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医師「特に注意すべき」→気づかぬうちに感染してるかも…梅雨に増える“2つの感染症”と“その危険性”とは?【医師の監修】

  • 2025.5.22
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

もうすぐやってくる梅雨シーズン。ジメジメとした気候で洗濯物が乾きにくく、気分もどんよりとする時期ですが、実はそれだけでは終わりません。意外にも、湿気が高い環境では、一部の感染症リスクが高まることがわかっています。

今回は、湿気が増えることで感染症リスクが高まる理由と、これから迎える梅雨シーズンに備えた効果的な予防法についてご紹介します。

感染症とはどんなもの?

感染症とは、細菌やウイルス、寄生虫などの病原体が体内に侵入し、感染を引き起こす病気のことです。

この時、病原体は単に身体の中にいるだけでなく、増殖しながら私たちの体に様々な悪影響を及ぼします。インフルエンザや風邪といった日常的に聞く病気も感染症の一部です。これらの病原体は主に人から人へ、動物から人へ、さらには環境(水や土壌など)を介して感染が広がります。

感染症はその感染源によりいくつかの種類に分類されます。例えば、ウイルスによるものには風邪、インフルエンザ、エイズ(HIV)、細菌によるものには結核や百日咳があります。それぞれの感染症には異なる予防法や治療法があることから、感染症の種類を知ることは非常に重要です。また、これらの病気が流行する理由は、その感染力や地域の衛生状態、気候変動など、多くの要因が組み合わさって影響を与えているからなのです。

感染症と湿度の意外な関係

湿気と感染症の関係について、実は湿度が高い環境は細菌やカビが繁殖しやすくなる土台となり、一部のウイルスも感染が拡大しやすくなる条件が整います。湿度が60%以上になると、カビや細菌は活発に増殖し始めるのです。

ノロウイルスなど一部のウイルスは、高温多湿の環境下で集団感染が起こりやすくなります。一方、インフルエンザウイルスは乾燥を好むため、冬場に流行しやすいのが特徴。

高温多湿の梅雨や夏にかけて発生する台風の時期は、湿度の上昇によりカビやダニが繁殖しやすくなり、アレルギー性疾患や真菌感染症、さらには食中毒のリスクも高まります。

湿度が高いと広まりやすい感染症とは

湿度が高いと広まりやすい感染症の一部をご紹介します。

1.真菌感染症

真菌感染症とは、いわゆる「カビ」が原因で引き起こされる感染症のことを指します。多くの人がイメージしやすい例としては、水虫やカンジダ症が挙げられます。真菌(カビの仲間)が皮膚や粘膜、爪などに感染することで生じる病気です。高温多湿な環境では皮膚のバリア機能が低下し、感染が起こりやすくなります。真菌は、自然界のいたるところに存在し、湿気を好むため、人が多く集まる場所や湿気の多い季節が特に注意すべき時期とされています。

この真菌感染症は、かゆみ、赤み、ひび割れ、さらには爪の変色など、さまざまな症状を引き起こします。中でも水虫はその代表例で、特に爪水虫(爪白癬)は治療に時間がかかることが多く、感染を放置すると周囲の皮膚や他人にも感染が広がるリスクがあるため、早期の受診と治療が大切です。

2.肺真菌症

肺真菌症とは、その名の通り「真菌」が原因で発生する肺の感染症です。真菌とは簡単に言うとカビの一種で、普段は土壌や植物、皮膚などにも存在しています。多くの人は健康な日常生活を送る中で知らず知らずのうちに真菌に接していますが、通常の免疫力があれば問題ありません。しかし、免疫力が低下している場合、この真菌が肺に感染しやすくなるのです。

具体的には、免疫不全状態や慢性の肺疾患を持つ方、または抗がん剤や免疫抑制剤を使用中の方が特にリスクが高くなります。この病気の症状は、咳や発熱、呼吸困難などで、他の肺の感染症と似たような形で現れることが多いです。専門的な診断が必要で、適切な治療が施されないと病状が悪化することもあります。

お風呂場やキッチン、エアコンのフィルター、そして多くの場合見過ごされがちなカーテンなど、家のあらゆるところに潜むカビが呼吸器系の健康に影響を与える他、多湿の環境は食材の傷みを早め、食中毒の原因となり得ます。

これらによって、細菌性食中毒(カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオ)や、湿気と関連する皮膚疾患としてとびひ(伝染性膿痂疹)などに感染する可能性があるのです。

梅雨に感染症を予防するには?

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

では、これから訪れる梅雨シーズンにどう対処すればいいのでしょうか。

まず、基本の手洗い、うがいは忘れずに行いましょう。それに加えて、室内の湿度管理は極めて重要です。室内の湿度は40~60%程度に保つのが適切といわれており、除湿機やエアコンを適切に利用しましょう。

また、食材の保存や調理も十分注意し、消毒と清掃をこまめに行うことが感染症予防につながります。キッチン周りや浴室など、高湿度になりやすい場所は特に意識的に管理してください。

適切な湿度で快適な梅雨を過ごそう

梅雨シーズンは多くの人が体調を崩しがちな時期です。しかし、湿気とそれに伴う感染症リスクをしっかり理解し、適切な対策を講じることで健康を維持することが可能です。自宅でできるちょっとした工夫が、あなたと家族の健康を守る盾となるはずです。

体調の変化を感じたら、医師や専門家への相談も忘れずに。特に発熱や咳、呼吸苦、皮膚の異常が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。


安江千尋/天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック 院長

防衛医科大学校医学科卒業後、防衛医科大学校病院、自衛隊横須賀病院・舞鶴病院で内科・消化器内科に従事。防衛医科大学校病院で専門研修を修了後、がん研有明病院・下部消化管内科副医長として大腸がんや炎症性腸疾患、内視鏡治療など高度専門医療に携わる。2024年12月に大阪・天王寺で開院。内視鏡専門医として、苦痛の少ない胃・大腸内視鏡検査を得意とし、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群など機能性疾患に対する生活指導や腸内環境の改善にも力を入れている。

【天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック 公式サイト】https://www.tennoji-naishikyo.com/