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「日本に来ないで」外国人の“墓荒らし動画”に物議…「ありえない」「許せない行為」→“日本の法律”で罰せられる?【弁護士が解説】

  • 2025.9.14
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

外国人観光客による迷惑行為が繰り返し問題視されています。ゴミのポイ捨てや大声での騒ぎにとどまらず、寺社仏閣や墓地、文化財に対する落書きや破壊行為、さらには盗掘のような悪質なケースも報告されてきました。最近では「お墓を荒らす様子を撮影した動画」が拡散し、SNSでは「許せない行為」「あり得ない」と非難の声が相次いでいます。

こうした行為は単なるマナー違反にとどまりません。日本の刑法や文化財保護法に基づき、立派な犯罪行為として処罰される可能性があります。今回は、寺社や墓地を荒らした場合に成立する罪や罰則、外国人観光客への適用範囲、さらに損害賠償や予防策について、弁護士に伺いました。

寺社や墓地、文化財に落書きや破壊行為をした場合、どんな罪に問われますか?

今回は、茨城県取手市 じょうばん法律事務所所属の鬼沢健士 弁護士にお話をお伺いしました。

落書きや破壊行為は器物損壊罪(刑法261条)にあたり、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金・科料が科される可能性があります。

礼拝の対象を汚した場合は、礼拝不敬罪(刑法188条)も成立し、6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。

さらに対象が重要文化財であれば文化財保護法違反となり、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と、より重い刑罰が科される可能性があります。

加害者が外国人観光客でも日本の法律は適用されますか?

はい。日本の刑法は属地主義を採用しており、日本国内で行われた犯罪には日本の法律が適用されます。

「法律を知らなかった」「文化の違い」という主張は基本的に免責の理由になりません。例外的に、文化の違いから犯罪と認識できなかった場合に成立しないこともあり得ますが、極めてまれです。

加害者が帰国してしまった場合、日本の警察は対応できるのでしょうか?

現実的には難しいのが実情です。

日本が犯罪人引渡し条約を締結しているのはアメリカと韓国のみで、他国では条約を根拠に引き渡しを請求できません。

ただし、相手国が独自に引き渡しに応じる場合もあります。引き渡しが実現すれば日本で裁かれますが、達成されなければ処罰は困難です。

刑事罰に加えて、修復や清掃の費用を請求できますか?

可能です。落書きの洗浄費や、破壊した部分の修復・新設費用などを民事訴訟で請求可能です。

さらに墓石の損壊については、遺族の敬愛・追慕の対象であることを理由に慰謝料を認めた判例も存在します。慰謝料額は数十万円程度になることが多いです。

文化財や墓地を守るためにできる予防策として、管理者側では多言語リーフレットや立て看板による注意喚起が有効ですが、必ずしも全員が読むとは限りません。
根本的には、現場にいる観光客や管理者が「迷惑行為を許さない雰囲気」を共有することが重要といえます。

まとめ

お墓や文化財への破壊行為は「マナー違反」ではなく、日本の法律で処罰される重大な犯罪です。外国人観光客も例外ではなく、場合によっては民事上の賠償責任も負います。

文化や信仰を尊重し、誰もが安心して訪れられる環境を守るために、法的な理解と社会的な雰囲気づくりが求められています。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

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茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。