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「勝手に荷物を取られるなんて…」ライブ会場で“持ち込み禁止”を理由に荷物を没収「窃盗じゃないの?」→弁護士の見解は?

  • 2025.9.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ライブやコンサート会場では「飲食物持ち込み禁止」「録音・録画機材禁止」などのルールが設けられていることが一般的です。入場時の持ち物検査で禁止物が見つかり、スタッフに没収されてしまった経験がある方もいるのではないでしょうか。

「勝手に荷物を取られるなんて窃盗じゃないの?」と思う人もいるかもしれません。しかし、法的に見るとどうなるのでしょうか。今回は、会場での荷物没収や持ち物検査にまつわるルールと責任について、弁護士の解説をまとめました。

ライブ会場で見られる「持ち込み禁止」 その根拠は?

会場での持ち込み禁止は、直接的な法律に基づくものではなく、会場の管理権に基づく利用規約に従ったルールです。

主催者や施設管理者が安全確保やトラブル防止のために定めているもので、利用者は入場にあたりこの規約に従う必要があります。

没収は窃盗罪にあたらないの?

窃盗罪や遺失物横領罪が成立するためには、「違法性」が必要です。

利用規約に基づいた没収行為は、刑法35条に定める正当行為として違法性が阻却されるため、窃盗にあたらないと考えられます。つまり、ルールに基づく没収は法律的にも認められる行為なのです。

「一時預かり」と「没収」の違いは?

一見すると「返してもらえる一時預かり」と「返還されない没収」には大きな違いがあるように思えますが、法的にはいずれも会場管理者の管理権に基づく裁量で判断されます。

ただし、預かる場合には保管の場所や責任管理の問題が生じるため、会場側があえて「返還しない没収」を選ぶこともあります。どちらの対応を取るかは管理者の裁量に委ねられており、法的意味合いは大きく変わらないと考えられます。

「一時的に預かる」か「没収」かは、施設管理者の管理権に基づく裁量により判断されると考えます。当然、「預かる」場合、保管する場所や管理する人など物理的な問題が生じるほか、破損していたり、取り違えたりすると、施設側が責任を追及されるおそれがあります。そのため、必ずしも後に返還するという選択肢を取る必要はなく、「一時的に預かる」か「没収」かは、施設管理者の管理権に基づく裁量により判断される事項であり、法的な意味合いは異ならないと思います。

没収された荷物が破損・紛失した場合は?

会場側があらかじめ利用規約や注意書きで「破損・紛失に責任を負いません」と免責を明記している場合、損害賠償を請求することは難しくなります。

一方で、免責の定めがなかった場合には、会場側に対して損害賠償請求が認められる余地があります。規約の内容や告知状況がポイントになるため、事前に確認しておくことが重要です。

「持ち物検査」は拒否できる?

持ち物検査自体を法律で義務づける規定はありません。しかし、会場には「管理権」があるため、検査を拒否すれば入場を断られることになります。

もし「拒否しても入れる」とすれば安全が確保できなくなってしまうため、実質的に持ち物検査を拒否することはできないと考えられます。

まとめ

持ち込み禁止や没収のルールは、会場の管理権と利用規約に基づいて設定されています。

  • 規約に沿った没収は窃盗罪にはあたらない
  • 「預かり」か「没収」かは管理者の裁量で、法的意味は大きく変わらない
  • 荷物が破損・紛失した場合、免責規定の有無が損害賠償の可否を左右する
  • 持ち物検査は実質的に拒否できず、拒否すれば入場できない

ライブやコンサートを安全に楽しむためには、会場のルールを守ることが前提です。入場前に利用規約や注意事項を確認し、不要なトラブルを避けることが、観客一人ひとりに求められるマナーといえるでしょう。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。