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25年前、日本中を夢に駆り立てた“全力疾走ソング” 国民的アニメと融合し大ヒットした“新時代の音”

  • 2025.7.15

2000年。ミレニアムという新時代の幕開けに、人々は期待と不安を抱えていた。

西暦が2桁までしか対応していなかった当時のコンピュータシステムのバグ「2000年問題」が取り沙汰され、Windows MeやPlayStation 2が登場、ネットはまだADSLが出始めた頃。

音楽もCD全盛の終盤戦に入り、デジタルとリアルの境界が揺らぎはじめたそんなタイミングだった。そんな中、軽やかに、そして力強く鳴り響いた一曲がある。

Folder5『Believe』(作詞:谷穂ちろる・作曲:GROOVE SURFERS)

ーー2000年11月29日にリリースされたこの曲は、アニメ『ONE PIECE』(フジテレビ系)の2代目オープニングテーマとして一躍注目を集め、結果的にグループ最大のヒット曲となる。

“疾走感”がすべてを包み込んだあのイントロ

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Folder5 左からARISA、HIKARI、AKINA、MOE、NATSU (C)SANKEI

『Believe』の最大の魅力は、なんといってもそのスピード感。ユーロビート系サウンドに、ハイテンポなヴォーカルワーク。イントロからリズムが全開で加速し、気づけばリスナーの鼓動までも早くなっている。

Folder5は、三浦大知も所属していたダンス&ボーカルグループ・Folderの女性メンバー5人によって結成されたガールズグループ。『Believe』は彼女たちにとって3枚目のシングルだ。

ユーロビートのLOLITA『DREAMIN' OF YOU』(作詞・作曲:G.PASQUINI/F.RIZZOLO/S.OLIVA)に日本語詞を充てたカバーソングだが、アニメの人気と連動する形で、曲は爆発的に拡散。男女混合グループの派生ユニットとしての印象が強かった彼女たちが、独立したガールズグループとしての存在感を一気に強めていった。

なぜ『Believe』は時代の象徴となったのか?

『Believe』がヒットした2000年、沖縄アクターズスクール出身の先輩・SPEEDが同年3月に解散。J-POPシーンでは浜崎あゆみ、宇多田ヒカル、モーニング娘。などが全盛期を迎えていた。

ここに来て、Folder5のようなハイテンション×ハイスピードの楽曲は、デジタル化が進みつつある時代感にぴったりとハマった。

インターネット、デジカメ、携帯メールーーすべてが「速く、つながる」方向へと進化していたこの年に、“まっすぐに駆け抜ける音”としての『Believe』は、まさに“新時代の音”だったとも言える。

さらに、グループとしてのビジュアル、そしてダンスパフォーマンスの完成度も高く、「アイドル」と「アーティスト」の間を巧みに突いていた点も、彼女たちのポジションを確立させた要因だった。ちなみに、メンバーのHIKARIは後に「満島ひかり」と改名し、現在は女優として活躍。数々の映画賞を受賞するなど、その才能を多方面で開花させている。

『ONE PIECE』との“完全融合”が生んだ相乗効果

Folder5『Believe』が語られるとき、切っても切り離せないのがアニメ『ONE PIECE』との関係だ。

初代主題歌『ウィーアー!』(歌:きただにひろし/作詞:藤林聖子・作曲:田中公平)に続く2代目オープニングテーマとして起用され、アニメファンの間でも圧倒的な支持を獲得。

特に、ルフィたちが冒険へと突き進む様子と、疾走感のあるサウンドが完全にシンクロしていたことで、「作品の一部」として記憶される曲となった。言わば“主題歌×アーティスト”の成功モデルの一つと言っていい。

海賊王ロジャーの今際の一言が多くの人々を海に駆り立てたように、未来に対して前向きなこの“全力疾走ソング”は日本中を夢に駆り立てたのだ。

“信じる力”が突き抜けた、あの時代のサウンド

『Believe』というタイトルに込められたメッセージは、シンプルで力強い。

誰のものでもない、自分自身の夢ーー「信じた先に進んでいく」という前向きなエネルギーは、デジタル化の波に揺れる2000年代初頭の日本にとって、大きな意味を持った

25年が経ち、音楽はサブスク中心へ、アニメの主題歌もボーダレスに広がっている。

そんな今だからこそ、あの時代の“全力疾走”を思い出させてくれるこの曲は、ある意味でタイムマシンのような存在なのかもしれない。

『Believe』ーーそれは、走りながら信じ続けることの尊さを、音にして残した一曲だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。