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「母国では許されている」遺体を無許可に“埋葬”する外国人…→日本の法では裁けない?【法律のプロが回答】

  • 2025.9.11
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

日本では火葬が一般的ですが、近年は外国人観光客や在留者の増加に伴い、宗教的な理由から「土葬」を望む声も少なくありません。その一方で、許可を得ずに勝手に遺体を埋葬する「無許可の土葬」が一部で問題化しています。

「自分の土地だから」「母国では許されているから」と考えてしまう人もいるかもしれません。しかし、日本の法律では埋葬に厳しい規制があり、違反すれば刑事罰の対象にもなります。今回は、無許可の土葬が引き起こす問題について、弁護士の解説を整理しました。

日本で埋葬を行うには許可が必要?

日本では、墓地、埋葬等に関する法律(5条1項)により、埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければならないとされています。

この規定に違反して埋葬した場合、2万円以下の罰金または拘留・科料に処されます。

形式的に見れば軽い罰則に思えますが、実際には社会的信用やトラブルの拡大に直結します。

無許可で埋葬した場合、刑事責任はどうなる?

無許可で埋葬した場合、墓埋法違反に加え、場合によっては死体遺棄罪(刑法190条)に問われる可能性もあります。

  • 死体遺棄罪:3年以下の拘禁刑
  • 墓地埋葬法違反:2万円以下の罰金または拘留・科料

特に死体遺棄罪は社会的非難が強く、処罰も重い犯罪として扱われます。

勝手に埋葬された場合、土地所有者はどうすべき?

たとえ自分の土地に無断で埋葬されたとしても、自力で掘り返すことはできません

日本は「自力救済禁止」の原則を採用しており、勝手に対応すれば今度はこちらが墳墓発掘罪に問われる可能性もあります。

対応としては、

  1. まず警察に通報する
  2. 相手が特定されたら、墓の撤去や遺体の移動を求める妨害排除請求を行う

という手順を踏むのが適切です。

原状回復や損害賠償は請求できる?

土地所有者は、所有権に基づき土地の原状回復を請求することが可能です。

また、精神的・経済的損害が認められる場合には、不法行為に基づく損害賠償請求も検討できます。

 外国人の場合、日本の法律は適用される?

もちろん、国籍を問わず日本国内では日本の法律が適用されます

宗教や文化的背景を理由にしても、国内での埋葬に関しては日本の法律に従わなければなりません。

在留外国人や観光客であっても、日本の規制を守らなければ法的責任を免れることはできません。

まとめ

日本では、市町村長の許可なく埋葬することはできず、違反すれば罰則があります。無許可の埋葬は死体遺棄罪に問われる可能性があり、刑事責任は重くなります。

勝手に掘り返すと今度はこちらが墳墓発掘罪に問われるおそれがあるため、まずは警察に通報することが大切。国籍を問わず、日本国内では日本の法律が等しく適用されます

勝手な埋葬は、宗教的な背景があったとしても違法行為となりかねません。トラブルを防ぐためにも、外国人観光客や在留者に向けたルールの周知や、行政との連携体制づくりが今後ますます重要になるでしょう。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。