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日本独占プレビュー参加。フィービー ファイロの最新作「D」コレクションで見た、静かな進化と確かな信念

  • 2025.7.25

再検証を重ねる、静かなる進化

2023年10月30日のローンチ以来、伝統的なファッションカレンダーに縛られず、独自のタイミングでオンラインを通してコレクションを発表してきたフィービー ファイロ(PHOEBE PHILO)

今回発表された「D」コレクションのイメージは、前回に続き、イギリス人フォトグラファーのアレスデア・マクレランをはじめ、複数のフォトグラファーが参加。ポーズやライティングの演出を抑え、静けさの中に宿る力強さを引き出すビジュアルが並んでいる。フィービー自身がイメージ制作に深く関わっていることもあり、構図や陰影には、シルエットや素材の魅力を的確に伝えようとする繊細な配慮が感じられる。

今回のプレスプレビューで見たのは、フィービーが一貫して追求してきた「現代女性のワードローブに本当の必要なものとは何か」という問いへの、さらに進化したアプローチ。前回のコレクションで登場したアイテムの再解釈も多く、完成度をさらに高めつつ、少し異なる視点を加えることで、継続性と新鮮さのバランスを保っている。

見どころは、多様なボンバージャケット

特に目を引いたのは、ボンバージャケットの多様性とその進化。「ムーン・ボンバー」と名付けられたカーフレザーのジャケットは、背面が少し高い位置でフィットするつくりになっていて、横から見ると丸みを帯びた彫刻的なシルエットに。ドレープラインの襟は、立てたり寝かせたりとスタイリングの幅が広がる。

そのほかにも、ジャケットの上に重ねたクロップド丈のものや、コンパクトなケープへと変化したものなど、バリエーション豊かに登場。それぞれが個性を持ちながら、現実のワードローブに無理なく取り入れられる、リアリティのある服だ。

日常に潜む意外性と愛らしさ

フィービー ファイロを象徴するトレンチコートも健在。軽量のテクニカル・ビスコース・ツイル素材を使用し、ベルト付きで着心地は軽やかでいて、シルエットは彫刻的。クラシックなピースにモダンなひねりを効かせた、投資する価値のある一着だ。

また、印象的だったのがシアリングを採用した「スーパー・テディ・ジャケット」。力強いショルダーと膨らみのあるアーム、バックには跳ね上がりのようなシルエットが加えられている。チノコットンのジーンズとフラットサンダルという日常的なアイテムと合わせるスタイリングには、フィービーらしい「コントラストの妙」が垣間見える。

「シュガー」と名づけられたトップスやベストにも注目。中にオーガンザを詰め込むことで、ふくらみのある立体感が加わり、可愛らしくもフェミニンな印象に。シルクサテンにプレウォッシュを施し、縫製後にさらにウォッシュをかけ、何度も着たような風合いを生むことで、甘さをほどよく抑えている。

細部に宿る、確かな意志

アクセサリーはフィービーのファンにとって常に垂涎の的。シューズでは、バックルストラップと小さなヒールを掛け合わせたサンダル、紙のように薄くシワ感のあるレザーに内側に湾曲したエッジィなヒールのパンプスを組みわせるなど、相反する要素の融合が際立っている。

ジュエリーにも四角や三角などジオメトリックなフォルムが多く取り入れられており、黒を基調としたネックレスやイヤリングがアクセントに。「クラスター」イヤリングは、有機的で乱雑なシェイプと左右で異なる色味を持ち合わせ、完璧ではないものの中に美しさを見出すフィービーの姿勢が表れている。

そして、トートバッグ「キャバス」は今季も継続。レザーとスエードによるヘリンボーン柄で、イギリスのアイデンティであり今回のテーマであるジオメトリック柄をさりげなく取り入れており、細部へのこだわりが光る。

フィービー ファイロが貫く、アンチ・ノイズと今後の出店計画

大量生産とファストファッション疲れ、ラグジュアリーの商業主義化が進む今、フィービー ファイロはそれらの喧騒から距離をとり、思想と審美眼に裏打ちされたストイックなクリエイションを貫いている。それは、自分自身の感覚と現実を生きる女性たちに真正面から向き合っているからこそだろう。かつてセリーヌ時代のインタビューで残した「服が語ってくれる」という言葉は、今も変わらず核心を突いているように思える。

この「D」コレクションは、2026年2月から公式オンラインサイト、ストアおよびホールセールパートナーにて順次発売される。さらに、現在はロンドンのメイフェアに初となる旗艦店の出店計画の噂も浮上しており、今後の動きにも注目が集まる。

phoebephilo.com

Photos: Courtesy of Phoebe Philo Text: Maki Saijo

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