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「開始10分でやめた」「もう絶対観れない」“あまりにも残酷な脚本”に離脱者も…だけど「最初から最後まで観て」心震える名映画

  • 2025.7.18

映画の中には、役者の演技力によって心を揺さぶられる作品があります。今回は、そんな中から"母親役の怪演が話題の作品"を5本セレクトしました。本記事ではその第3弾として、映画『人魚の眠る家』(松竹)をご紹介します。生と死のはざまにある娘を前に、母が選んだ道は、果たして愛だったのか、それとも狂気だったのか――。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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(C)SANKEI
  • 作品名(配給):『人魚の眠る家』(松竹)
  • 公開日:2018年11月16日
  • 出演:篠原涼子(播磨薫子 役)

播磨薫子(篠原涼子)と夫・和昌(西島秀俊)は離婚を決めていましたが、娘・瑞穂がプールで溺れ、意識不明に。回復の見込みがない娘を生かすか、死を受け入れるか――夫婦は究極の選択を迫られます。ふたりが選んだのは、和昌の会社が持つ最先端技術による前例のない延命治療。娘は眠るような美しさを取り戻しますが、それが薫子の狂気を呼び覚まし、行動は次第にエスカレートしていきます。それは愛なのか、欲望なのか。やがて迎える、衝撃の結末とは――。

“生と死”のグレーゾーンに立たされた家族の選択

映画『人魚の眠る家』は、『容疑者Xの献身』などで知られるミステリー文学の巨匠・東野圭吾さんの作家生活30周年記念小説を、『TRICK』シリーズなどで知られる堤幸彦監督が映画化した作品です。

主演は、本作が映画初共演となる篠原涼子さんと西島秀俊さん。『アンフェア』シリーズの篠原さんが、我が子の悲劇に直面し究極の選択を迫られる母親・薫子を、そして西島さんが、IT企業の社長である夫・和昌を演じます。

原作者である東野圭吾さんは、自身の小説が映画化される際に、そのテーマの重さから『人魚の眠る家』だけは敬遠されるだろうと思っていたといいます。しかし、実際に完成した映画を鑑賞した東野さんは、本作を絶賛。Real Soundのインタビューの中で次のように語っています。

描かれているテーマは重く、ドラマは深く、派手なアクションシーンはありません。しかし間違いなく一級品の娯楽作品になっていました。私が密かに自負していた原作の「売り」を、見事に再現してもらっていました。原作者が泣いたらかっこ悪いという思いから懸命に涙は堪えましたが、皆さんは遠慮なく泣いてくださって結構です。
出典:篠原涼子×西島秀俊『人魚の眠る家』を原作者・東野圭吾が絶賛 幕間映像&場面写真も公開(Real Sound)2018.09.03配信

東野さんのこのコメントからは、執筆当初から並々ならぬ思い入れがあったことが伝わってきます。

この東野さんの深い問いかけは、映画にも色濃く反映されています。母・薫子は我が子への強い愛情から脳死状態の娘を「生きている」と信じ続け、夫・和昌は最初は延命に同意するものの次第に「偽りの希望」に苦悩し、若き研究者・星野(坂口健太郎)は科学技術で「生きているように見せる」ことと「本当の生」の狭間で揺れ動きながらも、開発途上の新技術に手を出してしまいます。それぞれの立場の葛藤を丁寧に描いているのも本作の魅力です。

究極の愛か、それとも狂気か

薫子役の篠原さんは、この難役に挑むにあたり、堤監督から「薫子はとても芯の強い女性」と助言され、悲劇に翻弄されながらも希望を捨てず子どもを守ろうとする強さを意識して演じたそうです。

SNSでは、篠原さんの迫真の演技に多くの反響が寄せられました。

物語の重さや母親の常軌を逸した行動に戸惑い、「重すぎて共感できない」「人が禁忌を犯す怖さを感じた」といった声も。母・薫子の行動が、視聴者に強烈な印象を残したことがうかがえます。

また、あまりの辛い描写に「もう絶対観れない」「あまりにもリアル」といった声や「開始10分でやめた」「しんどすぎて途中でやめた」と離脱する人も。

一方で、多くの観客はその「究極の愛」に共感し、涙を流しました。「周囲には狂人と映ったとしても、私は母親の愛情の暴走に共感しました」「子供の命を諦めない母親は狂ってはいない」「泣きすぎて立てなかった」「最初から最後まで観てほしい」と、その行動の根底に純粋な愛を見出す声が相次いでいます。

映画『人魚の眠る家』は、脳死した娘を受け入れられない母の姿を通して、命の尊厳と親子の絆を問いかけます。薫子の狂気にも見える行動は、深い愛情ゆえのものであり、「もし自分だったら」と考えずにはいられません。最終的には脳死の娘の命を諦め、臓器移植のドナーになることを受け入れた薫子…。命の受容、家族の葛藤、臓器提供といった重いテーマを、緻密な原作と演出で描いた名作です。


※記事は執筆時点の情報です