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35年前、日本中の心をかき乱した“キスの嵐” トレンディドラマを切り拓いた“月9神話の起点の1つ”

  • 2025.7.26

「1990年の冬、どんなドラマに心をかき乱されていたか覚えてる?」

昭和から平成へ。バブル経済の絶頂期、街も人もどこか浮き足立ち、テレビからは恋愛と自由がにじみ出ていた時代。そんな空気の中で、ひとつのドラマが“月曜9時”を恋愛ドラマの代名詞へと押し上げ、“トレンディドラマ”という新ジャンル開拓に貢献した

1990年1月8日、フジテレビの「月9」枠でスタートした『世界で一番君が好き! You are my favorite in the world』は、都会の雑踏の中でケンカしながら惹かれ合う男女の恋模様を、テンポと勢いと感情でぶん回した“ラブコメの革命作”だった。

好きになるはずのない…だけど惹かれ合っていく

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(C)SANKEI

 

物語は、浅野温子が演じる恋人に振られたOL・向井華が、三上博史が演じる山村公次と大ゲンカするところから始まる。そこから二人はたびたびケンカを繰り返す――なのに、なぜか惹かれ合ってしまう。

そんな“好きになるはずのない相手”と不器用に惹かれ合っていく過程を、コミカルに、シリアスに、テンポよく描いていく構成は、まさにラブコメ全開。恋が始まる瞬間のリアルさと破天荒さ。それをここまでぶつけてきた作品だからこそ、観ていて心地よかった。

浅野温子の“爆走演技”とファッションが、時代を塗り替えた

このドラマの原動力は、何より浅野温子の演技だ。感情を爆発させるセリフまわし、勢いで押し切る掛け合い、涙と笑いのギリギリのテンション。そして、デザイン性が強すぎるバブルファッションを軽やかに着こなす存在感

それまでの“控えめな恋愛ヒロイン像”を完全に打ち壊し、「女性が主導権を握る恋愛ドラマ」という新たな潮流を生み出した

相手役の三上博史も、理屈っぽさと情熱を併せ持つキャラクターで絶妙にバランスを取り、「ケンカするほど惹かれ合う」関係性を本気で成立させた。この2人の衝突と高揚感が、作品のエンジンだった。

布施博、工藤静香、風間トオル、益岡徹、石野真子、財前直見など脇を固めるメンバーも豪華だった。

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(C)SANKEI

オープニングの“連続キス”が日本のテレビを変えた

本作を語るうえで避けて通れないのが、伝説的オープニング映像

浅野温子と三上博史が、あらゆるシチュエーションでキスを交わすという“攻めすぎたキスの連打”が、当時の視聴者の度肝を抜いた。

とくに印象的だったのが、渋谷スクランブル交差点の真ん中で、お互いに運転する車の窓から身を乗り出し、群衆の中で交わす濃厚なキス

「これ、ゴールデンでやるの!?」という衝撃は、間違いなく時代を前後させた。

テレビの中で、恋愛が“事件”として描かれた瞬間だった。

主題歌:LINDBERG『今すぐKiss Me』が、恋のテンションを倍加させた

ドラマのテンポと感情をさらに加速させたのが、主題歌であるLINDBERG『今すぐKiss Me』(作詞:朝野深雪・作曲:平川達也)

イントロのギターが鳴り始めた瞬間から、恋のスイッチが入るような衝動。渡瀬マキの突き抜けたハイトーンボイスが、“勢い任せでも、キスしたくなる感情”をストレートに代弁していた。

ドラマと共鳴するこの一曲は、LINDBERG最大のヒット曲となり、“月9=主題歌も話題になる”という方程式に見事にハマった

トレンディドラマの“型”を生んだ、月9革命の先駆者

『世界で一番君が好き!』は、“トレンディドラマ”という言葉がまだ完全に定着していなかった時代に、都会・恋愛・ファッション・音楽・テンポ・キス――そのすべてを高密度で詰め込み、以降の“月9ドラマの型”を作った作品だ。

このあとに続く『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』『あすなろ白書』といった名作群は、この作品が示した“恋をドラマチックに見せる美学”をベースに生まれていると言っても過言ではない。

つまり、これはただの恋愛ドラマではない。月9神話の“起点”のひとつだ。

恋に勢いが必要だった時代。その爆風はいまでも胸に響く

令和の今、誰もが空気を読み、LINEの返信に悩み、恋愛にすら慎重すぎる時代。

だからこそ思う――あの頃のドラマは、なんであんなに真っ直ぐだったんだろう?

衝動、怒り、笑い、キス、喧嘩、衝突、そして恋。

全部むき出しだったからこそ、人の心を動かした。

『世界で一番君が好き!』は、35年経った今も、そう問いかけてくる。

「恋は理屈じゃない。感情だろ?」と。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。