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子どもを車内に放置…親「ほんの数分だった」→弁護士「20年以下の拘禁刑も」“ちょっとだけ”が招く最悪の結末とは?

  • 2025.8.30
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

夏の駐車場で買い物や用事を済ませるとき、「すぐ戻るから」「エアコンをかけているから大丈夫」と考え、子どもを車内に残した経験のある保護者は少なくありません。特に寝ている子どもを起こしたくない、ほんの数分のことだからという気持ちが働きがちです。しかし、その「ちょっとだけ」の油断が、最悪の場合は命を奪い、保護者が重大な刑事責任を問われる結果につながります。

今回は、炎天下の車内放置がどのような罪にあたるのか、また発見した第三者がどう行動すべきかについて、弁護士の解説をもとに詳しくお伝えします。

数分でも危険! 炎天下の車内放置は“遺棄罪”にあたることも

まず、子どもを炎天下の車内に残した場合に想定されるのが「保護責任者遺棄罪」です。

この罪は、扶助を必要とする人を保護すべき立場にある者が、その義務を果たさなかった場合に成立します。子どもは自分で危険から身を守れない存在であり、保護者の監督が不可欠です。そのため「真夏の車内に放置する行為」は、この罪の典型例といえるでしょう。

さらに放置の結果として、子どもが怪我をすれば「過失傷害罪」が成立することもあります。つまり、「無事だったからよかった」で済む話ではなく、法律上はその行為自体が罪に直結し得るということです。

「数分だけ」「エアコンをつけていた」は通用すル?

多くの保護者が「ほんの数分だから」「エアコンをかけているから安心」と考えがちです。では、その事情は法的にどの程度考慮されるのでしょうか。

弁護士によれば、実際にエアコンを作動させていて短時間であれば、危険性が小さいと評価され「遺棄」にあたらない場合もあります。

保護責任者遺棄罪は「放置すれば必ず成立」するものではなく、子どもの生命や健康に危険を及ぼしたかどうかが重要視されます。放置した時間の長さ、当日の気温や日差しの強さ、車内の状況なども総合的に考慮されるのです。

ただし「短時間だから大丈夫」と自己判断することは非常に危険です。気温が高い日には数分であっても車内温度が急上昇し、子どもの体温調整機能が追いつかず、熱中症のリスクは一気に高まります。特に近年の猛暑では、そのリスクが以前よりも格段に高まっていることを忘れてはいけません。

死亡事故につながった場合の重罪

もし放置によって子どもが熱中症などで死亡してしまった場合、罪の重さは一気に増します。

この場合、罪名は「保護責任者遺棄致死罪」となり、刑罰は「3年以上20年以下の拘禁刑」となります。通常の保護責任者遺棄罪が「3か月以上5年以下」であることを考えると、その重さは段違いです。

つまり「少しのつもりだった」「事故になるとは思わなかった」という言い訳は通じず、結果的に子どもの命を奪った責任は極めて重く問われるのです。

第三者が発見した場合の対応

では、もしあなたが駐車中の車内に子どもが取り残されているのを発見したら、どうすべきでしょうか。

最優先は警察に通報することです。しかし一刻を争う状況では、それだけでは間に合わない可能性があります。その場合、車の窓ガラスを割って救出する行為は許されるのでしょうか?

弁護士によると、形式的には他人の財産を損壊する行為ですが、子どもの命を救うためであれば正当防衛や緊急避難が成立します。

そのため、刑事責任も民事責任も原則として問われないと考えられます。仮に救出の際に子どもが怪我をしてしまっても同様で、救助行為は違法性が阻却されるのです。

つまり、炎天下で子どもが放置されている状況は「やむを得ない事態」であり、周囲の大人が積極的に行動することが法的にも認められるのです。

防ぐために心に刻むべきこと

近年、一部の商業施設では車内放置を検知するシステムが導入されるなど、社会全体で悲劇を防ぐ取り組みが進んでいます。しかし、最大の責任はやはり保護者自身にあります。

「すぐ戻る」「寝ているから起こしたくない」――こうした一瞬の判断が、子どもの命を危険にさらし、保護者の人生をも一変させる可能性があることを忘れてはいけません。

炎天下の車内は数分であっても危険が高まり、最悪の場合は死亡事故につながります。さらに法律上も、放置そのものが「遺棄」とされ得る行為であり、結果が重大であれば極めて重い処罰が待っています。

まとめ

炎天下の車内放置は「ほんの少しの油断」が最悪の事態を招く行為です。
保護責任者遺棄罪や過失傷害罪、さらに死亡事故の場合には保護責任者遺棄致死罪に問われる可能性があり、刑罰も極めて重くなります。

また、発見した第三者は警察への通報とともに、必要であれば窓ガラスを割って救出する行為も法的に正当化される場合があります。

何より重要なのは、「どんな短時間でも子どもを車内に残さない」という意識を保護者が持つこと。猛暑の時代においては、それが子どもの命を守る唯一の方法です。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

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茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。