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「1億円を超える賠償命令も」電動キックボードが招く“最悪の結末”に「人生を棒に振る」「想像以上に大きいリスク」【法律のプロが解説】

  • 2025.8.26
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

2023年7月の法改正により、免許不要で誰でも手軽に利用できるようになった電動キックボード。ナンバープレートを付けて公道を走れる一方、ヘルメット着用は「努力義務」とされたため、街中でも気軽に利用する人の姿が目立ちます。

しかしその手軽さとは裏腹に、ひとたび事故を起こした場合の法的責任は非常に重いものです。特に任意保険に加入していないケースが多いため、もし人身事故を起こしてしまったら、運転者は途方もない賠償金を背負いかねません。

自動車や自転車とは異なる、電動キックボード特有のリスクと責任について、弁護士の解説をもとに整理します。

電動キックボードは「原付」扱い? 適用される交通ルール

電動キックボードは「特定小型原動機付自転車」と位置づけられており、道路交通法が適用されます。

  • 飲酒運転の禁止
  • ナンバープレートの装着義務
  • 信号遵守などの一般的な交通ルール

これらは自動車や原付と同じです。ただし、運転免許は不要で、ヘルメット着用は努力義務という点で自転車に近い扱いとなっています。ルール上の「緩さ」と「厳しさ」が混在するのが特徴です。

歩行者と接触したら…刑事責任と民事責任

もし電動キックボードで歩行者と接触しケガを負わせてしまった場合、運転者は二重の責任を負います。

  • 刑事責任:過失運転致傷罪や、悪質な場合には危険運転致傷罪
  • 民事責任:治療費や慰謝料、後遺障害が残った場合には逸失利益も含む損害賠償

特に民事賠償は高額化しやすく、被害者が若年かつ高収入であった場合、1億円を超える賠償命令が下るケースもあり得ます。

保険未加入で高額賠償…自己破産しても逃げられない?

電動キックボード利用者の多くは自賠責保険のみで、任意保険に加入していません。

では、数千万円や1億円規模の賠償を命じられた場合、自己破産すれば責任を免れるのでしょうか。

弁護士によれば、自己破産によって通常の借金は免責されますが、故意や重大な過失による人身被害の賠償責任は免責されません。 つまり、事故の態様や被害の程度によっては、破産しても賠償責任が残り続けるのです。

「保険未加入=人生を棒に振るリスク」と言っても過言ではありません。

被害者の立場から…加害者が無保険だった場合の救済策

では、加害者が任意保険に加入していなかった場合、被害者は泣き寝入りするしかないのでしょうか。

考えられる手段は以下のとおりです。

  • 被害者自身の人身傷害補償保険を利用する
  • 政府保障事業を活用する:無保険者による事故で被害を受けた場合、自賠責と同等の補償が受けられる制度

ただし、こうした制度を利用しても、必ずしも十分な補償が得られるわけではなく、被害者が経済的・精神的に大きな負担を背負うケースは少なくありません。

飲酒運転・信号無視…悪質な違反でさらに重い責任

電動キックボードの事故であっても、飲酒運転や信号無視といった悪質な違反があれば、責任は一層重くなります。

  • 民事:治療費そのものが増えるわけではありませんが、慰謝料が増額される可能性があります。
  • 刑事:深酒での運転では危険運転致死傷罪が成立しやすく、信号無視で重大な事故を起こせば同罪が成立することもあります。

つまり「小型の乗り物だから罪は軽い」という考えは誤りで、むしろ法的責任は自動車と同等に重く問われる可能性があります。

まとめ

電動キックボードは、気軽に乗れる乗り物である一方、事故を起こした際のリスクは想像以上に大きいものです。

  • 原付と同様に交通ルールが適用される
  • 歩行者と接触すれば刑事・民事双方で重い責任を負う
  • 保険未加入なら高額賠償から逃れられず、自己破産でも免責されない可能性がある
  • 被害者救済の制度はあるが、十分とは限らない

「便利だから」「免許が不要だから」と軽く考えて乗れば、人生を一瞬で狂わせかねません。利用者は必ず任意保険に加入し、ルールを守ることが、自分と他人の人生を守る最善の方法なのです。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

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茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。