1. トップ
  2. 「胸糞悪い」「マジで辛い」“救いのない脚本”に視聴者絶句…だけど「こんなおもしろい映画あったの」熱狂的な支持を集める傑作

「胸糞悪い」「マジで辛い」“救いのない脚本”に視聴者絶句…だけど「こんなおもしろい映画あったの」熱狂的な支持を集める傑作

  • 2025.9.30

映画の中には、正義の名のもとに行使される権力が、果たして本当に正しいのか――そんな問いを突きつける作品があります。今回は、そんな中から"司法の闇と戦う社会派ミステリー作品"を5本セレクトしました。本記事ではその第4弾として、映画『罪と悪』(ナカチカピクチャーズ)をご紹介します。22年前の罪と新たな事件。再会した幼なじみたちが直面する「罪」と「悪」とは――?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

undefined
高良健吾(C)SANKEI
  • 作品名(配給):映画『罪と悪』(ナカチカピクチャーズ)
  • 公開日:2024年2月2日
  • 出演: 高良健吾(阪本春 役)

町の中心を流れる川にかかる橋の下で、13歳の少年・正樹の遺体が無残な姿で発見されました。突如として起きた殺人事件に、小さな町は不安と恐怖に包まれ、住民たちの間ではさまざまな噂が飛び交います。

正樹と同じ中学校に通う春(高良健吾)、晃(大東駿介)、朔(石田卓也)、直哉の4人は、正樹がよく遊びに行っていた謎めいた老人「おんさん」を疑い、家に押しかけました。そこでもみ合いとなり、ひとりがおんさんを殺害。春はその罪をすべて一人で背負い、証拠隠滅のために家に火をつけました。

事件から22年後、刑事となった晃は父の死をきっかけに故郷へ戻ります。葬儀で朔と再会した晃は、朔が農業を継ぎながら、ひきこもり状態の双子の弟・直哉の世話をしていることを知ります。

そうした中、かつてと同じ橋の下で、再び少年の遺体が発見されました。現場の状況はあの22年前の事件と酷似しており、町は恐怖と不安に包まれます。捜査を進める晃は春とも再会。春は現在、建設会社を営みながら非行少年たちを支援しており、殺害された少年も春のもとへ出入りしていた一人でした。幼馴染3人の再会により、それぞれが心の奥に封印してきた22年前の記憶が呼び覚まされます。過去と現在、二つの事件の関連性が徐々に明らかになるにつれ、隠されてきた真実が浮かび上がってくるのでした――。

初監督作で挑んだ本格サスペンス映画

映画『罪と悪』は、著名な監督たちの下で助監督を務めてきた齊藤勇起さんが、完全オリジナル脚本初監督を務めた本格サスペンス映画です。

ドラマ『忍びの家 House of Ninjas』『1122 いいふうふ』や映画『Gメン』『水は海に向かって流れる』などで知られる高良健吾さんが主演を務め、22年前の罪と向き合い、闇の仕事を請け負う建設会社社長・春を演じています。警察官の家庭に育ち自らも捜査一課の刑事となった晃を映画『草の響き』の大東駿介さんが、家業の農業を継ぎ弟の面倒を見ている朔を映画『あしやのきゅうしょく』の石田卓也さんが演じています。

特別出演として、白山會の会長・笠原役に佐藤浩市さん、晃と同じ警察署の先輩刑事・佐藤役に椎名桔平さん、白山會傘下の清水組組長・清水役に村上淳さんという日本映画界を代表する実力派俳優陣が集結しています。特に佐藤浩市さんは、わずかワンシーンの出演ながら圧倒的な存在感で作品に重みを与え、村上淳さんは春と直接対立する清水組組長を独特の凄みで演じています。

「あの事件がなければ…」過去の記憶と壊れた絆

映画『罪と悪』の最大の見どころは、高良健吾さん、大東駿介さん、石田卓也さんが見せる繊細かつ迫真の演技です。長年の時を経ても心に残る過去の傷、そして歳月とともに形を変える感情の機微を、3人の俳優たちが見事に表現。SNSでも「主演3人の迫真の演技にリアリティを感じた」と高く評価されています。

中でも、高良健吾さん演じる春と村上淳さん演じる清水組組長が対峙するシーンは緊迫感に満ちており、「ものすごい凄みと迫力」「恐怖を覚えるレベルのノワール映画」と称賛の声があがっています。

また、監督の故郷である福井ののどかな風景と凄惨な事件のコントラストも印象的です。小さな町の日常が、突如として起こる悲劇で崩れ去る様子が巧みに描かれています。特に物語の終盤で映し出される、純粋で輝きに満ちていた頃の4人の思い出のシーンは心に残ります。あの最初の事件が起こらなければ、少年時代の純粋な関係性が壊れることはなかったのかもしれない——。その失われた可能性と現実の落差が、観る者の胸に深い余韻を残します。

SNSでも「ラストシーンで登場人物に深みが出て涙が出た」「哀しすぎる涙の傑作」といった感想が多数寄せられています。キャスト陣の繊細な演技と映像美が、物語にいっそうの深みを与えている名シーンです。

誰かを守りたい—その思いから生まれた悲劇

本作映画『罪と悪』は単なる善悪の対立ではなく、人の心の奥底に潜む闇とその背景を丁寧に描いています。

まず描かれるのは、トラウマとそれが引き起こす行動の連鎖です。朔が受けた性的暴行という深い心の傷と、正樹がその事実を春に話したという朔の誤解が重なり、結果、悲劇的な殺人事件へと発展。罪の隠蔽は連鎖的に新たな罪を生み出し、追い詰められた人間の弱さや脆さが露わになっていきます。

また、閉鎖的な町に根づく「沈黙」も、本作を語るうえで欠かせないテーマです。被害を声に出せない抑圧された環境が、どれほど人を追い詰め、心を歪ませていくのか――。その背景にある地域社会の歪みや、悪意の連鎖にも鋭い視線が注がれています。

さらに本作では、「正義とは何か」という問いも投げかけられています。制度のもとで動く警察官の晃、裏の仕事に手を染めながら不良少年たちを支える春、そして過去のトラウマに突き動かされる朔――。

三者三様の立場から、それぞれが信じる正義を守ろうとします。誰かひとりだけが正しくて、誰かが間違っているとは言いきれない。
この倫理のグレーゾーンを丁寧に描き出すことで、本作に深い奥行きが生まれています。

齊藤監督自身も「観客の皆さんが出す答えはどれも間違いではない」と語るように、この映画は明確な答えを示すのではなく、観る人それぞれの心に問いかける作品です。「何が罪で、何が悪だったのか」という問いそのものが、本作の核心となっています。

SNSでも、「どう生きればいいかを考えさせられる」「誰かを守るために罪を犯すことは悪なのか?」「タイトル通り、罪と悪について終始考えさせられる」「どうしようもないくらい愛しさがこみあげた」といった声が多く寄せられています。さらに、「誰も救われない」「マジで辛い」「胸糞悪い」など深く感情移入する声や「こんなおもしろい映画あったの」と絶賛する声も多く見られました。

自分が信じる正義のために、人は時に罪を犯してしまう――。本作は、そうした深い葛藤を抱えながら、懸命に答えを探し続ける人々の姿を描いた傑作です。


※記事は執筆時点の情報です