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「耐えられない」「退室ギリギリだった…」“異常な没入感”に圧倒される視聴者も…「今まで観たことない」“唯一無二”の名映画

  • 2025.7.17

映画の中には、役者の演技力によって心を揺さぶられる作品があります。今回は、そんな中から"母親役の怪演が話題の作品"を5本セレクトしました。本記事ではその第1弾として、映画『ミッシング』(ワーナー・ブラザース)をご紹介します。娘の失踪をきっかけに、世間の冷たい視線に追いつめられていく母・沙織里。その姿を通して浮かび上がるのは――。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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(C)SANKEI
  • 作品名(配給):『ミッシング』(ワーナー・ブラザース)
  • 公開日:2024年5月17日
  • 出演:石原さとみ(森下沙織里 役)

とある地方都市で、少女が突然失踪。手がかりはなく、3ヶ月経っても行方不明のままでした。

母・沙織里(石原さとみ)は娘の無事を信じていましたが、周囲の関心は薄れ、夫・豊(青木崇高)との温度差も広がります。唯一の心の支えは取材を続ける地元テレビ局の記者・砂田(中村倫也)でした。

事件当日、沙織里が推しのライブに出かけていたことが発覚すると、ネットでは「育児放棄の母」と非難の声が殺到。彼女は「娘に会いたい」という一心で訴え続けますが――。

美しさを脱ぎ捨てて挑んだ“極限の役”

本作は、映画『空白』『ヒメアノ~ル』などで人間心理の闇を描いてきた𠮷田恵輔監督が手掛けました。石原さんは約7年前に監督の作品と出会い、キャリアの行き詰まりを感じていた時期に「この人だったら私のこと変えてくれるはず」と感じたと2024年5月3日放送のTBS系『A-Studio+』で語っています。その後、出演を直談判し、出産後の復帰作として念願の𠮷田作品に参加しました。

演じたのは、最愛の娘を失ったことで極限状態に陥る母親。美しさを捨て、唇の荒れやボサボサの髪、くたびれた服で役を表現し、さらには、あえて添加物の多い食事を選び、髪はシャンプーではなくボディソープで洗うという徹底ぶりで役に挑みました。

石原さんの覚悟は、極限まで振り切った熱演として評価され、第49回報知映画賞主演女優賞を受賞。SNSでも「怪演としか言いようがない」「石原さとみの“狂気”に圧倒され、気づけば号泣」と賞賛の声が多く寄せられています。

爆発した妻と感情を抑えた夫

警察署のシーンは、本作で最も印象深い場面のひとつです。撮影前、𠮷田監督から“叫び”の演技を求められた石原さん。娘が見つかったという知らせを受けて駆けつけた沙織里が、いたずら電話だったと知った瞬間に絞り出した叫び声は、観る人の心を強く揺さぶりました。

一方、夫・豊を演じた青木崇高さんは、崩れていく妻を前に冷静さを保とうとする夫の姿を見事に表現。その静かな演技が、石原さんの激情と対をなすように物語に深みを加えています。

“異常なまでの没入感”

本作の特徴は、主人公を“可哀想な母親”として一面的に描いていない点です。沙織里は感情を抑えきれず叫んだり、怒りを周囲にぶつけたりと、必ずしも好感を持てる人物ではありません。そんな沙織里を見ているうちに、感情的な彼女の姿を冷ややかに見ていた自分に、はっと気づかされます。

また、娘が行方不明になった家族に向けられるネット上の誹謗中傷も重要なテーマのひとつ。SNSの何気ない一言が、どれほど深く被害者家族を傷つけるのか――。石原さんは、理不尽な声にさらされ、孤立しながらも娘を想い続ける母親の、言葉では表しきれない心の奥を見事に演じています。

視聴者からは、「最後の最後まで、劇場に明かりがつくまでスクリーンを見続けてしまうほど惹きつけられた」「最後までずっと考えさせられる作品」「最初から最後まで集中力が切れることなく食い入るように観た」という声が多く見受けられ、異常なまでの没入感を視聴者に与える作品であることがうかがえます。

そんな没入感とあまりにも辛い描写に「耐えられない…」「もうやめて」「退室ギリギリだった」といった声が上がる一方、「今まで観たことない」「すごいものを観た…」「現代だからこそ絶対観るべき」という絶賛の声が数多く寄せられています。

“完璧な母親”という幻想を崩す問題作

『ミッシング』は、現代社会が抱える問題や、人々が無意識に抱く“母親らしさ”という幻想に鋭く切り込んだヒューマンドラマです。沙織里の姿は、私たち一人ひとりに“完璧な母親”とは、そして“家族の幸せ”とは一体何なのか、という問いを投げかけます。

完璧な人間など存在しないという事実を突きつけながらも、その不完全さの中に宿る母親の愛情の深さを描いた本作。ぜひ、すべての大人に観てほしい珠玉の一作です。


※記事は執筆時点の情報です