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【九段下】楽しみながら平和を学ぶ!『昭和館』の “ なぞ解き × ポスター展 ” で感じる戦後80年

  • 2025.8.16

皆さん、ごきげんよう。LIVING東京 地域特派員の西村美鈴です。

8月15日、終戦記念日。 毎年この日が近づくと、私たちは静かに目を閉じ、あの時代に思いを馳せます。 失われた命と暮らしへの哀悼。そして、二度と同じ悲劇を繰り返さぬよう、当たり前のように享受している今の平和がどれほど尊いものかを心に刻む日でもあります。

2025年は、『戦後80年』という大きな節目の年。 戦争を知らない世代が増え続ける今、『知ることは、守ることへの第一歩』。 その気づきを、家族で分かち合える貴重な機会が、東京・九段下の『昭和館』にあります。

昭和館では、戦後80年特別企画展『社会を映す、動かす-ポスターにあらわれる国策宣伝の姿-』が、7月19日から9月7日まで開催中。 戦中・戦後に描かれた数々のポスターからは、国が社会をどう導こうとしたのか、暮らしに何が求められていたのかが、鮮やかに浮かび上がります。

また、夏休み限定の体験型イベント『なぞ解きで学ぶ!昭和の歴史』では、子どもたちが楽しみながら、昭和の暮らしや知恵に触れることができます。 遊びの中にこそある、学びの種。親子で会話を交わしながら、時代を超えた「気づき」を得られる展示です。

“伝える”ことが、“受け継ぐ”ことへとつながっていきますように。 この夏、過去と未来をつなぐ大切な時間を、ぜひ昭和館で過ごしてみませんか。

出典:リビング東京Web

戦後80年特別企画展『社会を映す、動かす』ポスターが語る時代の空気

戦後80年を迎えた今年、昭和館では記念の特別企画展「社会を映す、動かす―ポスターにあらわれる国策宣伝の姿」が9月7日まで開催されています。

一見、おしゃれなビジュアルやシンプルなメッセージに見えるポスターたち。けれどその奥には、国家の思惑と時代の空気がしっかりと織り込まれていました。 戦時下に「買いだめを控えましょう」「隣組で助け合いを」などの言葉が並ぶポスターは、人々の行動を “やさしく” “自然に” 変えるためのツールであり、ある意味で『暮らしに入り込んだ国策』だったのだと感じます。

展示室では、当時実際に掲示されていたポスターの実物が丁寧に並べられており、どれもじっくり見入ってしまうものばかり。 色づかい、言葉づかい、構図のすべてに『伝える力』が宿っており、国のメッセージがどのように日常に溶け込んでいたかが生々しく浮かび上がります。

私は特に、「あの日々の暮らしの中で、これを目にしていた人はどんな気持ちだったのだろう」と想像せずにはいられませんでした。 現在の私たちが広告やSNSから無意識に受け取るメッセージと重ねると、その “さりげない影響力” にゾクリとする瞬間もありました。

この展示は、ただポスターを『見る』だけではなく、『読み解く』体験としても非常に興味深く、視点を揺さぶられます。 今の時代だからこそ重要な『メディアリテラシー』の入り口として、学生や親子連れにもぜひ訪れてほしい展示だと思いました。

出典:リビング東京Web

もともとは健康増進のために作られたラジオ体操だが、戦争が始まると、大人数で同時に同じ動きをする特徴が国家の一体感を表すものとして利用されたことを示すポスター

出典:リビング東京Web

藤田嗣治、横山大観、竹内栖鳳といった著名画家が手がけた国策ポスター。戦時下での国民精神の高揚や戦意喚起を目的として制作された。(右)「国民精神 動員 雄飛報国之秋」 画:竹内栖鳳  発行:文部省 昭和12年(1937)/(中央)「国民精神総動員 天壌無窮」 画:横山大観   発行:文部省 昭和12年(1937)/(左)「空だ男のゆくところ」 画:藤田嗣治 発行:内閣情報局 昭和16年(1941) 発行:文部省 昭和12年(1937)

出典:リビング東京Web

資生堂のデザインも手掛けたことで有名な山名文夫が描いた国策宣伝のポスター 『貯蓄スルダケ強クナル オ国モ家モ』/ 図案:高橋春人・山名文夫  発行:大蔵省・日本宣伝技術家協会  昭和17年(1942)

楽しみながら、平和を学ぶ!『なぞ解きで学ぶ!昭和の歴史』体験型企画

一方、夏休み期間中に子どもたちから特に人気を集めているのが、体験型イベント『なぞ解きで学ぶ!昭和の歴史』(〜8月31日)。 館内を巡りながら出題される謎を解くことで、昭和のくらしや戦中の知恵に自然と触れられるよう工夫されたプログラムになっています。

実際に体験してみると、問題は “ちょうどよい難しさ” 。 大人でも思わず立ち止まって考えてしまう問いが多く、クイズを解くうちに自分がまるで昭和の時代に足を踏み入れているような感覚になります。 「これは何に使う道具?」「どうしてこんな暮らしだったの?」そんな素朴な疑問が湧いてきて、展示物一つひとつへのまなざしがどんどんと深まっていきました。

ただ戦争の悲惨さを伝えるだけでなく『その時代を生きた人々の息づかい』を感じられるのが特徴。 子どもでも楽しめる体験コーナーや写真スポットもあり、親子で学べる場になっています。

印象的だったのは、「知らなかったことを知る」だけではなく、「知らなかったからこそ想像する力がはたらく」点です。 子どもたちにとっても、ただのイベント参加だけでではなく、『歴史に触れる第一歩』として心に残る時間になるのではないかと感じました。

加えて、『戦後80年スタンプラリー』や『夏休みワークシート』など、参加型の仕掛けも多数用意されており、親子で楽しみながら学べる工夫が随所にちりばめられています。 難しい言葉や難解な説明ではなく、実際に歩き、見て、考えることを通して、いつの間にか『平和』や『暮らしの変化』について考えられるようになっている、そんな体験型の展示です。

出典:リビング東京Web

防空壕の内部を再現した撮影スポット。幕をくぐると、家族が身を寄せ合う姿が現れ、戦時下の緊迫した空気を背景に記念撮影ができる。

出典:リビング東京Web

昭和30年代の下町の街並みを再現したエリア。木造家屋や赤い庇、店内のブラウン管テレビや扇風機まで、当時の暮らしの空気をリアルに感じられる。

出典:リビング東京Web

赤いボタンを押すと、かつての暮らしで欠かせなかった水くみ作業をゲームで模擬体験できる。子どもから大人まで人気の参加型展示。

記憶を受け継ぎ、未来へつなぐ場所『昭和館』という存在の意味

昭和館は、1999年(平成11年)に開館した国立の施設です。 戦没者遺族をはじめ、戦争と共に生きた人々の記憶、そしてその暮らしの中にあった数々の “労苦” を、次の世代に語り継ぐために設立されました。

展示されているのは、当時の衣食住を伝える生活道具やポスター、写真、映像、音響資料など。 どれも声を持たない静かな存在でありながら、その場に立つと、不思議と語りかけてくるように感じます。

正直に言うと、私は『戦争資料館』と聞いたとき、どこか身構えていました。 でも、昭和館の展示は “怖がらせる” のではなく、 “わかりたい” という気持ちに静かに寄り添ってくれるものでした。 防空壕の体験模型に立ちすくみ、紙一枚の生活日誌にこみ上げるものがあり、ある展示の前では、目が離せずに時間を忘れてしまいました。

ここには、「戦争は過去のもの」と切り離してしまいそうになる私たちに、“その時代を生きた人たちは確かにここにいた” という事実を、まっすぐ伝えてくれる力があります。

何より印象的だったのは、展示を見終えたあと、私は “平和であることのありがたさ” を、以前よりずっと自分のこととして感じていたことです。 「知らなかった」では済まされない何かが、心の奥に残る。そんな体験でした。

昭和館は、ただの資料館ではありません。 これは、記憶を受け継ぐ場所であり、未来にそっと託す場所。 そして、今を生きる私たちが “自分のこととして平和を考える” 、そのきっかけをくれる場所でもあるのだと、私は強く感じました。

出典:リビング東京Web

今を生きる私たちに『昭和館』からそっと手渡されるもの

戦争のことを、私はまだ何も知らなかったのかもしれません。 けれど、知らないままでいいとは、もう思えなくなりました。 昭和館で出会った数々の展示が、声にならない声で、今の私たちに何かを語りかけてくれていた気がします。

過去を知ることは、未来を守ることにつながる。 そんなあたりまえのことに、あらためて気づけたこの機会は、私にとってとても大切な時間になりました。

静かに展示を巡りながら、そっと心を澄ませてみる。 きっとあなた自身の中にも、小さな想いや問いが芽生えるはずです。

この夏、どうか一度、昭和館を訪れてみてください。 それは、「知る」ことから始まる、やさしい平和の一歩になるかもしれません。

たとえ今の日本が平和であっても、「生きづらさ」を感じる声は少なくありません。 だからこそ、ここで昭和の記憶に触れたとき、平和の意味が少しだけ近づいてきたような気がしました。

出典:リビング東京Web

戦後80年特別企画写真展『石川光陽写真展 第3期 終戦・復興する東京』の案内パネル。過去の記憶へと誘う入り口に立つと、これから出会う一枚一枚への期待と、静かな緊張感がゆっくりと高まっていく。

出典:リビング東京Web

昭和館2階ひろばに並ぶ石川光陽の写真作品。会場にはベンチが設けられており、普段は近隣のオフィスワーカーや来館者が腰を下ろし、くつろぎながら当時の写真を眺めている姿が見られる。

出典:リビング東京Web

昭和館
住所:東京都千代田区九段南1-6-1
電話番号:03-3222-2577
最寄り駅:地下鉄『九段下』4番出口すぐ / JR『飯田橋』から徒歩10分
休館日:月曜日(祝日、振替休日の場合、開館。翌日休館。)年末年始
※8月15日は開館
時間:午前10時〜午後5時30分(入館は5時まで)
入館・イベント参加は無料(常設展示室は入場料が別途必要)
URL:https://www.showakan.go.jp/

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