「北欧＝ミニマルファッション」のイメージを刷新する、スウェーデン発の注目ブランド6選【若手デザイナー連載】

2025.7.27

3年ほど開催が見送られていたものの、スウェーデン政府の支援もあって2026年春夏シーズンに見事復活を遂げたストックホルム・ファッション・ウィーク（STHLMFW）。国際開発協力・対外貿易大臣のベンヤミン・ドゥーサは、「スウェーデンのクリエイティブ企業は、強力な輸出エンジンであるだけでなく、スウェーデンのアイデア、知識、文化の重要な担い手であり、アンバサダー的存在でもあります」と話す。

STHLMFWを主催したASFB（Association of Swedish Fashion Brands：スウェーデンファッションブランド協会）は今季、2020年から2023年の間に設立された新進ブランドにスポットライトを当てることにしたが、そのほとんどがこれまでショーを開催したことがなかった。こういったブランドによるデビューショーは、STHLMFWに初めて出席する若者たちを引きつけ、会場にはそれぞれ思い思いのファッションに身を包んだ人々が集った。『VOGUE』でお馴染みのストリートフォトグラファーであるアシエル・タンベトヴァも現地に赴き、最新のストリートスタイルを追いかけたが、その多くがこの地を象徴するミニマリズムとはまたひと味違うものだったのも興味深い点だ。ランウェイでは、クリーンなラインのルックとアバンギャルドなルックのバランスが目立ち、ファッションの世界で今起こっている流れを反映していた。

なかでもスタジオコンスタンス（STUDIO CONSTANCE）とパストテンス（PAST TENSE）は、最近独立したベテランデザイナーがプロデュースするブランドで、それぞれの熟年の経験がコレクションにもよく表れていた。今回のSTHLMFWの成功は、このように長年活躍してきたデザイナーによる新しいビジネスと、キャリアをスタートさせたばかりの「注目株」の組み合わせにあると言える。以下に紹介するストックホルムの新星たちを、ぜひチェックしてみてほしい。

STUDIO CONSTANCE スタジオコンスタンス

「私たちはミニマルな北欧ブランドになりたいわけではありません。ハイクオリティなハイファッションを目指しているのです」。デビューショーでこう意気込みを見せていたのは、スタジオコンスタンス（STUDIO CONSTANCE）のレベッカ・ドーヴェンリッド・アルンベルグ。彼女はスウェーディッシュストッキング（SWEDISH STOCKINGS）のメッシュを使い、ウエストを折り返した軽やかなパンツや素肌がのぞくトップを制作したほか、デッドストックのレザーをカットしてスエードの面をあえて見せたデザインや、肩を出したルックを多く披露。そのどれもが、さりげないセクシーさを宿していた。

サンフランシスコのアカデミー・オブ・アート大学出身で、トーテム（TOTEME）やプロエンザスクーラー（PROENZA SCHOULER）でスキルを磨いたアルンベルグは今回、卒業コレクションで余った糸を活用し、80年代のテイストを取り入れたカットソーも提案。サーキュラーファッションは彼女が目指す目標であり、これはそのほんの一例だ。祖母のミドルネームである「CONSTANCE」をブランド名にしたのも、この語が一貫性や持続性を意味するからだという。

PAST TENSE パストテンス

「スウェーデンのブランドとして、ストックホルム・ファッション・ウィークには参加しなければならないと感じました」とメールで話してくれたのは、パストテンス（PAST TENSE）のヴィクター・リンド。彼はまた、「若手ブランドとして受けたすべての支援に恩返しするために、私たちもこの新しいイニシアチブをサポートしたいと思った」という。パストテンスは、ニールバレット（NEIL BARRETT）で長年働いていたリンドと、レーベルのビジネス面を支えるアドリアン・フォレイによって、わずか2年前に設立されたばかり。「At Least the Sun Still Shines」と名付けられた2026年春夏のラインナップは、クラシックなテーラードスタイルを基調としながらも、ショートパンツやサンダルとのスタイリングがイージーでバカンスにもぴったりなムードを演出していた。

IMASKOPI イマスコピ

イマスコピ（IMASKOPI）のランウェイで披露された一連のニットルックは、デザイナーのネリー・スコグと彼女の母親が手編みしたもの。500年にわたる北欧文化を紹介するノルディスカ博物館を発表の場に選んだ理由について、「（北欧の）ハンドクラフトの歴史に再び触れ、そのヘリテージとつながりたかったのです」とデザイナーは話す。「森の生き物」をイメージしたこのコレクションのショーでは、スコグが制作中に聴いていたというスカンジナビアの民族音楽が生演奏され、耳のついたハットのシルエットはスウェーデンの画家ヨン・バウエルの作品に登場するトロールや妖精たちを想起させた。

ストックホルム大学でファッションとジェンダー学を学んだスコグは、ジェンダーレスな服をデザインすることに情熱を注いでおり、その想いをこう語る。「どうやって、あるいはなぜ服を性別で分けるのか、私にはよく理解できません。服は着るだけ。さまざまな組み合わせで、さまざまな体に着せることができる。それがファッションのエキサイティングなところだと思います」

LEONÍ レオニ

ストックホルムで最も成功したリテーラーのひとりであるナタリー・シューターマンは2年前、ベックマン（BECKMANN）で経験を積んだデザイナーのフィリッパ・フクスとタッグを組み、レオニ（LEONÍ）を立ち上げた。ふたりは、アートワークやオブジェが並ぶブコウスキーのオークションハウスで2026年春夏コレクションを発表。ミニマリズムにラグジュアリーで洗練されたひねりを加えたコレクションと、ロケーションは見事にマッチしていた。

フクセは京都を訪れたことでインスピレーションを受け、「セレモニーの一種」としての服装について考えるようになったと語る。また、ルックの多くはカスタマイズできるようデザインされている。

SEAMS シームス

最年少参加者のひとりである21歳のダスティン・グリックマンはカリフォルニア生まれ。セントルイスで育ち、7歳のときにストックホルムに移り住んだ。Tシャツとパーカを専門に扱うアバンダント（ABUNDANT）をスタートさせたのは、彼が16歳のとき。そして2023年、設立から5年が経ったシルバージュエリーブランドのシームス（SEAMS）のニマ・ラックが、グリックマンをアパレル立ち上げのために抜擢した。そんな若きグリックマンがデザインするのは、彼いわく「ストリートスタイルにパンキッシュな要素をミックスした」ウェアだ。

今シーズンのショーには、モデルにもヘアメイクチームにも、グリックマンの知り合いのクリエイターたちを起用した。グリックマンとシームスがタッグを組んでからまだ日は浅いが、彼は今、同年代のコミュニティに響くような服を意識しているという。「私たちはスウェーデン発のブランドとして見られたいと思っていますが、この地にはミニマルなブランドばかりではなく、私たちのような存在もあるのだとアピールしたい」と意欲をのぞかせている。

TEMESGEN テメスゲン

STHLMFWのラストを飾ったテメスゲン（TEMESGEN）は、ジミー・テメスゲン・サンドバーグが立ち上げたこの都市のアフリカン・ディアスポラを代表するブランドのひとつ。デビューショーには満員を超える観客たちが集い、このブランドを支持した。サンドバーグは以前、トーゴ系スウェーデン人デザイナーのアンジェロ・ダ・シルヴェイラ（ANGELO DA SILVEIRA）が設立したダイ・モンド（DIE MONDE）に在籍していたことがある（シルヴェイラもまた、会期中に中古ファッション専門のHUMANAとコラボレーションしたコレクションを発表した）。

ショー前のやり取りで、サンドバーグは「スウェーデンとエチオピアのインスピレーションに満ちた融合」を目指していると語っていた。ユニセックスのラインナップは、デッドストックやリサイクル生地で仕立てられたもので、スマートなカーキのオーバーコートをはじめとする多くのアイテムにあしらわれたエチオピック文字が個性を添えていた。

Text: Laird Borrelli-Persson Adaptation: Motoko Fujita

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