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「私は絶対許せない」「ほんとに実話?」“信じ難い母親の姿”に批判の声も…だけど「よく向き合った」胸打たれる衝撃映画

  • 2025.7.13

映画の中には、役者の演技力によって心を揺さぶられる作品があります。今回は、そんな中から“母親役の怪演が話題の作品”を5本セレクトしました。本記事ではその第5弾として、映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』(KADOKAWA)をご紹介します。母から一度も愛されなかった息子が、それでもなお“母の愛”を求め続けた――実話に基づく、痛みと祈りの物語です。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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(C)SANKEI
  • 作品名:『母さんがどんなに僕を嫌いでも』(KADOKAWA)
  • 公開日:2018年11月16日
  • 出演: 仲野 太賀(タイジ 役)

一流企業に勤め、順風満帆に見えるタイジ(太賀)ですが、幼い頃から母・光子(吉田羊)から虐待を受け心身ともに傷つけられてきました。つらさを悟られないよう、本心を隠して生き抜いてきたタイジ。やがて大人になった彼は、心を許せる友人たちに出会い、かつて自分を傷つけた母と向き合う決意をするのですが――。

傷つけられた過去と、それでも消えなかった“願い”

本作の原作は、漫画家・小説家の歌川たいじさんが自身の壮絶な半生を綴った同名のコミックエッセイです。幼少期から虐待を受け、17歳で家を出たあとも「母の愛がほしい」と願い続けた息子・タイジの物語が描かれています。

映画の監督は、ドラマ『私の夫は冷凍庫に眠っている』(テレビ東京系)やドラマ『ダブル・ファンタジー』(WOWOW)などを手がけた御法川修さん。主演は現在は仲野太賀名義に改名し活躍している太賀さん。母・光子役は吉田羊さんが務めました。

「母さんがどんなに僕を嫌いでも」──この衝撃的なタイトルが突きつけるのは、母から一度も愛されなかった息子の悲痛な願い。虐げられ続けても、それでもなお“母の愛”を求め続けた実話を元にしたストーリーです。

苦しみの再現ではなく、再生への“祈り”

母・光子を演じた吉田羊さんは、なぜ母親がわが子を傷つけてしまうのか、その理由がどうしても理解できなかったといいます。撮影前に原作者の歌川さんから体験談を聞いたものの、聞けば聞くほど光子の思考がわからなくなったそうです。

一方、タイジを演じた太賀さんは、歌川さんと撮影現場で何度も顔を合わせていました。たいじさんは差し入れを持って現場を訪れ、芝居を見守りながら、時にはモニターの前で涙を流していたといいます。

のちに、太賀さんはぴあ映画のインタビューの中で次のように語っています。

この作品が、見てくれる人にどう評価されるのか分からないですけど、とにかくこの人のためにやりたい、歌川さんが喜んでくれたらそれでいいと思えたんですよね
出典:吉田羊×太賀『母さんがどんなに僕を嫌いでも』対談 「一本の筋を通して表現したかったんです」(Real Sound)2018.11.25配信

この言葉は、単なる役者と原作者の関係を超え、太賀さんがたいじさんの過去に心から寄り添っていたことをうかがわせます。登場人物の抱える苦しみや葛藤を通して、私たちもまた、自らの過去や現在の状況、そして未来への選択について問いかけられているようです。

変わらない相手と、もう一度向き合うという選択

物語の終盤、タイジは6年ぶりに母親と再会します。しかし、家を出たあの日から、母親は何一つ変わっていないように見えました。それでもタイジは、再び彼女と向き合おうとします。太賀さんの演技には「母とつながりたい」という渾身の想いが込められていました。

SNSでは、「ほんとに実話?」「たとえ肉親でも嫌な相手とは縁を切ればいい」「この母親を私は絶対許せない」「これは美談じゃない」「母親に搾取されてるだけ」と、母親への厳しい声や驚きの声も見られます。

一方で、「親が悪いのに、気づかないうちに“子どもが空気を読めばよかったのに”と責めていた自分にハッとした」と、自身の偏見に気づいたというコメントも。

さらに、「よく向き合った」「どれだけ傷ついても母に近づこうとするタイジがかっこよすぎる」「タイジに心打たれた」と、称賛の声も多く寄せられています。

本作が伝えるのは、母親に"愛されたい"という普遍的な願いです。母も子も、不器用で未完成なまますれ違いながらも、互いを求め続ける――。「母」という存在の重さと、愛の複雑さを問いかける名作です。


※記事は執筆時点の情報です