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医師「大規模な感染拡大を引き起こす」→これからの時期は『食中毒』の要注意 … なるべく控えるべき“NG食材”とは?【医師が解説】

  • 2025.5.29
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

梅雨の到来とともに、私たちが気をつけるべきことがあります。それは「食中毒」。誰もが一度は耳にしたことのあるこの言葉ですが、梅雨の時期に特に注意が必要なのをご存知ですか?しとしとと降り続く雨、湿気が多くなる環境が実は食中毒を引き起こすリスクを高めているんです。この記事では、その原因と対策方法をわかりやすくお伝えします。安全な食生活を送るために、この記事を読んでこの危機を未然に防ぎましょう。

梅雨時期に食中毒が増加する理由

梅雨の時期は気温と湿度が高くなり、それが食中毒のリスクを増大させる主な要因となっています。食中毒を引き起こす細菌やウイルスは、高温多湿の環境で繁殖しやすくなるのです。

代表的な食中毒について見てみましょう。最初にサルモネラ菌。これは、卵や鶏肉からの感染がほとんどで、加熱が足りなかったり、生食が原因となります。サルモネラ菌の潜伏期間は6〜72時間で、主な症状は発熱・腹痛・下痢です。嘔吐は比較的少ない症状ですが、食欲不振や軽い吐き気が出ることもあります。

次にカンピロバクター菌です。主にニワトリやウシなどの腸管内に生息しています。加熱していなかったり、加熱が不十分な食肉(特に鶏肉)やレバー(鶏、豚)等の臓器を食べることで感染する恐れがあります。発熱、倦怠感、頭痛、吐き気、腹痛、下痢などの症状が発生します。カンピロバクターはまれに、感染後数週間してから『ギラン・バレー症候群』という神経疾患を引き起こすことがあるため、注意が必要です。 

一方、ウイルス性食中毒を引き起こすノロウイルスは、少量のウイルスでも感染力が非常に強く、手指や食品などを介して感染し、吐き気、下痢、腹痛などを起こします。また、ノロウイルスに感染している貝を生の状態もしくは加熱が不十分な状態で食べることでも感染する恐れがあります。

健康な方は軽症で回復しますが、子どもやお年寄りなどでは重症化したり、吐ぶつを誤って気道に詰まらせて死亡することがあるので、注意が必要です。感染力の高さゆえ、大規模な感染拡大を引き起こすことも。

安全な食生活を!食中毒予防策を実践しよう

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

では、具体的にどのような対策をすれば食中毒を防げるでしょうか。まず、食品の取り扱い時には手をしっかり洗うことが基本です。特に生肉や魚を扱った後は、石鹸でよく手を洗う習慣をつけましょう。次に、食品の保存方法についても見直しが必要です。冷蔵庫内の温度を適切に保ち、食品をすぐに冷蔵庫にしまうように心がけてください。

温かい料理を冷ます時間も重要で、調理後は速やかに冷ましてから冷蔵するようにしましょう。また、作り置きのおかずや弁当はできるだけ短期間で消費するようにしてください。

また、お弁当なども特に注意が必要です。きゅうりやレタスなどの水分の多い生野菜は、冷蔵保存が難しい弁当では菌が繁殖しやすくなるため、特に梅雨〜夏場は避けるのが望ましいです。ポテトサラダなど、生野菜やマヨネーズが入っているおかずも要注意。夏場は痛みやすいので、なるべく控えてください。お弁当によく入っているプチトマトは、水気がついたままは危険。洗った後によく水気を拭き取ってから入れてください。

ノロウイルスは非常に感染力が高く、感染した人のふん便や嘔吐物などを触れたことにより感染したり、飛沫感染などの場合もあります。そのため、手洗いうがいを徹底する、十分に加熱処理をしたもの食べる、もしふん便や嘔吐物の処理をする場合はマスクや手袋は必須ですが、その後の消毒なども徹底しましょう。ノロウイルス対策には、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤を薄めたもの)での消毒が推奨されます。アルコールはノロウイルスに効果が乏しいため、専用の消毒薬を使いましょう。

梅雨でも安全に食事を楽しもう

梅雨時期の食中毒は、ちょっとした心がけでしっかりと予防することが可能です。適切な食品の取り扱いと保存方法を実践し、家庭内の調理器具の衛生にも気を配りましょう。大切なのは、「食中毒は他人事ではない」という意識を持つことです。せっかくの食事が台無しにならないよう、健康で安全な食生活を続けていくために、今回の知識をぜひ役立ててください。

梅雨でも美味しい食事を楽しんで、心も体も元気に乗り切りましょう! 


安江千尋/天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック 院長

防衛医科大学校医学科卒業後、防衛医科大学校病院、自衛隊横須賀病院・舞鶴病院で内科・消化器内科に従事。防衛医科大学校病院で専門研修を修了後、がん研有明病院・下部消化管内科副医長として大腸がんや炎症性腸疾患、内視鏡治療など高度専門医療に携わる。2024年12月に大阪・天王寺で開院。内視鏡専門医として、苦痛の少ない胃・大腸内視鏡検査を得意とし、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群など機能性疾患に対する生活指導や腸内環境の改善にも力を入れている。

【天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック 公式サイト】https://www.tennoji-naishikyo.com/