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甘いものばっかり食べて肌荒れしても、布団の中でゴロゴロして終わる日が続いてもいい― 『33歳という日々』が描く、わたしたちのリアル

  • 2025.8.18

鈴木みろ さん

イラストレーター/エッセイスト

結婚、出産、仕事、友情――「33歳」を生きる女性たちの心の揺れを描いた『33歳という日々』。SNSで共感の声が広がり、YouTube再生数130万回を超えた話題作です。本作の著者・鈴木みろさんに、作品誕生の背景やキャラクターへの想い、そして“もやもや”を抱えて生きる私たちへのメッセージを伺いました。

出典:シティリビングWeb

――『33歳という日々』を描き始めたのは、どんなきっかけからですか?

このテーマで描いてみよう!と強く思って描き始めたというよりは、少し描いてinstagramに載せてみたら反応がもらえたので、「よし、もうちょっと描いてみよう」と思って描き続けたという感じだったと思います。

――なぜ「33歳」なのでしょうか?

一生懸命仕事をして社会に溶け込んで、それなりに頑張ったなとようやく思えた頃に、どこからともなく「35歳からは高齢出産」という言葉が飛び込んできて、産むなら急がなきゃいけないのかなと漠然と思っていたものが現実のものになって、大きな焦りや不安を連れてくる生々しい年齢なんだと思います。

恋愛も結婚も出産も一人では成り立たず、しかも出産には年齢制限がある。

諦めるには早いし、だけどなりふり構わず突っ走るには大人で、一番もどかしい年齢が33歳なんだと思っています。

――幸せなはずなのに、心に刺(とげ)がある。この“もやもや”を物語にした経緯はなんですか?

大好きな人と結婚して幸せ。子どもが可愛くて幸せ。好きなことを仕事にしていて幸せ。みんな幸せなはずで、忙しくても会いたいと思えるほど好きな人たちでわざわざ予定を合わせて集まっているのに、なぜか刺々しい瞬間があって、何だろうこれ…そう思って描き始めました。

――YouTubeで130万回再生という反響を受けて、どんな声が印象に残っていますか?

コメント欄の中で、視聴者さん同士が優しい言葉を掛け合っていることがとても印象的でした。私にDMをくれる人もそうですが、不安になったり悩んだりする人たちって、きっととても優しい人たちなんだと思って。優しいからこそ、誰にも言えなかったり、自分を責めていたり。SNSは顔が見えないので怖い部分もあったのですが、だからこそ救いあえる時もあるんだと思いました。

子どもがいない理由は本当に人それぞれで、だけど「人それぞれだよね」という言葉でまとめてしまうにはあまりにも複雑な背景があるんだと、新しいコメントがつくたびに思います。

それから、ほとんどが女性からのメッセージの中で「男です。ようやく妻の気持ちが分かった気がします」というメッセージをもらった時は驚くと同時に嬉しかったです。パートナーを真剣に思っていて、だけどすれ違うもどかしさを抱えているのは女性だけではないんだなと思いました。「産みたいのに産めなくなる恐怖」を自分ごとにできる人が増えたら、どんな世界に変わるんだろうと思っています。

出典:シティリビングWeb
出典:シティリビングWeb

『33歳という日々 子なし夫婦、エリの場合』(本書からの抜粋)

――登場人物、エリ・ゆみ・このみは、どのように生まれたキャラクターですか? キャラクターに込めた想いを教えてください。

優しいエリ、しっかり者のゆみ、愛されキャラのこのみ。学生の頃にいくつも存在した仲良しグループの3人で、どこにでもいる普通の人たちです。

だからこそ身近にいる友達のように思ってもらえたらと思っています。

――エリ・ゆみ・このみ、それぞれが「一見幸せそうだけれど、どこか満たされない」という状況にいます。この“はっきりしない不安”を描くうえで、どんなことを意識されましたか?

誰も悪者にしないということです。

そもそも誰も悪くないので、心配する必要はないのかもしれませんが、あくまでみんな普通の人で、どこにでもいる真面目で優しい人たち…なのに、うまくいかなくなる。だからこそ、もどかしくて切ないなと思っています。

――「子どもがいてもいなくても、友達でいられるのか?」という問いが印象的でした。人間関係の変化について、どんなことを伝えたかったのでしょうか? また、それぞれが抱える「生きづらさ」や「もやもや」は、どこかご自身とも重なる部分があるのでしょうか?

いつからか、「まぁ、〇〇は子どもがいるから仕方ないよね」という言葉が当たり前に会話の中に存在していて、だけどふとその言葉を寂しく感じて、誰かに聞いてみたくて、だけど聞けなくて、3人を通してもやもやを探ってみたいと思ったのかもしれないです。

――“正解のない日々”の中で、それでも前を向こうとする3人の姿が印象的でした。彼女たちのような不安を抱える読者に、どんなふうに物語が届いてほしいと感じていますか?

誰かと話したいけど、誰もいない。誰かに話したいけど、誰にも言えない。そんな人にこの物語が寄り添ってくれると信じています。誰にも言えない気持ちを打ち明けられる友達のような居場所に、この物語がなっていたら嬉しいなと思います。

――女性は仕事もプライベートも“ちゃんとやらなきゃ”と思いがちです。そんな読者に伝えたいことはありますか?

本の中でエリが「覚悟を持って現実逃避をする」というシーンがあるのですが、その場から離れるのは勇気が必要なことが多いと思います。責任感だったり、タイムリミットだったり、どうしても頭の中から取り出せないことだらけだと思います。

それでも、ずるくても嫌われてもいいから、案外本当に「逃げるが勝ち」って結構あるよねって身近な人と話したり、自分に言い聞かせたりしています。

――今まさに“33歳の悩み”の渦中にいる人も多いと思います。そんな人に向けてメッセージをお願いします。

私たちは選ばなかったほうの人生を試せないから

悩み抜いて選んだ道が正しかったと思えるように生きていくしかない

怖いのも悩むのも立ち止まるのも当たり前

不安になるほど真剣に生きている

胸を張って悩めばいい

本の中の言葉ですが、私も壁にぶつかったらこの言葉を自分にかけてあげようと思っています。

甘いものばっかり食べて肌荒れしても、布団の中でゴロゴロして終わる日が続いても、悩んで悩んで、笑えなくても、とりあえずこの世界にいることを選んでくれたら嬉しいです。

苦しくて、せつなくて、いとおしい33歳という日々の記録

出典:シティリビングWeb

『33歳という日々』 著:鈴木みろ/KADOKAWA 定価1,540円

YouTubeで130万回再生、共感のコメントで溢れた話題作が、全編を新たに描き下ろして、待望の単行本化。

結婚したエリ

母になったゆみ

一人で暮らすこのみ

子どもがいてもいなくても

私たちは友達のままでいられるのかな?

■「33歳という日々」シリーズ

『33歳という日々 子なし夫婦、エリの場合』

『33歳という日々 独身彼なし、このみの場合』

『33歳という日々 シングルマザー、ゆみの場合』※2025年9月12日発売

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