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25年前、日本中がチュッチュした“謎のママブーム” 朝からテンションマックスな伝説キャラ

  • 2025.7.31

「おっはー!」

25年前、日本列島に突如響きわたったこの掛け声を覚えているだろうか。

2000年、ミレニアムに浮かれつつも、インターネットや携帯電話の進化が徐々に生活に入り込みはじめた時代。

「個性」や「キャラ」が急速に消費されていくテレビの世界で、ひときわ異彩を放つ存在が現れた。

その名は――慎吾ママ。

バラエティ番組の一コーナーから誕生し、瞬く間に子どもたちのアイコンとなった謎のキャラクターが、まさかの音楽界を席巻する。

そのきっかけとなった楽曲が、2000年8月18日にリリースされた『慎吾ママのおはロック』(作詞・作曲:小西康陽)だった。

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2021年 東京都「こどもスマイルムーブメント」イベントに出席した香取慎吾 (C)SANKEI

“ネタ枠”が本気を出した朝の挨拶ソング

『慎吾ママのおはロック』は、香取慎吾がバラエティ番組『サタ☆スマ』(フジテレビ系)内で扮したキャラクター“慎吾ママ”として歌い踊るキャラクターソング。

一見ふざけた企画に見えながらも、音楽的にはとにかく本気。

それもそのはず、プロデュースしたのはピチカート・ファイヴの小西康陽。彼によるソリッドでクセになるポップスに、慎吾ママの“怒涛のテンション”が乗っかることで、大人も子どもも巻き込む異常な吸引力を発揮した。

曲調は軽快で、どこかおしゃれ。でもやっていることは「朝から全力で挨拶を叫ぶママ」――という不思議すぎる構図。

明るいけどどこか狂気じみたテンションと、正体不明な愛らしさが、当時のテレビっ子たちに突き刺さった。

社会現象にまで発展した“おっはー旋風”

この曲は慎吾ママとしてのデビューシングル。にもかかわらず、最終的にミリオンセールスを記録し、音楽番組やイベントでは人気爆発。

そして、楽曲のフックとなっていたのが、あいさつの言葉「おっはー」。

実はこれ、テレビ東京系『おはスタ』でMCの山寺宏一が使っていた「おーはー」を香取慎吾がアレンジしたもの。テレビ文化の中で生まれた“派生表現”だったそれが、慎吾ママの圧倒的な人気と相まって家庭でも学校でも職場でも「おっはー」が飛び交うという前代未聞の広がりを見せたのだ。

その結果――2000年の新語・流行語大賞では「おっはー」が年間大賞を受賞。

慎吾ママは、ただのお茶の間キャラに留まらず、社会現象そのものになってしまった。

“マヨチュッチュ”が象徴する、香取慎吾のキャラ作り

慎吾ママの強烈な存在感を語るうえで外せないのが、「マヨチュッチュ」というワードだ。

これは、マヨネーズをチューブのまま吸うという慎吾ママ独自の嗜好を表す言葉。実はこれ、香取慎吾本人が“筋金入りのマヨラー”であることに由来しており、本人の好物がキャラ設定に反映されている。

子ども番組のキャラクターにしては妙にリアルで、“あのママ、本気でマヨネーズ好きなんだな…”という謎の説得力を持っていた。

好きなものは好きでいい。ふざけてても、そこに自分がいればそれでいい。

そんな“マヨチュッチュ精神”が、慎吾ママの根っこには流れていたのかもしれない。

なぜ“慎吾ママ”はこんなにもウケたのか

慎吾ママの魅力には、単なる奇抜さやインパクトだけではない、時代を超える“本質”があった。

ひとつは、「大人が子どもに本気で寄り添っている」こと。

ママという設定は、保護者のようでいて、テレビの中の友達でもある存在。あいさつを大切にして、怒らず、ふざけながらもまっすぐに子どもたちを受け止めてくれる“理想の隣人”のような安心感があった。

もうひとつは、香取慎吾が作り上げたキャラクターの存在感。慎吾ママは、あくまで“笑われる存在”ではなく、“愛される存在”として登場したのが大きな違いだった。

演じている香取慎吾自身が、ふざけてはいるけれどもどこか真剣で、嫌味や揶揄のようなニュアンスが一切ない。性別の枠にとらわれず、“楽しい”“優しい”“元気”というエネルギーだけが伝わるキャラクターだったからこそ、家族全員が安心して受け入れることができた。

“ふざけてるけど、刺さる”音楽が心を動かした

『慎吾ママのおはロック』は、テレビの企画として生まれながら、企画の域を軽々と越えて“文化”となった楽曲だった。

慎吾ママの姿には、疲れた社会に“おっはー!”と大声で挨拶する強さがあり、変な格好で踊って、マヨネーズを吸って、それでもまっすぐにこちらに向き合ってくる不思議な包容力があった。

ふざけてるのに、泣けるくらい元気をもらえる。

そんな慎吾ママの存在は、あの時代に確かに必要とされていたエンタメのかたちだったのだろう。

そして『慎吾ママのおはロック』は、その象徴として、今も記憶の中でリフレインしている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。