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エンディングが流れ始めると座席から“すすり泣く声”も… 劇場版でしか味わえない『呪術廻戦』の仕掛け

  • 2025.6.20

5月30日より劇場公開された『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』で、「このために観に行く価値あり」と呼ばれるほど話題となったのが、本編終了後に流れる“エンディング”だ。新規描き下ろしカットを使用したエンディング映像と、原曲とはまったく違うアレンジが加わった『青のすみか(Acoustic ver.)』が、多くのファンの心を揺さぶったのだ。本稿では、劇場版総集編でしか観られないエンディングの魅力に迫りたい。

※以下本文にはネタバレの内容が含まれます。

エンディングで描かれた五条たちの“あの頃の笑顔”に涙

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(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』は、TVシリーズとして放送された五条悟(ごじょうさとる)と夏油傑(げとうすぐる)の過去編『懐玉・玉折』を、劇場版に再構築したもの。演出や構成の違いはあれど、物語の内容は同じだ。公開日に劇場に足を運んだ筆者は、五条と夏油の胸をしめつけられるような関係や、五条と伏黒甚爾(ふしぐろとうじ)の圧巻のバトルシーンをスクリーンで観られることにうれしさを感じながら、本作を噛みしめていた。

エンディングが流れ始めると、後ろの座席からすすり泣く声が聞こえてきた。「『懐玉・玉折』をまたじっくり味わいたい」という姿勢で本作を観に来た観客がきっと多かったと思う。だからこそ、不意を突かれた。エンディングでは、TVシリーズではなかった新規描き下ろしカットを存分に使い、五条や夏油たちの“青い春”をスライドショーのようにさかのぼる映像が流れたのだ。

五条たちが楽しそうに笑ったり、ふざけたりしている日常の場面の一つひとつが、観客である私たちの心に切なく突き刺さる。本編で五条と夏油の別れを観た後ということもあり、“戻れない”という喪失感が強調され、より切ない気持ちになった。エンディングで五条たちの姿をとらえていたのが形として残り続ける写真という点も、親友でありながら進む道がまったく変わってしまった五条と夏油の関係と対比になっており、“変化しないもの”と“変化してしまったもの”を際立たせている。

このエンディングはSNSでも話題を呼び、劇場版総集編の大きな見どころとなっている。また、エンディングで映し出された計54点のイラストを使用した“プリントシール風ステッカー”が第2弾、第3弾の入場特典として配布され、劇場に何度も足を運ぶファンが続出した。エモーショナルなエンディングによって、『懐玉・玉折』に新たな魅力が吹き込まれたのだ。

アレンジされた『青のすみか(Acoustic ver.)』が放つ静かな“余韻”

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(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

もうひとつエンディングで涙を誘ったのが、映像とともに流れるキタニタツヤによる主題歌『青のすみか(Acoustic ver.)』だ。TVシリーズでもオープニングテーマとして使用されていた『青のすみか』だが、アコースティック版としてアレンジされて生まれ変わったのだ。

『青のすみか』の原曲は、疾走感あふれる激しい曲調で、青春の爽やかさや駆け抜けるように過ぎる時間の儚さを連想させた。しかし、アコースティック版は、ピアノやバイオリンが奏でる音色に“切なさ”が漂っている。キタニの繊細な歌声も叙情的で、心に沁みる。爽やかさよりも切なさを前面に出すことで、より胸がぎゅっとなるようなアレンジになっているのだ。

音楽は、記憶を呼び起こす効果があるように思う。あなたも、よく聴いていた頃の楽しい記憶や、つらくしんどい記憶を思い出す“あの楽曲”があるのではないだろうか。思い出と深く結びついているのは、昔語り合った友人の“声”も同じ。『青のすみか(Acoustic ver.)』は、歌詞の節々から感じる五条と夏油の関係のやるせなさに心を打たれるとともに、まるでかつての友人の声のように青春を象徴し、表現しているのだ。

もし、『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』をただの総集編だと思って観に行っていないのなら、もったいない。111分に再構築された本編と、本編の後に観られるエンディングは、劇場版総集編でしか味わえないからだ。五条と夏油の過去を締めくくるエンディングの深い“余韻”を、あなたも感じてみてはいかがだろうか。


呪術廻戦
ABEMAにて第1話を無料放送中
[番組URL]https://abema.tv/video/title/536-1
【(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会】

ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari