1. トップ
  2. 新築戸建てを購入→2年後、役所から1通の封書が届き…撤去費40万円まで支払う“大誤算”【一級建築士は見た】

新築戸建てを購入→2年後、役所から1通の封書が届き…撤去費40万円まで支払う“大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2025.10.26
undefined
出典元;photoAC(画像はイメージです)

「カーポートなんて、みんな付けてますよね? 申請って必要でしょうか?」

Aさん(40代・会社員)は、2年前に購入した新築戸建ての駐車スペースに、今年カーポートを後付けしました。
ネットで見つけた業者に依頼し、設置は1日で完了。
「これで雨の日も濡れずに済む」と喜んでいた矢先、役所から1通の封書が届きました。
中には「改善指示書」と書かれた通知。そこには――

「当該建築物(カーポート)について、建築確認申請の手続きがされていません。建ぺい率・容積率が基準を超過している可能性もあるため、速やかに改善してください。」

Aさんは目を疑った

「カーポートごときで違反? 周りの家だってみんな付けてますよ。」

実は、屋根と柱を持つカーポートは、建築基準法上の「建築物」に該当します。
防火地域又は準防火地域では、設置前に建築確認申請を行わなければならないのです。
Aさん宅は準防火地域に該当し、確認申請を出していない時点で手続き違反になります。
この場合、確認申請は設置後に申請することはできないため、カーポートは撤去するほかありません。
Aさんは最終的に、自費で約40万円をかけてカーポートを撤去しました。

「ただの日よけのつもりが、まさか“違法建築物”になるとは…。撤去費まで払うことになるなんて思いませんでした。」

「うちだけ?」という疑問――行政の現実

Aさんが役所に相談に行くと、担当者はこう説明しました。

「カーポートは市内にたくさんあることは承知しています。しかし、違法かどうかは把握していません。」

実際、行政が全戸を巡回して違反を取り締まることはほぼありません。
違法駐車と同じで、“通報や相談があった場合のみ”現地調査を行い、違反が確認されれば指導するという運用が一般的です。
つまり、Aさんのケースも「発覚したから指導せざるを得なかった」だけであり、通報の有無にかかわらず法律上は明確な違反でした。

「他の家は何も言われていないのに、なぜ自分だけ…」とAさんは不満を漏らします。

しかし、役所の職員は淡々と答えました。

「違反は違反です。確認された以上、対応していただく必要があります。」

一級建築士が見る原因――“小さな工事”ほど注意が必要

カーポートは見た目が簡素なため、「確認申請は不要」だと勘違いされがちです。
しかし、カーポートは建築基準法上「建築物」に分類され、

  • 建築確認申請が必要になる(防火地域、準防火地域では必須)
  • 建ぺい率・容積率に算入される(緩和規定あり)

といった制約が生じます。

確認申請を怠れば、建物の安全性だけでなく、「違反建築物」としての記録が残ります。
その結果、将来の売却・リフォームなどにも支障をきたすリスクがあります。

役所も“すべて”は取り締まれない

筆者(一級建築士)も行政職として勤務していた経験があります。
違反カーポートは全国的に多く存在し、自治体もその実態を把握しています。
しかし、安全上の緊急性が低いものまで一律に指導することは現実的に不可能です。
そのため、行政は通報や相談を受けてから動く「事後対応」が中心となります。
つまり、「黙っていればバレない」は一見成り立っているように見えても、法的には違反のまま放置されているだけなのです。

「みんなやってる」は何の保証にもならない

Aさんは最後にこう振り返りました。
「他の家もやってるから大丈夫――その油断が命取りでした。」
カーポートは小さな構造物に見えて、法的には立派な「建築物」です。
確認申請を出さずに建てれば、どれほど立派な家でも違反建築物扱いとなり、信用を失います。
“みんなやってる”は安心の証拠ではなく、危険の共有なのです。
たかがカーポート、されど建築物。
ほんの小さな油断が、家の価値と信頼を一瞬で失わせることを、Aさんの事例は教えてくれます。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。