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砂漠のような強い紫外線で野生株の姿を再現。LED栽培の愉しみかた 〜乾燥地植物編〜

  • 2025.5.9
アナカンプセロス クイナリアとテフロカクタス アレクサンデリ(ゲオメトリクス)
BRUTUS

砂漠の強烈な紫外線にさらされて育つ乾燥地植物。その魅力は野性味や寂びた風情だろう。

「以前は、例えばナミビアや南アフリカに自生するサルコカウロンの珍奇な風貌を、日本の環境で再現するのは難しかった。それが太陽光より強いLEDを使うことで、室内でも自生地に近い姿に育てられるようになったんです」

そう話すのは園芸家のShabomaniac!さん。植物を種子から野生株のように育てて、自生地の風景を再現する“ハビタットスタイル”を提唱し、LED栽培を取り入れている。自室の棚に並ぶのは、野生株さながらのサボテンや多肉植物。色もフォルムも種子から育てたとは思えないほどだ。

それらを真上から照射するようにLED照明数台と冷却ファンを取り付け、室温は夏も冬も20~28℃程度をキープ。照射時間は8時半から20時半までに自動設定し、一日の半分は夜の環境を作っている。

LED

アナカンプセロス クイナリア Anacampseros quinaria ssp. alstonii 自生地はアフリカ南部のナミビア。一時期アボニア属とされていたが、最近アナカンプセロス属に戻った。LED栽培で種から育てて4年目。塊根(かいこん)の上に芝生を刈り込んだような茎葉(けいよう)が密生した姿は、野生株に近い。

自然光

アナカンプセロス クイナリア Anacampseros quinaria ssp. alstonii LEDで育てた後、自然光栽培に変えた鉢。葉が伸びて姿も激変!土は赤玉、軽石、ペレット養土の混合。

「一般的な栽培と大きく異なるのは灌水。強い光で土がすぐ乾くので、定期的に水をたっぷりやるか、植物によっては腰水で栽培します」

給水と乾燥を頻繁に繰り返すことで、自然光下ではあり得ないほどのスピードで生長することも。

「植物ブームに伴う野生植物の乱獲に歯止めをかけるためにも、植物を種子から育て、野生株に負けない魅力的な植物を育てる人が増えたらと思います。その意味でもLEDの力は大きいですね」

サルコカウロン ペニクリナム
サルコカウロン ペニクリナム Sarcocaulon peniculinum ナミビア南部に生息する稀少種。近年はモンソニア属とされていたが、最近サルコカウロン属に戻っている。長く困難とされてきた実生(みしょう)も、LED強光栽培によって可能になった。自生地では根先の土には常に湿り気があると推測し、室内では腰水で育成している。
エリオシケ エスメラルダナ
エリオシケ エスメラルダナ Eriosyce esmeraldana チリ・アタカマ砂漠に自生する小型サボテン。大きな塊根が乾燥する時に縮む力で、本体を地中に引っ張り込む。野生株は地面すれすれに育ち、砂を被っている。写真の褐色の部分がサボテン。深鉢に植え込んで強いLEDの光を当てることで自生地の景色を再現した。
チレコドン ノルテイ
チレコドン ノルテイ Tylecodon nolteei 南アフリカの西ケープ州ヌーヴェラス近郊でのみ自生する超小型の稀少種。成熟した株は直径3~5㎝だ。特徴はいびつな塊茎(こんけい)から展開する葉と、その表面に生える微毛。LED下では自生地と同じくコンパクトに育つが、通常の栽培下では葉が徒長する傾向にある。
コノフィツム マウガニー
コノフィツム マウガニー Conophytum maughanii 南アフリカ北西部に自生するメセンの仲間。LEDと相性が良い秋春生育型の多肉植物だ。ぷにっとした触感で本来はグリーンだが、寒さが増す秋以降に赤くみずみずしく色づく。LEDの強光線の下では、より強く発色するようだ。乾きやすいので灌水もより多め。
テフロカクタス アレクサンデリ(ゲオメトリクス)
テフロカクタス アレクサンデリ(ゲオメトリクス) Tephrocactus alexanderi 'Geometricus' アルゼンチン原産。野生株は激しい日射と乾燥で赤紫に焼け、茎節は踏みつぶされたボールのようになる。その姿は日本の環境では再現不可能とまでいわれていたが、この株はLEDを駆使した実生株。逆に強光線を浴びないと野菜のような緑色になってしまう。

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Shabomaniac!の植物たち
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Shabomaniac!(園芸家、ブロガー)

しゃぼまにあっく!/幼少時より40年以上にわたりサボテン・多肉植物を栽培。栽培困難種の実生に関する第一人者。ブログには実体験に基づく栽培法も。共著に『珍奇植物 ハビタットスタイル』(日本文芸社)ほか。今秋〈SHARE GREEN MINAMI AOYAMA〉でイベントを予定。

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