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“やんちゃキャラ” から脱皮、名俳優へ― TBS【19番目のカルテ】 松本潤が、見る者の心を揺さぶるワケ

  • 2025.8.13

松潤が作り出した“柔らかい主人公”

松本潤さんは、ドラマ「19番目のカルテ」(TBSテレビ系)に主演中
松本潤さんは、ドラマ「19番目のカルテ」(TBSテレビ系)に主演中

嵐の松本潤さんが主演を務めるドラマ日曜劇場「19番目のカルテ」(TBSテレビ系)が、放送のたびに大きな話題を集めています。このドラマは、富士屋カツヒトさんの漫画「19番目のカルテ 徳重晃の問診」が原作で、日本の医療で19番目の新領域とされる「総合診療科」がテーマ。松本さんは、患者の心に寄り添う総合診療医・徳重晃を演じ、キャリア30年目で初の医師役に挑戦しています。

高視聴率を連発している「19番目のカルテ」ですが、何より見どころは松本さんの演技でしょう。前述の通り松本さんは初の医師役ながら、主人公の徳重を繊細に表現中です。

原作を読んだ人なら分かるでしょうが、ドラマ版の徳重は少し漫画版とキャラが違います。イメージとしては、松本さんが演じる徳重のほうが柔らかい雰囲気で、このキャラ設定がドラマに優しい感動を与えることに成功。徳重を上手に作り込んでいるので世界観は壊さない変更で、ドラマ化することで原作ファンにも新たな喜びを与えています。

そんな松本さんが演じる徳重の見せ場は問診シーン。通常の医療ドラマであれば、緊迫した派手な手術シーンが見どころになりますが、「19番目のカルテ」はほとんど手術シーンがなく、徳重を中心とした問診がメインです。患者の話をとにかく聞いて、心に寄り添って病気の根本的な問題を解決します。

この問診シーンで見せる松本さんの演技がとにかくすばらしく、ドラマの魅力を引き上げています。

徳重はおだやかで優しい性格ながら、飄々(ひょうひょう)としてつかみどころのないキャラです。問診以外のシーンでは、少し天然ボケな徳重の姿が見られます。しかし、患者を前にして問診を始めると、一気に総合診療医としての顔に変貌。患者と対話する際の沈黙の使い方が抜群にうまく、相手のスピードに合わせる会話の持っていき方が完璧です。

例えば、第1話では全身の痛みを訴える黒岩百々(仲里依紗)に対し、徳重はとにかく辛抱強く話を聞き続ける姿勢を見せました。そのうえで、重要となるセリフを患者に投げ掛け、大きく心を揺さぶります。この一連の流れが2話、3話……と繰り広げられましたが、今のところ名シーンばかり。松本さんが作り出した徳重が完璧だからこそ、ともすれば退屈になる恐れのある問診シーンが、ドラマの最大の見どころとして成立しているのです。

ベテランならではの演技で「19番目のカルテ」を引っ張り続けている松本さん。40代に入りその演技力は、どんどん向上していると言えるでしょう。

松本さんといえば、これまで出演した「金田一少年の事件簿」「ごくせん」(ともに日本テレビ系)、「花より男子」(TBS系)、「ラッキーセブン」(フジテレビ系)など、“やんちゃ”なイメージが強い役が多い俳優でした。

そんな流れを変えたのが、2016年からスタートした日曜劇場「99.9-刑事専門弁護士-」(TBS系)です。この作品で、マイペースで飄々とした弁護士・深山大翔を担当。深山は、周囲に厄介者あつかいされるクセがある弁護士で、松本さんの演技の幅を広げました。さらに、2017年公開の主演映画「ナラタージュ」では、教え子との恋に苦しむ葉山貴司に挑戦。優しい性格ながら、儚(はかな)さや危うさを感じさせる主人公を熱演しました。

そして、近年では“変わったキャラクター”を多く演じるようになっています。「となりのチカラ」(テレビ朝日系)では、お人好しでおせっかいな中越チカラがハマり役に。2023年のNHK大河ドラマ「どうする家康」では、ナイーブで頼りない徳川家康を見事に演じきりました。

松本さんは、ライブの演出家としても活躍するだけあり鋭い洞察力を持っています。キャラの特性をつかんで表現するのがうまく、どんな役でも自然体で演じられる俳優です。ここ数年はその実力を発揮できる作品が多くなり、表現者としての幅が格段に広がっています。

今回演じる徳重晃でも、さらにすばらしい演技を見せてくれるでしょう。「19番目のカルテ」は、2025年夏ドラマで最も目が離せないドラマになりそうです。

(ゆるま小林)

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