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30年前、日本中の脳が揺れた“毒のように美しいビート” 売上90万枚近く“名ギタリスト最大のヒット曲”

  • 2025.7.26

「30年前の今頃、どんな音に体が反応してた?」

1995年。阪神・淡路大震災が日本を襲い、街の空気には言葉にできない緊張感が漂っていた。テレビでは華やかなJ-POPがヒットチャートを彩り、小室サウンドやビジュアル系が隆盛を極める。そんな時代に鳴り響き、日本中の脳を揺らしたギタースターの1曲がある。

布袋寅泰『POISON』(作詞:森雪之丞・作曲:布袋寅泰)――1995年1月25日リリース。

イントロから繰り返される「Love! Love! Love! Love is a Poison!」のフレーズ、緻密に刻まれるビート、劇的に展開するメロディライン――この曲は完全に“攻めていた”。

結果、シングル売上は90万枚近くに到達し、布袋のソロキャリアで最大のヒットシングルとなった。

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(C)SANKEI

“踊れる衝動”と“鋭利な感情”が同居したサウンド

イントロのシャウト気味の反復、切れ味鋭いリフ、突き抜けるようなボーカル。サビではチューブラーベルが高らかに鳴り響き、どこまでもドラマティックな展開が広がる。

それでいて、ギターを中心にすべてのサウンドが完璧に制御されていて、構成は異常なほど緻密。これはただのロックでも、ただのダンスミュージックでもない。

布袋寅泰のセンスがすべて詰まった、“劇場型ダンスロック”の完成形だ。

シリーズ終焉を飾った“最後の一撃”

『POISON』は、1988年から続いた『GUITARHYTHM』シリーズの最後のシングル。このプロジェクトは布袋がソロとして追求してきたサウンド実験場だったが、その集大成としてリリースされたのがこの一曲だ。

ベスト盤『GUITARHYTHM FOREVER Vol.1』には収録されているが、「GUITARHYTHM」シリーズのオリジナルアルバムには未収録。つまり、これはシリーズの“正式な終章”として位置づけられた楽曲でもある。

あらゆる実験の成果を、ポップスとして最も完成度の高い形でアウトプットした結果が『POISON』だった。

森雪之丞の言葉が、音に深度を与えた

この曲にひとつの「重み」を与えているのが、作詞家・森雪之丞による歌詞だ。

意味を過剰に明かさず、それでいて聴く者の想像を刺激する――その言葉選びの妙が、布袋の作り出す鋭利なサウンドに奥行きをもたらしている。

言葉は説明ではなく、余白を残す断片。すべてを語らないからこそ、聴き手の中に像が浮かび上がってくる。

何かが壊れそうな気配と、どこか抗えない魅力。その両方をはらんだ言葉が、音の上でゆっくりと揺れている。

歌詞を“読む”のではなく“感じる”。布袋が音でビートを刻み、森雪之丞が言葉でビートを刻む。2つのビートが混ざり合う様は、まさに毒=POISONのようだ

今なお、踊れる。そして刺さる。

30年が経った今でも、『POISON』はまったく古びていない。むしろ今の方が、よりリアルに響いてくる。

メロディもビートも派手なのに、言葉の奥にあるのは静かな覚悟。

そのアンバランスさがたまらなく魅力的だ。

踊れる。刺さる。美しい。

あの頃、この曲に中毒になった人たちの多くが、今も心のどこかで“Love is a Poison”と呟いている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。