1. トップ
  2. 恋愛
  3. 点眼がいい?それともコンタクト?子どもの近視治療の内容についていわみ眼科理事長岩見先生にお伺いしました

点眼がいい?それともコンタクト?子どもの近視治療の内容についていわみ眼科理事長岩見先生にお伺いしました

  • 2025.8.17

子どもの近視が年々深刻化しているなか、近視治療についても日々新しい技術が模索・開発されています。今回は、「近視治療2.0時代の到来」をテーマに、医療法人社団久視会いわみ眼科理事長の岩見久司先生から、現在、実際に行われている近視治療の内容についてお話いただきました。

ママ広場

近視治療2.0時代のツール

子どもたちの近視は、今まさに急増しています。前回は、近視の進行メカニズムや治療法の登場、家庭でできる対策について大まかにご紹介しました。今回は、実際に使われている近視治療の内容についてお話しします。

世界的に用いられている近視治療は、大きく分けて3つの系統があります。ひとつは目薬などの薬物治療、次にレンズを使った光学的治療、そして光を当てる光線療法です。レンズを使う治療には、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、そして特殊眼鏡という3つの選択肢があります。それぞれの特徴を順に見ていきましょう。

点眼治療 ― 低濃度アトロピン

2006年、シンガポールのグループが薄めたアトロピンという薬剤の点眼(低濃度アトロピン)で近視の進行が抑えられることを報告しました。(Chua WH Ophthalmology 2006)日本人を対象にした研究でも2021年には有効性が確認されていた(Hieda O Japanese journal of ophthalmology 2021)ものの、長らく承認はされていませんでした。国の承認を目指してあらためて治験が行われ、令和7年4月に販売が開始されました。
この点眼薬は、寝る前に1回使うタイプで、小さなお子さまでも使用しやすく、日本では治験時の基準で5歳から使えるとされています。副作用としては翌朝のまぶしさが挙げられますが、多くの場合1週間以内に慣れ、安全性の高い治療法です。

ハードコンタクト ― オルソケラトロジー

夜間に装用するハードコンタクトレンズが、いわゆるオルソケラトロジーです。特殊なレンズ形状により、角膜の中央部を平らにし、裸眼で遠くが見えるようにします。さらに、目に対する光の入り方が変わることで近視の進行も抑えられると考えられています。(Hiraoka T Ophthalmic Physiological Optics 2018)
寝る前に装用し、朝に外すため、保護者が管理しやすいという利点があります。比較的低年齢でも導入しやすい一方で、感染予防のためのレンズの消毒など適切なケアと、定期的な通院が重要です。

ママ広場

多焦点ソフトコンタクト

遠近両用タイプのソフトコンタクトレンズの中には、近視進行を抑える効果があるものがあります。(Chamberlain P, Optometry and visual Science 2019)現在、国内で販売されている一社のものは国内で一定の効果が確認された研究があります。(筆者も研究に参加しました)さらに、は臨床試験を終え、2025年7月に薬事承認が下りた商品もあります。
このタイプのソフトコンタクトは、度数の強い近視にも対応できる点が大きな強みです。一方で、日中に装用するため、自分でつけ外しができることが使用の前提となります。

特殊眼鏡

眼鏡のレンズにも、近視進行を抑えるように設計された特殊なタイプがあります。(Lam CSY British Journal of Ophthalmology 2020)ソフトコンタクトと同様に、近くを見る部分に工夫が施されており、海外では10年近くにわたり実績のある製品もあります。

どの年齢でも使えるという利点がある一方で、かなり正確なフィッティングが必要であり、眼鏡フレームも簡単に歪んだりしない質の高いものを選ぶ必要があります。また、子どもによっては眼鏡を嫌がることがあるため、「眼鏡をかけてくれない」ことが課題になる場合もあります。

光線療法 レッドライトセラピー

レッドライトセラピーは、中国で開発された機器を用いた新しい治療法です。(Jiang Y, Ophthalmology 2022)赤い光を発するLED機器を、朝と晩にそれぞれ3分間覗き込むことで、近視の進行が抑えられるというものです。高い効果が示されている一方で、装置自体が非常に高額であること、視力自体は改善されないため眼鏡やコンタクトが別途必要であること、動物実験を含む安全性のデータがまだ不十分であることなど、課題も多く、今後の研究が期待される治療です。

では、どれをどう使えばよいのでしょうか?

まず、幼稚園くらいの低年齢のお子さまには、コンタクトレンズの管理が難しいため、点眼治療や特殊眼鏡が適しているといえます。オルソケラトロジーは小学校低学年からの実績もあり、比較的早い段階から導入されています。多焦点ソフトコンタクトレンズは、自分でのつけ外しができるようになる小学校高学年から中学生あたりが適齢でしょう。

また、近視が強すぎる場合はオルソケラトロジーでは対応できないことがあり、その際にはほかのツールを選ぶ必要があります。いずれの治療も高額ですが、確かな効果があります。
とくに、すでに近視が強い方や、低年齢(幼稚園〜小学校低学年)から近視が始まった方、ご両親の近視が強い場合、あるいはご両親が緑内障や網膜剥離など近視に関連した病気にかかったことがある場合には、ぜひ治療を前向きにご検討ください。

執筆者

プロフィールイメージ
岩見久司
岩見久司

大阪市立大学医学部卒
医療法人社団久視会 いわみ眼科理事長
眼科専門医・レーザー専門医
医学博士
兵庫医科大学非常勤講師

経歴
1日100人を超す外来をこなしながら、若手医師の教育や医師・医療関係者向けの講演も頻繁に行っている。
加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などを得意とする網膜内科医。
網膜の病気に将来繋がっていく可能性のある小児の近視が現在急増しており、近視治療にも積極的に取り組んでいる。
令和5年度より、「100歳まで見える目」をたくさんの方が持てるように啓蒙活動を展開している。

いわみ眼科ホームページ

元記事で読む
の記事をもっとみる