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春の訪れを告げる、オーラリーの季節をまたぐワードローブ【2026年春夏 メンズコレクション】

  • 2025.6.25

毎年、ある時期になると、世界の空気が変わる。そしてその変化は、人々の心や着る服にも現れる。

春の訪れは、美化されることが多い。だからこそ、岩井良太はこのテーマを中心に、オーラリーAURALEE)の最新コレクションを作り上げた。春といえば、初めはまだ天気の移り変わりが激しい。しかし、その最初の不安定な日々さえ乗り越えれば、うららかな日が待っている。そう思うと、世の中の雰囲気も、人々の心も、自然と上向きになる。

岩井が通訳を介して説明した通り、日本には「春一番」というものがある。季節が冬から春へと変わる時期に、初めて吹く暖かい南よりのその強い風は、春の到来を告げる風物詩として知られており、冬が長いほど、その暖かさは身に沁み、厳しい寒さを耐え抜く糧となる。そして一度春を感じてしまうと、もう後戻りすることはできない。どれだけ寒暖差が大きくとも、私たちは軽やかな春の服に身に包み、冬はもう終わったものとみなす。

アメリカにも「fool's spring(愚か者の春)」という言葉がある。晩冬または初春に、春のように暖かい日が訪れたかと思えば、再び寒さが戻ってくることを言う。今回のコレクションは、そんな移り変わりの激しい季節だからこそ見られる、微笑ましい光景の数々にオマージュを込めていた。風で乱れた髪や服。この時期ならではの、気温に合わせて調整できるレイヤーコーデ。必要以上に着込んでしまい、重ねたアイテムを1枚1枚脱ぎ、腰などに巻く様子。春はすぐそこまで来ている。冬と春の間は特に曖昧になりがちな季節の境界線に目を向けることで、岩井は季節の変わり目に実にふさわしい、バラエティに富んだワードローブを生み出したのだ。

春服が店頭に並ぶのは、まだ寒さが残る3月初めごろだ。その時期の実際の気温に合わせて、岩井は薄手のレザージャケット、セパレーツ、トロピカルウールならぬトロピカルカシミアスーツなどを展開した。このトロピカルカシミアも、自ら素材作りに携わる岩井のオリジナル生地だ。そして生地同様、カラーパレットも印象に残った。温かみのあるニュートラルカラーを引き立てる自然なグリーン、フレッシュなイエロー、混じり気のない赤に甘めのブルー。色や生地、プロポーションを含め、岩井の服には清楚な静けさがあり、そのありのままの魅力が人々を惹きつける。

ところで、ここ最近ビーチサンダルを取り入れたメンズコーデが話題となっている。つい先週、俳優のジョナサン・ベイリーはロンドンで行われた『ジュラシック・ワールド/復活の大地』のプレミアイベントに、ビーチサンダルを履いて出席した。フットウェア含め全身ザ・ロウTHE ROW)だったとはいえ、そのルックはネットで賛否両論を呼んだ。岩井も今回は、ほぼすべてのルックに今話題のビーチサンダルを合わせていた。プラダPRADA)やルイ・ヴィトンLOUIS VUITTON)のメンズショーにも登場し、何かとトレンドになっているこのシューズだが、岩井はこのようなカジュアルで身近なアイテムを、手に届く憧れのアイテムとして見せるのを得意とする。少し背伸びすれば着こなせるワンランク上のワードローブを、オーラリーは今季も打ち出したのだった。

※オーラリー 2026年春夏メンズコレクションをすべて見る。

Text: José Criales-Unzueta Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.COM

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