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31年前、日本中の心を盗んだ“革命的ボーイッシュ美女” オリコン初登場1位も成した“異彩な多才”

  • 2025.5.22

「1990年代半ば、“誰もが一度は憧れた女の子”って、誰だったと思う?」

多くの人がその問いに名前を挙げるであろう存在ーーそれが、内田有紀。

1992年に女優デビューすると、その後1994年に主演ドラマ『時をかける少女』でブレイクを果たし、以降、“女優・歌手・モデル”とマルチな活動を展開。

ボーイッシュなショートカットに制服姿、屈託のない笑顔と透明感のある声。女優デビューを果たしたTVドラマ『その時、ハートは盗まれた』になぞらえて表現するなら、若者たちを中心にあの頃の日本中の心を一瞬で盗んでいったのだ。

「儚いのに強い」「かわいいのにかっこいい」ーー

その両義性が、時代の変化とリンクしていたのかもしれない。

“時をかける”新しいヒロイン像

1994年に放送された『時をかける少女』(フジテレビ系)は、内田有紀の存在を全国に知らしめた代表作。原作の持つ文学的な香りと、彼女の持つ素朴さ、そして現代的な空気感が見事に融合し、多くの視聴者に“新しいヒロイン像”を印象づけた。

それまでのドラマヒロインが持っていた“守られる存在”から、少しずつ“自分で選び、進んでいく存在”へと変化していった時代。その転換点にいたのが、内田有紀だった。

歌手としても大きな輝きを放った“異彩な多才”

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(C)SANKEI

俳優業と並行して音楽活動も行っていた彼女は、1994年にリリースしたデビューシングル『TENCAを取ろう! -内田の野望-』でいきなりオリコン週間シングルランキングで初登場1位を獲得。この記録は、当時の女性ソロアーティストとしては初となっており、異例の快挙だった。

軽快なポップサウンドに、彼女らしい無邪気で少し鼻にかかった歌声。それはアイドルソングというよりも、「時代が生み出した等身大の女の子のテーマソング」として多くの共感を集めた。

その後彼女は、数々のタイアップ曲やドラマ主題歌も担当し、音楽シーンでも存在感を放った。さまざまな面で才能を発揮した、“異彩な多才”と言えよう。

革命的な“ボーイッシュ”が時代のトレンドに

1990年代中盤、彼女の登場は“ボーイッシュ”というキーワードを大きく押し上げた。ショートカットにパンツスタイル、さっぱりとした性格にクールな表情。それまでの「ふんわりお嬢様」系とは一線を画すその革命的なスタイルは、ファッション誌や広告にも広く登場し、多くの女子中高生がこぞって真似をした。

それは同時に、当時の女の子たちが「もっと自由に、もっと自分らしく」生きていこうとする流れと重なっていた。

“あの頃の空気”を、今も静かにまとって

その後、一時的に芸能活動を休止し、女優として本格復帰した内田有紀。大人の女性としての落ち着きや深みを持ちながらも、ふとした瞬間に見せる“あの頃の空気”は、今も変わらない。

過去を引きずるのではなく、大切に抱えたまま前へ進むーー

そんな姿に、かつて彼女に憧れた世代は勇気づけられている。

時代を映した“静かな伝説”

1990年代のカルチャーを語るとき、内田有紀という名前は、決して欠かすことができない。

彼女が残したのは、圧倒的な記録や大ヒットではなく、“記憶”そのものだった。

そして今もなお、あの頃のドラマを観返すたび、あの声を聴くたびにーー

胸の奥にそっと、あの時代の風が吹く。


※この記事は執筆時点の情報です。