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「気持ち悪すぎて死にそう」「男はなんで…」“ゲスすぎる怪演”に苦言あがるも…“世界的快挙”を成し遂げた秀作映画

  • 2025.7.10

喜びや悲しみを分かち合い、時にはぶつかり合いながらも、かけがえのない絆で結ばれた家族の物語は、多くの人の心を惹きつけてやみません。今回は、そんな“家族愛”をテーマにした作品5選をセレクトしました。

本記事では第1弾として、2016年公開の映画『海よりもまだ深く』をご紹介します。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

“家族愛”をテーマにした作品・映画『海よりもまだ深く』

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(C)SANKEI

あらすじ

かつて文学賞を受賞した栄光を忘れられず、今は探偵業で細々と生計を立てる中年男性・篠田良多(阿部寛)。良多は現実から目を背け、いまだに夢を追い続ける“ダメ男”です。元妻の白石響子(真木よう子)には愛想を尽かされ、離れて暮らす小学生の息子・真悟(吉澤太陽)との月一度の面会だけが、良多の人生の大きな喜びとなっていました。

ある日、良多は団地で一人暮らしをしている母・淑子(樹木希林)の家を訪れます。すると偶然にも台風が接近し、帰宅困難となった響子と真悟も合流。こうして、元家族は予期せず一夜を共に過ごすことになります。ぎこちないながらも、どこか懐かしい時間のなかで、元家族が静かに向き合っていくのでした―。

映画『海よりもまだ深く』の見どころ ※ネタバレあり

映画『海よりもまだ深く』では、阿部寛さん演じる篠田良多のクズっぷりが際立っているのが印象的です。

SNSでは「クズな阿部寛を笑えない」「気持ち悪すぎて死にそう」という声や、作中のセリフとかけて「男はなんで今を愛せないかね」と苦言を呈す人も。一方で、「こりゃ離婚するわなと納得のクズっぷり」「阿部寛のダメ男だけど憎めない感がすごく良かった」といった阿部さんの演技力を絶賛する声とともに「好き過ぎて年1で観返してます」「是枝さん最高傑作だと思う」など絶賛の声が非常に多く見受けられました。阿部寛さんの名演が、良多の持つ情けなさや身勝手さを増幅させながらも、それでもなぜだか憎めない人間臭さを見事に表現されています。

また、本作の大きな見どころがヒットメーカー・是枝裕和さんによる胸に刺さるセリフの数々。特に、樹木希林さん演じる母・淑子の言葉の一つひとつが、温かく心に染み渡ります。

幸せっていうのはね、何かを諦めないと手にできないもんなのよ出典:映画『海よりもまだ深く』作中より
花も実もつかないんだけどね、なんかの役には立ってんのよ出典:映画『海よりもまだ深く』作中より

ご紹介したもの以外にも、珠玉の名セリフが連発。「切なすぎて涙が溢れた」「とにかくセリフがどれもこれも心に刺さる」「樹木希林の台詞が最高な傑作」など、多くの視聴者の心を揺さぶりました。

カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に正式出品!是枝監督が明かすタイトルの意図は?

映画『海よりもまだ深く』は、その独自の視点や作風が評価され、第69回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品される快挙を遂げました。そんな本作のタイトルである「海よりもまだ深く」という言葉は、テレサ・テンさんの曲『別れの予感』のワンフレーズでもあります。このタイトルにした意図について、産経新聞による取材の中で監督・脚本を務めた是枝裕和さんは次のように語っています。

この曲は代表作かと言われればそうでもないが、コアなファンが好きな曲だと思った。それでこの曲の歌詞からタイトルをつけようと。題名ありきでそこに向かっていく話にしようと決めたんです出典:産経新聞『テレサ・テンの「別れの予感」に涙腺緩む 是枝監督の新作「海よりもまだ深く」』(2016年5月19日配信)

なじみ深さや懐かしさを感じさせ、憧れや理想を心地よく唄った歌謡曲から付けられたタイトルの通り、「いつか」夢見たことと「今」の現実をテーマにした本作にぴったりのタイトルと言えるでしょう。

まだ映画『海よりもまだ深く』を観たことがない方、また本記事を読んで興味を持っていただけた方は、“なりたかった大人”になれなかった、すべての人へ贈る物語をぜひ目撃してみてください!


ライター:天木拓海
映画・アニメ・ドラマなど、エンタメ作品を観ることを趣味としているライター。エンタメ関連のテーマを中心に、作品考察記事/コラム記事などを手掛ける。

※記事は執筆時点の情報です