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近隣の騒音トラブル…住民「ストレス」→弁護士「損害賠償の対象に」慰謝料を請求する“ある方法”とは【法律のプロが解説】

  • 2025.9.3
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

マンションやアパートなどの集合住宅で、多くの人が悩まされているのが「騒音トラブル」。特に、上の階から響く子どもの足音や物音は、避けようがないだけにストレスが募ります。管理会社に相談しても「注意の貼り紙を出すだけ」で終わり、状況が改善しないという声も少なくありません。

では、法的に「我慢の限界を超える騒音」とはどのレベルなのか。そして実際に慰謝料を請求するためには、どんな証拠が必要になるのでしょうか。弁護士の解説をもとに、泣き寝入りせずに取れる対応策を紹介します。

「受忍限度」を超えたら違法な騒音に

裁判所が騒音トラブルを判断するときに用いる考え方が、「受忍限度」です。

これは「社会生活を営む上で常識的に我慢すべき範囲」のことを意味します。

つまり、多少の生活音は仕方がないとしても、深夜や早朝に連日響く足音や、振動を伴うような激しい物音が続く場合には「受忍限度を超えている」と判断され、違法な騒音として損害賠償請求の対象になり得ます。

騒音を立証する“最強の証拠”とは?

「受忍限度を超えている」と主張するには、証拠の積み重ねが欠かせません。

  • 騒音計での測定記録
    数値で示せるため有力。ただし「何デシベル以上で違法」という明確な基準はなく、あくまで参考値になります。
  • 録音・録画データ
    実際にどのような音がしていたかを示せるため重要です。特に時間帯や継続時間が分かる形で残すと説得力が増します。
  • 詳細な日記
    「5月10日 23時〜1時頃まで足音が続いた」など、具体的に記録することが大切です。

ポイントは長期的・継続的に残すこと。一度や二度では「たまたま」と片づけられてしまう可能性があるため、時間をかけて証拠を蓄積しましょう。

管理会社にできること・できないこと

「管理会社に相談しても貼り紙しかしてくれない」という声はよく聞かれます。

法的に見ても、管理会社には「入居者が平穏に暮らせるように物件を管理する義務」がありますが、騒音主に直接的な強制はできません

そのため管理会社の対応には限界があり、「対応が遅い」「十分でない」と感じても、法的責任を問うのは難しいのが現実です。まったく動いてくれない場合には「管理責任を怠った」として賠償を求められる余地はありますが、騒音トラブルそのものの解決にはつながらないケースが多いでしょう。

騒音主に慰謝料を請求できる?

受忍限度を超える騒音が継続している場合には、騒音主に対して損害賠償(慰謝料)を請求することが可能です。

慰謝料の金額はケースによって異なりますが、

  • 騒音の頻度や継続期間
  • 精神的・身体的な不調の有無(不眠や体調不良など)
  • 医師の診断書の有無

などを考慮して判断されます。一般的には10万円〜50万円程度に収まることが多いですが、被害が長期に及ぶほど増額される可能性があります。

裁判を避けたいなら「民事調停」という選択肢

「慰謝料を請求したいわけではない。とにかく騒音をやめてほしい」という場合には、民事調停が有効です。

民事調停は、裁判所で第三者を交えて話し合いを行う手続きです。裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、当事者双方が納得できる落としどころを探ることを目的としています。費用も安く、弁護士をつけずに自分で申し立てることも可能です。

特に近隣トラブルのように、その後も生活が続いていく関係では、民事調停による円満解決が現実的な選択肢といえるでしょう。

まとめ

騒音が「受忍限度」を超えれば違法行為となり、損害賠償請求が可能になります。

  • 証拠は「音量+状況+継続性」を示す形で蓄積することが大切
  • 管理会社に求められる対応には限界がある
  • 騒音主には慰謝料請求ができ、相場は10〜50万円程度
  • 裁判を避けたい場合は「民事調停」での解決も検討できる

上階の足音に悩まされても、泣き寝入りする必要はありません。冷静に証拠を積み上げ、適切な法的手段を取ることで、平穏な生活を取り戻すことができます。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

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茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。