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「心が折れた」「疲れが取れない」→ただの『ストレス』じゃないかも…医師が教える『適応障害』の特徴とは?

  • 2025.5.29
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

毎日の生活の中で、心が疲れてしまうことは誰にでもあることです。でも、その疲れが長引いたり、心が折れてしまったと感じることが頻繁に起きるとしたら、それは「適応障害」かもしれません。適応障害は私たちの精神健康に関わる重要なテーマ。しかし、うつ病と似ているようで違うこれらの病気、その違いを知っておくことは大切です。

今回は、適応障害とうつ病の違い、その対策について解説します。

心のSOSを見逃さないで!適応障害とその特徴

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

適応障害という言葉、聞いたことがありますか?これはストレスの多い状況に適応するために、その人自身が通常の生活に支障をきたしてしまうような精神的なストレス反応のことを指します。誰しも多かれ少なかれストレスを抱えて生活していますが、適応障害はそのストレスに人間の心がうまく対処できなくなった状態です。

この障害は、学校や職場、家庭などでの重大な環境変化や人間関係の問題といったトリガーによって引き起こされることが多いです。これらの状況に対して、抑えきれない不安や憂鬱な気分が続くことになります。そして、その影響で仕事や学業、日常生活に悪影響が出ることも。適応障害は、その名の通り「適応」することが難しい状態にあり、この疾患はストレス源やその期間に大きく左右されます。ただし、必ずしも必ずしもストレス因の重大さが疾患自体の重篤さを予想するとは限りません。

うつ病とは何が違うの?その背景と具体例

同じように落ち込む状態になるうつ病とは、どこが違うのでしょうか?最大の違いは、その発症の背景です。適応障害は特定のストレス要因に対する過剰反応として現れるのに対し、うつ病は必ずしも明確な理由がないままに、長期間にわたって深い憂鬱感や無気力さを感じることがあります。例えば、転職や引っ越しなど環境の大きな変化に直面したとき、不安が募り適応障害になるケースがあります。

一方、うつ病は、長期間にわたって、普段の生活において「何もやる気が出ない」「常に悲しい」「疲れが取れない」といった状態が続きます。その原因はさまざまで、遺伝的要素や脳内の神経伝達物質のバランス、環境要因などが関係しているとされています。こちらもストレスが引き金となることも多いですが、理由がわからず気分が沈んでしまうということが多くみられます。

具体的な症状としては、絶え間ない悲しみや興味を持っていた活動への無関心、日常のちょっとしたことに過剰に反応してしまうなどが挙げられます。これらの症状が2週間以上続き、生活に支障をきたすようであれば、うつ病の可能性が高いとされています。

適応障害はそのストレス源が取り除かれると改善することがありますが、うつ病は異なるといわれているため、自分自身や周囲の人間が勝手に判断するのではなく、きちんと医師や専門家に相談をしましょう。

適応障害とうつ病への対策

心の健康を守るためにはどうすれば良いのでしょうか?まず、適応障害の場合はストレス源を特定し、できる限り取り除くことが大切です。しかし、生活の中ですべてのストレスを無くすことはほぼ不可能です。ストレスを上手に管理する方法を学ぶことで、改善される場合も。例えば、適度な運動、十分な睡眠、趣味の時間を持つなど、リラックスできる時間を確保することが重要です。また、心の訓練、特に認知行動療法なども適応障害の症状軽減に効果的です。これは、ネガティブな思考を変えることでストレスに対処する力を育てます。また医師との相談の上、補助的なものとして必要に応じて薬物療法を行う場合も。

また、うつ病の場合も、カウンセリングや認知行動療法が行われますが、適応障害とは対称的に薬物療法が一般的です。うつ病は治療に長い時間がかかる場合が多く、改善されてきたからと投薬を辞めてしまうと、元の状態に戻ってしまうこともあるため、必ずかかりつけ医と相談の上治療を進めましょう。

どちらも、自分でもできる対策として、規則正しい生活を心がける、ストレスをためないように趣味を持つ、信頼できる人に相談するなどが効果的な場合もあります。

心の健康を守るために

心の不調に気づいたときに一番大切なのは、ひとりで抱え込まないことです。家族や友人、専門家に自分の感情を話すことで、気持ちが軽くなったり、思わぬ解決策が見つかるかもしれません。また、心の健康を維持するためには、バランスの取れた食事や適度な運動、睡眠が欠かせません。

このように、うつ病と適応障害は似ているようで異なる点が多く、それぞれに合った対策や治療法が存在します。どんなときも、自分自身の心の声に耳を傾け、自分の心と身体を大切にしましょう。


監修者:松澤 美愛(神谷町カリスメンタルクリニック院長 / Instagram

東京都出身。慶應義塾大学病院初期研修後、同病院精神・神経科に入局。精神科専門病院での外来・入院や救急、総合病院での外来やリエゾンなどを担当。国立病院、クリニック、障害者施設、企業なども含め形態も地域も様々なところで幅広く研修を積む。2024年東京都港区虎ノ門に「神谷町カリスメンタルクリニック」を開業、院長。

精神保健指定医/日本精神神経学会/日本ポジティブサイコロジー医学会