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【実例】腐らないトマト⁉︎ 連作障害も、尻腐れ病も防ぐ、プロが実践する微生物の土のチカラ

  • 2025.6.21

「落ちたトマトが腐らずに乾いていく——」 ゲリラ豪雨で畑が冠水したにもかかわらず、そんな奇跡が起きたのは、菌類など微生物の“見えない力”が働いていたからでした。 東京都清瀬市の農家・横山園芸の横山直樹さんは、化学農薬を使わずに、トマトやエディブルフラワー、クリスマスローズを育てています。 試行錯誤と失敗を重ね、たどり着いたのは、1,500種以上の微生物が共存するバイオスティミュラント(植物活性剤)活用農法。連作障害、尻腐れ病など、病害トラブルを乗り越える土づくりのヒントを、実例とともに紹介します。

微生物と向き合う土づくりが、未来を変えた

「落下したトマトが腐らず、土の上でそのままドライトマトになっていったんですよ」。

一瞬耳を疑うような話ですが、昨年、東京都清瀬市で農家を営む横山直樹さんが体験した事実です。2024年6月、ゲリラ豪雨により押し寄せた水は足首の高さを越え、横山園芸のトマト畑は水没。収穫を間近に控えたトマト畑は全滅かと思われました。

地面に落ちたトマト
土に落下してもカビが生えず腐らないトマト(左)。観察を続けるとドライトマトになっていった(右)。写真/横山さん提供

「水が引いたあと、ガックリしながら畝を歩いていたら、あれ? と思ったんです。土に落ちたトマトの中に、腐っていかないものがあったんです。普通なら高温多湿のこの時期、落果したトマトはすぐに腐り始めるはずです。でも、そこから数日経っても、一向にそのトマトは腐りませんでした」

その背景には、“目に見えない守り手たち”の存在がありました——微生物です。

 独学と失敗から始まった「菌の旅」

横山さんは世界的なクリスマスローズの育種者・生産者として知られますが、10年ほど前からエディブルフラワーを手がけ始めたことが菌に着目する大きなきっかけになったと話します。

「エディブルフラワーでは使える農薬がごく限られていて、病害虫が予想以上に発生し、2年間は出荷できるものが作れませんでした」。

横山園芸のエディブルフラワー
試行錯誤のうえに化学農薬に頼らず独自の方法で栽培・出荷しているエディブルフラワーは高い評価を得る。

そこで農薬に頼らずに健全なエディブルフラワーを栽培するために、自ら書籍や論文で菌を学び、さまざまな資材を試してきました。白絹病に効くとされる菌資材を投入した際には、特定の菌が増えすぎて土壌バランスが崩れ、思わぬ失敗も経験したといいます。

有用菌を利用したガーデニング
菌の席取り合戦。有用菌を先に住まわせることで悪玉菌を抑えられるが…。

「植物の周りにはたくさんの菌がいて、いい菌もいれば悪い菌もいます。彼らはいつも植物の周りで席取り合戦を繰り広げていて、先に席を取ったほうがそこで増えるんです。だから、有用菌を先に植物につけておくことで病気を防ぐことができるんですが、有用菌の中にもいろいろなキャラクターがいて、すぐに別の菌に席を譲ってしまったりする菌もいるから、そう単純じゃないんですよね」

有用菌を利用したガーデニング
すぐに席を他の菌に譲ってしまい、定着しない菌も。

ガーデニングなどでも善玉菌入りの資材を使っても「定着しない」「すぐいなくなる」というケースが多いのは、いわば“お人好しで優しい”菌たちのキャラクターによるものです。

こうした経験を経て、最終的に横山さんが辿り着いたのは「東京8(エイト)」と「ミラクルバイオ肥料FDS」の組み合わせです。これにより、横山園芸のエディブルフラワーは化学農薬不使用を実現し、名だたるシェフがその味や香りを絶賛。今や海外のレストランからも声がかかるほどです。

連作障害なし、病気知らず。植物の変化が土の答え

さて、落下したトマトが腐らずにドライトマトになっていったのはなぜでしょうか。

トマトが腐る過程では、腐敗菌が活動します。腐らなかったということは、この腐敗菌がほとんどいなかったか、活動していない状態にあったということを示しています。つまり、腐敗菌は「席取り合戦」に負けたということです。

地面に落ちて腐ったトマト
腐敗菌が繁殖し、カビが生えて腐ったトマト。通常は土に落下したものはこうなる。写真/横山さん提供

腐敗やカビなど病気に関連する悪玉菌の多くは、酸素の少ないジメジメとした水はけの悪い環境を好みます。水没したトマト畑は悪玉菌が優勢になる条件が整っていたにも関わらず、腐敗菌が活動しなかったのは、横山さんのトマト畑が限りなく善玉菌優勢であったからというのが、この奇跡的な現象を合理的に説明するのに相応しいでしょう。

バイオスティミュラント資材
横山さんが使っているバイオスティミュラント資材。

その圧倒的な善玉菌の活躍を導いたものこそ、今、世界中で注目されているバイオスティミュラント資材の「東京8(エイト)」と「ミラクルバイオ肥料FDS」。バイオスティミュラント資材とは、簡単にいうと「植物が自分の力で元気に育つよう、強力に後押しする存在」です。

肥料とバイオスティミュラント資材の違い

肥料とバイオスティミュラント資材の違い

肥料がチッ素、リン酸、カリなどの栄養を植物に直接与えるのに対し、バイオスティミュラント資材は微生物や有機酸などの力によって、植物の環境への適応力を上げたり、免疫の活性化など、植物自身の力を引き出すように作用します。

連作障害も防ぐ、微生物の多様性がカギ

バイオスティミュラント資材
「東京8」の希釈液を2週間に1回ほどの間隔で水やり時に。

有用微生物を含んだ資材は多くありますが、なかでも「東京8」に含まれる微生物は1,500以上。一般的な微生物資材は特定の有用菌を加えて構成されているのに対して、「東京8」は健全な土壌環境そのもの”を再構築するようなアプローチで作られているのが特徴です。

まるで自然の森の土壌のように多様な菌たちがいるため、すぐに席を譲ってしまうお人よしの菌がいたとしても、別の有用菌がすかさず席を埋め、病原菌を抑えて植物の生育環境を守ることができるのです。

東京8の散布比較
水没した畝の左側のみ「東京8」を100倍で灌注と1,000倍で葉面散布。右側は無処理。左側の畝の生育が圧倒的に良好。写真/横山さん提供

「腐らないトマトを見て、水没した苗ももしかしたら復活するかもしれないと思って、2つの資材で手当てをしたら、見事復活。その年もたくさんの実が収穫できました。びっくりすると同時に、菌も多様性こそが大事なんだという確信に変わりました」

土壌における微生物の役割は、単一の菌で完結するものではなく、複数の菌が協力・拮抗しながらバランスを保つことで効果を発揮します。多様な菌がいることで、環境変化に対しての対応力が高くなり、さらに役割分担することで効率的に植物に働きかけることも可能に。

カルシウム不足を回避し、トマトの尻腐れ病を防ぐ

トマトにありがちな「尻腐れ病」が出なくなったのも、多様な菌の働きを活用したバイオスティミュラント農業に変えたことが大きく影響しています。

つまり、菌の多様性は、「土壌が自ら回復し、トラブルに負けない力=レジリエンス」の源です。実際、横山園芸では同じ畑でトマトの連作を続けても障害が出ず、それだけ土壌がしっかりとした“免疫力”を持っていることがわかります。

トマトの尻腐れ病
トマトのおしり部分が黒くなる「尻腐れ病」。Mila Makhova/Shutterstock.com

トマト栽培の失敗でしばしば聞かれる「尻腐れ病」。これは病気ではなく、カルシウム不足により、果実のおしりの部分が黒く腐る生理障害です。これは単純に土にカルシウムが不足しているだけでなく、カルシウムが吸収されにくい環境ストレス(土壌中の窒素過多・高温)や根の機能低下が要因になっていることが多くあります。

横山園芸のイタリアントマト
スクスクと育つ横山園芸のイタリアントマト。

バイオスティミュラント資材は、根の成長と代謝を促進してくれるため、吸収トラブルを減らすことが期待できます。また、微生物の活動により土壌のカルシウムの可溶性が保たれ、吸収されやすい環境にも。こうした条件が整ったことにより、横山園芸ではトマトの尻腐れ病の発生もなくなりました。

家庭菜園でも「菌」の力に着目し、土壌を見直そう

トマト
トマトの収穫はもうすぐそこ。トラブル対策をして収穫を楽しもう! JLM Photos/Shutterstock.com

家庭菜園でトマトを栽培する際、梅雨時期は最も注意すべき時です。この時期のトマトに起こる主なトラブルは次の3つ。

  1. 裂果(実が割れる)/急激な吸水によって皮が追いつかず実が割れ、そこから病気が入りやすくなる。
  2. 病気の発生/湿った環境でカビ類の菌が繁殖しやすくなる。
  3. 根腐れ・生育不良/長雨により排水性が滞り、生育が停滞。

こうしたトラブルへの対策として、高畝にして風通しをよくし、市販の雨よけキットを使用するなどがありますが、横山園芸の実例のように、土壌の根本的な見直しも大きな効果を生みそうです。

ミラクルバイオ肥料FDS
ミラクルバイオ肥料FDSは、開花前の生育期に表土にひとつまみのせるだけ。葉色が生き生きし、病気にかかりにくくなり、開花期間も長くなる。

横山さんのようなプロの農家が導入するバイオスティミュラント資材は、今では家庭でも手に入る時代になりました。「東京8」や「ミラクルバイオ肥料FDS」はネットでの購入が可能で、使い方もいたってシンプル。大切なのは、一度だけではなく“土を育てる”意識で使い続けること。

バイオスティミュラント資材
クリスマスローズの生産にも「東京8」や「ミラクルバイオ肥料FDS」を使用。生育旺盛でプラスチック鉢を破って成長するクリスマスローズ。

もし今年、梅雨や猛暑で植物がうまく育たなかったとしたら、まずは“土の中の菌”に目を向けてみませんか?

菌が植物を育て、守る時代へ。
横山さんの実践は、プロの現場だけでなく、私たちの小さな庭にもヒントを与えてくれます。

Information

「東京8」や「ミラクルバイオ肥料FDS」は横山園芸の通販でも取り扱っています。

https://shop.yokoyama-nursery.jp

Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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