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30年前、世界中が“壊れかけの兄弟”に泣かされた 10億回再生を突破した“時代を超える名曲”

  • 2025.7.20

「30年前の今頃、なぜか薄曇りの空ばかり見ていた気がしない?」

1995年。阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件などが立て続けに起き、平成という時代がどこか不穏な輪郭を帯び始めた年でもあった。

世の中が浮ついていないぶん、人々の耳は「本物の音」に敏感だった。J-POP全盛の中、洋楽チャートにも突如として“センチメンタルな嵐”が巻き起こる。

イギリス・マンチェスターからやってきた兄弟バンドが、日本の若者の感情に奇跡的なシンクロを果たしたのだ。

Oasis『Wonderwall』(作詞・作曲:Noel Gallagher)——1995年10月30日リリース。

兄ノエル(Noel Gallagher)が作り、弟リアム(Liam Gallagher)が歌ったこの楽曲が、なぜ世界の“孤独”を飲み込むまでの存在になったのか?

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OasisのLiam Gallagher(C)SANKEI

“不安定な時代”が共鳴した、UKから届いた心の風景

『Wonderwall』は、Oasisにとって2枚目のスタジオ・アルバム『モーニング・グローリー』(原題:(What's The Story) Morning Glory?)からシングルカットされた1曲。彼らの存在を世界に決定づけた「名刺代わり」の楽曲として広く知られている。

本国・イギリスだけでなくアメリカ・カナダ・オーストラリアなどでもロングセラーとなり、結果的にアルバム全体で4,000万枚超を売り上げる世界的ヒット作の中核となった。

2020年10月にはSpotifyにて1990年代にリリースされた曲の中で10億回再生を初めて突破した楽曲となるなど、今もなお世界中で愛される曲として聴かれまくっている。

『Wonderwall』がここまで聴かれ続けてきた理由は、単なる“売れた洋楽”だからではない。この曲には、当時の若者が抱えていた「どこにも出口のない気持ち」にぴたりと寄り添う力があった。

“何もない毎日”に差し込んだ、言葉にならない感情

『Wonderwall』の最大の特徴は、コード進行のループと、感情が渦巻くようなメロディ構成にある。

イントロから繰り返されるアコースティックギターのリフに、リアム・ギャラガーの気怠いようでいて切実な歌声が重なり、聴く者を「何かを探している状態」に閉じ込めてしまう。

それが、当時の若者にとって“救い”でもあった。

「何かになりたい。でも、何にもなれない気がする」

「大人にも子供にも戻れない、今の自分はどこにいるのか」

そんな“青春の狭間”にいる感覚を、『Wonderwall』は決して明るく照らすわけではなく、曖昧なまま肯定してくれる。それが、この曲が30年経っても聴かれ続ける理由だ。

Oasisの登場が、日本の“洋楽の聴き方”を変えた

Oasisの登場は、1990年代中盤の日本の音楽ファンにとって、一種のカルチャーショックだった。

洋楽=難解、という印象が強かった者たちにも、彼らの音楽はどこか身近で、“わかるようでわからない、でも刺さる”という不思議な感覚を与えてくれた。

歌詞の意味が完全に理解できなくても、雰囲気だけで「気持ちが伝わる」音楽として受け入れられたOasisは、以後のUKロックブームのきっかけとなり、Radiohead、Blur、Coldplayといったアーティストの人気にも繋がっていく。その起点にあったのが、『Wonderwall』だった。

あの頃の自分に戻れる音楽は、そう多くない

 

今、ストリーミングで『Wonderwall』を再生すると、30年前と同じギターの響きが流れてくる。

そして不思議なことに、どれだけ時代が変わっても、再生メディアが変わっても、“あの頃の自分”がそこに戻ってくる感覚がある。

教室の窓際、駅のホーム、友達と沈黙のまま歩いた帰り道。何でもない日々の中に『Wonderwall』があった。

そういう記憶を呼び起こす音楽は、そう多くはない。

それを鳴らしていたのが、世界一仲の悪い兄弟バンドだったというのも、今ではちょっとした伝説だ。

Oasisは2009年に解散。以降、ノエルとリアムの確執は長く続いた。ファンは「再結成なんて絶対にない」と半ば諦めていた。

だが、2025年——ついにOasisは復活した。

兄弟はあの頃の音を、再び同じステージで鳴らし始めたのだ。時を超えて戻ってきた彼らの音楽は、やはり“あの頃の自分”を呼び起こす。

だからこそ、今あらためて『Wonderwall』を聴く意味がある。それは、過去ではなく“いま”の音になっている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。