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「降板してから観なくなった」「前代未聞」“異例事態が勃発”しNHK激震…だけど「大好きなドラマ」語り継がれる逸作

  • 2025.9.25

朝ドラの中には、その内容や表現をめぐって議論を呼んだ作品があります。今回は、そんな中から"物議を醸した朝ドラ作品"を5本セレクトしました。本記事ではその第1弾として、連続テレビ小説『春よ、来い』(NHK総合)をご紹介します。放送途中でヒロインが降板するという前代未聞の展開を経てもなお、語り継がれる本作の魅力とは――。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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安田成美(1997年頃撮影)(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):連続テレビ小説『春よ、来い』(NHK総合)
  • 放送期間:1994年10月3日 〜 1995年9月30日
  • 出演: 安田成美(高倉春希 役)

『春よ、来い』は、脚本家である故・橋田壽賀子さんの体験を色濃く反映した作品です。主人公・高倉春希安田成美)は大阪で育ち、母の反対を押し切って東京の女子大へ進学します。慣れない寮生活では炊事や風呂焚きに苦労し、退学を考えるほど悩みながらも、次第に自分の進むべき道を探し始めます。

物語は戦中・戦後の混乱の中で青春を過ごす春希の姿を描く第1部と、挫折を経て脚本家として成功し、夫の死を見送るまでを描いた第2部に分かれています。女性がまだ生きづらかった時代に「自立」を求めて道を切り拓くヒロインの姿は、橋田さん自身の歩みとも重なり、昭和の激動期に生きた人々の濃密な人間模様を映し出しました。

戦争を越え、仕事に生き、そして愛する人を見送るまでの人生を描いた本作は、一人の女性の成長譚であると同時に、時代を生き抜いた人々の記録でもあります。

大物脚本家の自伝的“朝ドラ” 二人のヒロインが紡いだ一年

『春よ、来い』は、1994年後期から1995年前期にかけて放送された、通算52作目NHK連続テレビ小説です。脚本を手がけたのは『おしん』『渡る世間は鬼ばかり』で知られる橋田壽賀子さん。自身の半生をモチーフにした自伝的作品として、大きな話題を呼びました。

物語は1年間にわたり放送され、第1部のヒロインを安田成美さん、第2部を中田喜子さんが演じました。特に前半を担った安田さんには「可憐」「綺麗」「かわいい」といった称賛の声が多く寄せられています。「旬の女優だった」との言葉どおり、安田さんは当時を象徴するヒロインでした。

主題歌には松任谷由実さんの『春よ、来い』が起用され、ドラマを象徴する楽曲としてミリオンセラーを記録。音楽は松任谷正隆さん、語りは奈良岡朋子さんがつとめました。故・いしだあゆみさん、倍賞美津子さん、赤井英和さんら多彩な俳優陣が脇を固め、橋田作品らしく、家族や人間関係の機微が丁寧に描かれています。

戦中から戦後の昭和を舞台に「女性の自立」という大きなテーマを据えた内容は、橋田さんならではの重厚な人間ドラマとして強い印象を残しました。

朝ドラ史上初「ヒロイン降板」の衝撃

『春よ、来い』の放送中、朝ドラ史に残る前代未聞の出来事が起こりました。ヒロイン・高倉春希を演じていた安田成美さんが、わずか半年で降板することになったのです。

理由については「歴史観の相違」といった憶測もありましたが、実際には橋田壽賀子さん独特の脚本になじめなかったことが大きな要因とされています。日常の細部を丁寧に描くため進行が遅く感じられる点や、アドリブや現場での修正を許さない厳格な姿勢に、戸惑うキャストも少なくありませんでした。最初に違和感を口にしたのは共演していたベテラン女優で、その意見に安田さんも次第に共鳴していったといいます。

しかし橋田さんは『おしん』などを手がけた大物脚本家であり、NHKにとっては功労者。制作陣も意見を伝えることをためらい、現場は次第に膠着していきました。安田さんは思いを受け止めてもらえないまま板挟みの状態に。厳しい状況が続き、こうした停滞の中で、最終的に降板という結論に至ったそうです。

この降板劇については、「降板してから観なくなった」と語る人も少なくなく、「朝ドラのヒロインが途中で交代するなんて前代未聞」と驚きの声が相次ぎました。作品への期待が大きかっただけに、反発も強まったのでしょう。

一方で、「最後まで安田成美さんで観たかった」と惜しむ声も多く寄せられました。第一部での透明感あふれる演技が、多くの視聴者の心を掴んだことが伺えます。

異例の事態が巻き起こるも…「好きだった」絶賛の声

『春よ、来い』は、朝ドラ史の中でも異例の存在です。戦中から戦後の昭和を通して「女性の自立」を描いた意欲作でしたが、主演交代という前代未聞の出来事に直面し、その評価は大きく分かれました。

SNSでは、冷ややかな意見も少なくありませんでした。一方で、「大好きなドラマ」「すごく感動して観てた」「好きだった」「毎回感涙してた」と振り返る人もおり、「地上波で再放送してくれないかな」と望む声や、「やはり橋田壽賀子の脚本はおもしろい」と、その筆の力を改めて評価する意見もあります。

物議を醸した朝ドラとして今も語り継がれる『春よ、来い』。朝ドラ史における異例の一作として、これからも長く記憶されていくことでしょう。


※記事は執筆時点の情報です