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25年前、日本中の耳に馴染んだ“超ちょうどいい夏ソング” 新世紀の空気を切り取った“80万枚超ヒット曲”

  • 2025.7.30

2000年、“ミレニアム”という言葉が、やたらと人を浮かれさせていた。

新世紀が始まる。21世紀がやってくる――ただそれだけで、街はどこか祝祭ムード。Y2K(2000年問題)のニュースが飛び交いながらも、人々の目は希望に向いていた。

「なんかすごい時代が来るっぽい」というふわっとした期待感。

どこか頼りないけど、それでも確かに華やいでいた“2000年の空気”を、そっと音楽で切り取ったような楽曲がある。それが、KinKi Kids(現・DOMOTO)の『夏の王様』だった。

“肩の力を抜いたKinKi”が超ちょうどいい

KinKi Kids『夏の王様』(作詞:康珍化・作曲:羽田一郎)は、2000年6月21日に発売された10枚目のシングル。

堂本剛主演のドラマ『Summer Snow』(TBS系)の主題歌としても放送され、多くの人の耳に届いた。

この曲の最大の魅力は、とにかく“ちょうどいい”。夏ソングにありがちな、燃えるような情熱でも、涙を誘うノスタルジーでもない。コミカルさを含みつつ、決してチャラつかない。カジュアルだけど、雑ではない。

そして何より、堂本剛と堂本光一、それぞれのキャラクターにぴたりと合っていた。

堂本剛のナチュラルな陽気さと、堂本光一の品のあるクールさ。その組み合わせが、この曲に“KinKi Kidsだけの夏のテンション”を与えていた。

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※Google Geminiにて作成(イメージ)

サイバー空間で踊る“夏の王様たち”

この楽曲の印象をさらに特異なものにしていたのが、MVの世界観だった。

ビーチでも、浴衣でも、海でもない。近未来の宇宙船の一室のような、CG合成されたサイバー空間で、KinKiの2人が軽やかに踊る――その奇抜さとギャップに、当時の視聴者は驚きつつも「なんか、わかる」と頷いた。

2000年当時、音楽番組もCMも“デジタル未来”をやたらに表現したがっていた。『夏の王様』のMVもその文脈にのった、まさにミレニアム的ビジュアル作品だった。

彼らの“安定したキャラと歌唱”があったからこそ、この突飛な映像演出すら自然に感じられた。未来感と昭和的なゆるさが、なぜか両立してしまう。それがこのMVの面白さだった。

船山基紀のアレンジが作った“完成されたゆるさ”

そして忘れてはならないのが、この“ちょうどよさ”を音で支えていた、船山基紀のアレンジ力だ。

イントロからサビまで、すべてが耳馴染みよく設計されているが、その裏には緻密な音の設計図がある。ブラスやストリングスを重ねつつも、決してうるさくならない。

ポップソングとしての勢いと、KinKiの持つ柔らかい声質とが気持ちよく混ざるよう調整されている。明るくて軽くて、それでいて聴き飽きない。

“ふざけてるように見えて、実はめちゃくちゃ計算されている”――それが、プロの仕事だった。

“夏のど真ん中”より“夏の入口”が似合う

『夏の王様』は、子どもから大人まで口ずさめる親しみやすさがあった。

「難しいことは考えず、ちょっと踊ってみたくなる」――そんな単純で純粋な衝動を、2000年のKinKi Kidsはちゃんと届けていた。結果的に、CDは80万枚を超えるヒットを記録。

テレビ番組でこの曲がかかれば、スタジオの空気がパッと明るくなる。「あ、あの夏がまた来たな」と、世代を超えて思わせる力が、この一曲にはあった。

気づけば、今も鳴っている

軽やかで、遊び心があって、ちょっと照れくさい。それなのに、イントロを聴いた瞬間、なぜか胸がキュッとする。

そういう曲こそが、時代を超えて残っていく。

25年が経った今でも、ふとしたときにこの曲が流れると、

「2000年の夏って、こういう感じだったよな」と思い出せる。

それは、KinKi Kidsの存在感と、名アレンジャー・船山基紀の職人芸が作り上げた、まぎれもない記憶のサウンドトラックなのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。