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「実際に訴訟が行われる」予約を無断キャンセル → その後届いた“高額請求”に「個人情報を特定できる」【法律のプロが解説】

  • 2025.8.25
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「体調が悪くなった」「うっかり忘れていた」――。飲食店の予約をキャンセルした経験は、多くの人にあるでしょう。特に、連絡もせずに無断でキャンセルしてしまう、いわゆる“ドタキャン”は、店にとって大きな損害となります。

そして後日、お店から「キャンセルを請求します」といった高額な連絡を受け、慌ててしまうケースも。果たしてこのような請求に、法的な支払い義務はあるのでしょうか。キャンセル料が有効とされる条件や、認められる金額の相場について、弁護士の解説をもとに整理します。

キャンセル料の法的根拠は「損害賠償」

飲食店の予約は、法律的には「席や料理の提供を前提とした契約」です。

これを客側が一方的に破棄すれば、店側には食材の仕入れや人件費のロス、他の予約を断った機会損失などが生じます。

そのためキャンセル料とは、契約不履行に基づく損害賠償の一種と考えることができます。特に無断キャンセルの場合、店側の損害は大きく、賠償請求の正当性は高いといえるでしょう。

キャンセルポリシーの説明がなくても払う義務はある?

「予約時にキャンセル料の説明を受けていないから払わなくていい」と考える人もいます。しかし、弁護士によれば説明がなくても支払い義務は生じ得るとのことです。

なぜなら、キャンセルによって店側に損害が発生している以上、損害を補填する責任は免れられないからです。

特に予約日が直前であるほど、店側は代わりの客を確保できず、損害が大きくなります。説明がなかったからといって「ゼロ円でいい」という理屈にはならないのです。

キャンセル料の「金額」決定にルールはあるのか

気になるのは「いくら請求されるのか」という点です。

  • コース料金100%の請求
    当日や前日のキャンセルであれば、仕入れた食材が無駄になり、実際の損害と直結します。この場合、コース代金全額を請求される可能性はあります。
  • 平均客単価×人数分の請求
    店は本来その予約で利益を得られるはずでしたから、この計算式も合理性があります。

ただし、キャンセルが早い段階で行われ、店が代わりの予約を確保できる見込みがあった場合などは、請求が無効と判断される可能性もあります。キャンセル料はあくまで「店側に発生した平均的な損害」を限度として認められるのです。

高額な請求が来ると不安になりますが、重要なのは「その金額が店の損害に見合っているかどうか」です。

例えば小規模な飲み会の無断キャンセルで、仕入れや人件費の実害が数万円程度であるにもかかわらず「30万円を請求」といったケースは、過大請求として争えば減額される可能性が高いでしょう。

お店は本当に訴えてくるのか?

「どうせ泣き寝入りするしかない」と思いがちですが、実際に訴訟が行われることもあります。

弁護士によれば、電話番号しか分からない客であっても、弁護士会照会を通じて携帯会社に情報開示を求めることで、氏名や住所を特定できるとのこと。

予約記録や損害の証拠を揃えれば、訴訟で店側が勝つ可能性は十分にあります。

不可抗力なら支払いを免れる?

客側に「やむを得ない事情」があった場合はどうでしょうか。

  • 急な体調不良や不幸
    店側には関係がない事情とされ、原則としてキャンセル料の支払い義務は免れません。
  • 災害や大規模な事故
    店側も営業が困難になるような広範囲の災害であれば、キャンセル料は不要となる可能性があります。ただし、客側だけに起きた事情であれば免責されないことが多いです。

結局は店との交渉次第で、日程変更や請求額の減額に応じてもらえる場合もありますが、法的には支払義務が残るケースがほとんどです。

まとめ

飲食店の予約をドタキャンした場合、キャンセル料は損害賠償として請求され得ます。キャンセルポリシーの説明がなくても、損害が発生していれば支払義務はあるのが現実です。

  • 金額は「店の平均的な損害」が上限で、過大な請求は減額される可能性もある
  • 店は電話番号から個人を特定して訴訟を起こすことが可能
  • やむを得ない事情でも、基本的には支払い義務が残る

無断キャンセルはお店の経営に大きな打撃を与えます。たとえ客側に悪気がなくても、法的責任は免れません。予定変更が必要になったら、できるだけ早く連絡を入れることが、トラブルを防ぐ最大の方法です。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

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茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。