリーのひとつで、田島貴男にとって早くから温めてきた重要な楽曲だった。

やがて彼がピチカート・ファイヴに掛け持ちで参加することになり、1989年に発表されたアルバム『女王陛下のピチカート・ファイヴ –ON HER MAJESTY’S REQUEST–』に収録される。このときは小西康陽が新たに歌詞を書き下ろし、華やかなピチカート・サウンドの中で異彩を放つ一曲として形を得た。

その後、田島がピチカート・ファイヴを離れ、オリジナル・ラブに専念するようになると、楽曲は再び彼の手に戻る。1991年のアルバム『LOVE! LOVE! & LOVE!』に収録され、小西の歌詞をそのまま用いたセルフカバー的なかたちで世に提示されたのである。このバージョンでは、よりソウルフルで骨太なオリジナル・ラブのサウンドが加わり、同じ曲でありながら新しい輝きを放った。

そして1995年4月、レコード会社移籍にともなって発売されたベストアルバム『The Very Best of ORIGINAL LOVE』の先行シングルとして、三度この楽曲が姿を現すことになる。

インディーズ期から始まり、ピチカート・ファイヴを経て、オリジナル・ラブとしての確立まで。複数の文脈をまたぎながら繰り返しリリースされてきたこと自体が、この曲の持つ普遍性と魅力を物語っている。時代や環境が変わっても手放されることなく鳴らされ続けた楽曲こそ、まさにアーティストにとっての“核”なのだ。

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2019年、「プロ野球交流戦楽天対ヤクルト」で始球式を務めたORIGINAL LOVEの田島貴男 (C)SANKEI

洗練と遊び心が同居するサウンド

この楽曲の魅力は、都会的で洗練されたサウンドにある。洒脱なアレンジを伴いながら、田島ならではのソウルフルな熱が宿り、肉体的なグルーヴへと変貌している。

彼のボーカルは甘さと鋭さをあわせ持ち、夜の街を駆け抜けるように響く。ただのおしゃれなポップにとどまらず、身体を揺らしたくなる熱を放ち、クールさとエモーションの往復運動が、この曲の最大の魅力である。

1995年当時、J-POPは大衆化のピークを迎えていた。街のCDショップには新譜が並び、ランキング番組が日常の話題をさらっていた。その中でオリジナル・ラブは、独自のエッセンスをポップに落とし込み、同時代のバンド群とは異なる個性を示していた

『夜をぶっとばせ』は、田島にとって自らのルーツや仲間との関係性を示すと同時に、新たなステージへの布石となった。シングル盤リリース時はすでに『接吻 kiss』や『朝日のあたる道 AS TIME GOES BY』で知られていたオリジナル・ラブ。言うならばこれは“音楽的アイデンティティの再確認”と呼べるシングルだったのだ。

夜を照らし続けるアンセム

『夜をぶっとばせ Let’s spend the night together』は、セールス面で目立った記録を残したわけではない。しかし、“夜”という映像を、時代を越えて響く楽曲へと昇華したことこそ大きな意義である。ライブで鳴り響く高揚感、クラブで流れるときの親和性、そして一人の夜に聴いたときの心地よさ。そのどれもが1995年の都会的な空気を甦らせる。

30年経った今でも、夜の街を歩き出したくなる衝動を呼び起こす、不思議な力を放ち続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。