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ペットが他人を噛んでしまった→“治療費を払えばOK”は間違いだった…「前科が付く可能性も」「刑事責任に問われる」【法律のプロが解説】

  • 2025.9.4
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ペットは家族の一員として心を癒してくれる存在ですが、思わぬトラブルを引き起こすこともあります。特に犬の場合、散歩中や来客時などに「他人を噛んでしまった」という事故は決して珍しくありません。

「治療費だけ払えば済むだろう」と軽く考えてしまいがちですが、実は飼い主が負う責任はそれだけにとどまらず、場合によっては刑事責任や高額な損害賠償に発展することもあります。今回は、犬が他人を噛んでしまった場合に生じる法的責任、事故後の対応、そして備えておくべき保険について、弁護士の解説をまとめました。

犬が他人を噛んだら、どんな賠償責任が発生する?

もし飼い犬が第三者に噛み付いた場合、飼い主は不法行為(民法718条)に基づき、損害賠償責任を負います。

賠償の範囲には以下が含まれます。

  • 治療費
  • 通院交通費
  • 休業損害(通院で仕事を休んだ分の損害)
  • 慰謝料(噛まれたことによる精神的苦痛)
  • 逸失利益(将来の減収が見込まれる場合)
  • 衣類など破損した物の弁償
  • 後遺症が残った場合の後遺症慰謝料

単に治療費を払えばよいというわけではなく、被害者が負った精神的・経済的損害全般を補償する責任があるのです。

場合によっては刑事責任も問われる可能性も

管理が不十分で事故が起きた場合、飼い主は過失傷害罪に問われ、前科が付く可能性もあります。

例えば、

  • リードをつけずに散歩していた
  • 犬小屋やケージに鍵をかけていなかった
  • 子どもや小柄な人が大型犬を制御できず散歩させていた

といったケースでは「結果を予見できたのに回避しなかった」と判断されやすく、過失が認定される可能性が高まります。

事故の状況や犬種、飼い主の管理状況によって責任の重さは変わりますが、漫然とした管理は刑事責任に直結するリスクがあるのです。

事故直後の対応で大切なことは?

飼い主がすべきこと

  • 被害者への謝罪
  • 連絡先を伝える(その場で電話が通じるか確認してもらうのが望ましい)
  • 必要に応じて警察に通報

被害者がすべきこと

  • 連絡先を確認し、後日治療費等を請求できるようにする
  • 警察に通報し、証拠を残すことも検討

さらに事故直後だけでなく、飼い主は以下の対応をする必要があります。

  1. 狂犬病予防注射済証を提示する
  2. 翌日までに地域の保健所に届け出る
  3. 2日以内に獣医師の検診を受け、必要に応じて検診証明書を発行する

被害者側は、①〜③を飼い主に要請し、自身の健康リスクに備えることが重要です。

責任の重さはケースで変わる

同じ「噛みつき事故」でも、責任の重さは管理状況によって変わります。

  • 公道でリードを外していた場合 → 重い責任
  • ドッグランのように「ノーリードが許可されている場所」で起きた場合 → 責任は軽く評価される可能性

つまり、飼い主の管理状況が「相当の注意」を欠いていたかどうかが、責任の範囲を左右します。

保険で備えることはできる?

ペット保険

通常のペット保険は犬や猫の治療費を補償するものであり、他人への賠償は対象外です。ただし、特約を付けることで今回のような噛みつき事故も補償対象になるケースがあります。加入時に内容をよく確認することが大切です。

個人賠償責任保険

こちらは日常生活で他人にケガをさせたり物を壊したりした場合に補償する保険です。多くの場合、犬が他人を噛んだ事故も対象になります。火災保険や自動車保険の特約として付帯しているケースも多いので、自分が加入している保険を確認しておくと安心です。

ペットを飼う上で、備えておくべき保険は、補償される特約を付けたペット保険が有効だと弁護士は語ります。

まとめ

犬が他人を噛んでしまった場合、飼い主は治療費だけでなく慰謝料や休業損害、後遺症への補償まで含めた賠償責任を負う可能性があります。さらに管理が不十分な状況であれば、刑事責任(過失傷害罪)に問われるリスクもあります。

事故が起きた際は、速やかに謝罪と連絡先の交換、必要に応じた警察への通報を行い、保健所への届け出や獣医師の診断証明などの手続きを怠らないことが重要です。

また、万が一に備え、ペット保険の特約や個人賠償責任保険に加入しておくことで、経済的リスクを大幅に軽減できます。

「うちの子は大人しいから大丈夫」と油断せず、日頃から適切な管理と備えを心がけることが、飼い主としての責任といえるでしょう。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。