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「女性は全員持ち歩いて」“催眠スプレー”の携帯を呼びかける投稿に「危険すぎる」「そもそも違法では」→これって罪に問われる?

  • 2025.9.15
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

防犯意識の高まりから、女性が「身を守るために“催眠スプレー”を持ち歩いている」とSNSに投稿し、大きな反響を呼びました。共感の声がある一方で、「危険すぎるのでは」「そもそも違法では?」といった不安の声も少なくありません。
催涙スプレーや防犯スプレーは一般的に市販されていますが、携帯や使用に法的リスクはないのでしょうか。弁護士に伺いました。

「催眠スプレー」や「催涙スプレー」を携帯すると法律違反になりますか?

今回は、茨城県取手市 じょうばん法律事務所所属の鬼沢健士 弁護士にお話をお伺いしました。

銃刀法は刃物などを対象としているため、催涙スプレー自体は同法に抵触しません。

しかし、軽犯罪法1条2号では「正当な理由がなくて、人の生命や身体に害を加える器具を隠して携帯すること」を禁じています。催涙スプレーはこの規定に触れる可能性があるため、携帯に注意が必要です。

「防犯目的だから」と言えば、正当な理由になるのでしょうか?

「正当な理由」があるかどうかは状況によって判断されます。実際に切迫した危険があり、携帯の必要性が認められれば正当な理由になることも考えられます。

ただし「防犯目的」という一般的な理由だけでは、常に認められるとは限りません。とはいえ、日常的に罪に問われるケースはほとんどないのが実情です。

実際にスプレーを使用した場合、正当防衛は成立しますか?

急迫かつ不正な侵害に対して、やむを得ず使用したのであれば正当防衛が成立します。例えば、突然襲われた場面での使用は該当しやすいでしょう。

一方で、程度を超えた場合は過剰防衛となり、法的責任が生じる可能性があります。ただし、スプレーでの反撃は殺傷力が限定的であるため、過剰防衛に当たるケースは比較的少ないと考えられます。

市販の「護身用スプレー」を購入・所持する際の注意点は?

通販や防犯用品店で一般的に販売されている商品であれば、成分自体に違法性はありません。

ただし、所持にあたっては軽犯罪法との関係があるため、「正当な理由」が求められます。また、防衛の場面以外での使用は認められず、誤って使用した場合には過失傷害罪などに問われるリスクもあります。

 防犯グッズ以外にできる現実的な対策は?

女性が安心して生活するためには、防犯グッズだけに頼らず、日常の工夫も重要です。

  • 夜道は明るい場所を選ぶ
  • 戸締まりを徹底する
  • セキュリティの高い住居を選ぶ
  • 一人暮らしでも「同居人がいるように見せる」工夫をする

こうした小さな積み重ねが、防犯に大きな効果をもたらします。

まとめ

「催眠スプレー」や「催涙スプレー」は市販されているものの、携帯には軽犯罪法上のリスクが伴います。「防犯目的だから」といって常に正当化されるわけではなく、使用場面もあくまで急迫不正の侵害があるときに限られます。

安心して暮らすためには、防犯グッズの活用とあわせて、日常生活でできる現実的な防犯対策を心がけることが大切です。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

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茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。