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タワマン4階を購入も「本当にショックでした」4年後、40代男性を襲った“落とし穴”【一級建築士は見た】

  • 2025.10.26
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※ChatGPTにて作成(イメージ)

「南向きリビングだから日当たりも良好です」
その一言を信じて、Tさん(40代・男性・夫婦+子ども1人)は都心のタワーマンション4階を購入しました。
駅から徒歩3分、眺望はなくても、明るい南面の窓が決め手だったといいます。
周囲はまだ低層のマンションが多く、「都心でも落ち着いて暮らせる」と期待を膨らませていました。
しかし、入居から4年後、Tさんの生活は一変します。

隣に30階建てのタワマンが建設….

敷地の南側に、新しいタワマンの建設が始まったのです。

「最初はモデルルームができるくらいだと思っていました。でも、完成予想図を見たら、うちの部屋の高さをはるかに超える30階建て。まさかここまで日が入らなくなるとは思いませんでした。」

工事が進むにつれ、Tさんの部屋は次第に暗くなっていきました。
かつて日中差し込んでいた日差しは、今では午前10時を過ぎるとほとんど届きません。
「南向きなのに真っ暗な家」――Tさんはその現実に言葉を失いました。

「日が入らないのに違法ではない」――建築基準法の盲点

Tさんが購入したエリアは商業地域。
この地域では、建物の高さ制限や日影規制が適用されない場合があります。
行政としては「住宅よりも土地の高度利用を優先する」という立場を取っており、隣地に30階建てのタワマンが建設されても、建築基準法上は問題ありません。

「販売時に“南向きで日当たり良好”と書かれていたのに、今は全く光が入りません。でも、契約違反でも説明不足でもないと言われました。」

都市部では、日影規制が設けられていない場合もあり、その結果として「日が入らなくなる」ケースがあります。
つまり、“日照の確保”は建築基準法上、保証されておらず、周囲の開発によって日当たりが大きく変わる可能性があります。

「南向き」という言葉を信じすぎた

「南向きなら明るい」という安心感は、多くの購入者に共通する“思い込み”です。
Tさんも、モデルルームで日当たりの良さを実感し、「南向き」を信頼していました。
しかし、実際には建物の方位よりも“空の開け方”が日照を決定づけます。

「日影規制なんて言葉、購入当時はまったく知りませんでした。間取りや駅からの距離、価格ばかりに目がいっていて…。まさか“日が当たらない南向き”になるとは…本当にショックでした。」

隣のタワマン完成後、部屋の湿気が増え、カビが出やすくなったといいます。

「一生住むと思って買ったのに、住み心地が悪くて…」とTさんは肩を落とします。

一級建築士が見る原因――“日影規制がない”リスク

日照を守るための基準として、一般的に「日影規制」という制度があります。
住宅地(住居系の用途地域)では、隣地に日影を長時間落とさないよう、建物の高さや配置が制限されます。
しかし、Tさんの住む商業地域や工業専用地域などでは、開発を優先するため、日影規制の適用がないケースが多いのです。
このため、隣にどれほど高い建物が建っても、建築基準法上は問題なし。
再開発が進む都市部では、「現時点で日が入る土地」が、将来も明るいとは限らないのです。

防ぐためにできること――“光”の未来を調べる

こうした日照トラブルを防ぐには、購入前の確認が欠かせません。
一級建築士として、次のポイントをチェックすることをおすすめします。

  • 用途地域を確認する→ 商業地域・工業専用地域などは日影規制が緩い。
  • 周辺の建築計画を調べる→ 役所で「建築計画概要書」を確認。
  • 南側の土地の高さと空の抜け具合を現地で確認する→ 太陽の位置をシミュレーションできるアプリも有効。
  • モデルルームの光を過信しない→ モデルルームは照明を多くして明るく見せている場合がある。

 “南向き”だけでは安心できない

Tさんの事例は、「南向き=明るい」「日当たり良好=安心」という思い込みに警鐘を鳴らします。
都市部では、建築基準法的にに日照を守る仕組みが存在しない地域も多く、“今の明るさ”は未来を保証しないのです。
「南向きだから安心」――その一言に安堵してはいけません。
家を選ぶときは、“いまの光”ではなく“これからの光”を考えること。
それこそが、都市で後悔しない住まい選びの第一歩なのです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。