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【両国】すみだ北斎美術館「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」

  • 2025.4.16

世界の北斎をプロデュース、浮世絵の板元とは

すみだ北斎美術館で開催中の「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」[2025年3月18日(火)~5月25日(日)]を見て来ました。

江戸時代、書物の企画・出版は、現代の出版プロデューサーとも言える板元(はんもと)によって扱われていました。 板元は、版本や版画を出版・販売する店のことですが、出版社、取次、現代の書店、古本屋を兼ねた存在でした。

江戸の板元では、学問的な書物を扱う書物問屋(物の本屋)と娯楽的な「草双紙(くさぞうし)」と呼ばれる絵入り本や浮世絵版画などを扱う地本問屋(絵草双紙屋)とに区別されていたそうです。

江戸のショッピングガイド『江戸買物独案内(えどかいものひとりあんない)』(中川五郎左衛門 編)には板元の名前が掲載されています。 観覧した時は、左側のページに西村屋与八(にしむらやよはち)、鶴屋喜右衛門(つるやきえもん)の名前がありました。(会期中頁替あり)

※特別な許可を得て撮影しています。企画展示室内は撮影禁止です。

出典:リビング東京Web

「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」会場風景 すみだ北斎美術館

出典:リビング東京Web

中川五郎左衛門 編 『江戸買物独案内』 文政7年(1824) 横本3冊 すみだ北斎美術館蔵 通期展示(頁替あり)

江戸の敏腕プロデューサー、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)

北斎をはじめとする浮世絵師たちの活躍は、浮世絵版画を製作する彫師や摺師などの職人に加えて、世の中の流行りを見極める板元のプロデュース力によるところも大きかったようです。

寛延3年(1750)新吉原で生まれた蔦重こと蔦屋重三郎(初代)は、(安永年間(1772—81))に新吉原で本屋を開業し、天明3年(1783)に日本橋通油町に進出します。 黄表紙(きびょうし)や狂歌本(きょうかぼん)等の名作を次々と出版し、錦絵も版行。美人画の大首絵が大ヒットした喜多川歌麿(きたがわうたまろ)などを世に送り出しました。

しかし寛政3年(1791)に出版した山東京伝(さんとうきょうでん)の本が絶版となり、重い処罰を受けます。蔦重は、再起をかけて東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)の役者絵を出版しますが、寛政9年(1797)に数え48歳で病没しました。堂号は耕書堂(こうしょどう)、商標は富士山型に蔦の葉です。

出典:リビング東京Web

昇亭北寿 吉原仲ノ町花魁道中図 文化年間(1804—18)頃 絹本着色一幅、ほか展示風景 すみだ北斎美術館蔵 前期展示:3月18日(火)~4月20日(日)

初代蔦重プロデュース、北斎初期の役者絵《俳諧おた巻 植物の部》、《三代目坂田半五郎 鳥海弥三郎》、《初代中山富三郎 団三郎女房十六夜》

北斎が勝川春朗(かつかわしゅんろう)と名乗っていた頃の初期の役者絵《俳諧おた巻 植物の部》、《三代目坂田半五郎 鳥海弥三郎》、《初代中山富三郎 団三郎女房十六夜》です。すみだ北斎美術館では初公開となります。板元は初代の蔦屋重三郎。 メリハリの効いた描線の役者絵は後の北斎の画力を彷彿とさせるものがあります。

北斎は、初代蔦重からは、役者絵や「壬生狂言」「仁和嘉狂言」などの錦絵シリーズ、山東京伝や曲亭馬琴(きょくていばきん)の黄表紙の挿絵などを手がけ、蔦重なりに北斎を売り出そうとしていたことがうかがえるそうです。

北斎が狂歌絵本で画技を磨き、絵手本で活躍するきっかけに初代蔦重との関わりが影響しているとのこと。やがて馬琴の『南総里見八犬伝』など読本の挿絵を手がけ大ヒットとなります。

出典:リビング東京Web

葛飾北斎 左から、俳諧おた巻 植物の部 寛政(1789-1801)初期 中判錦絵、三代目坂田半五郎 鳥海弥三郎 寛政(1789-1801)初期 細判錦絵、初代中山富三郎 団三郎女房十六夜 寛政2年(1790)細判錦絵、すべてすみだ北斎美術館蔵 前期展示:3月18日(火)~4月20日(日)

二代蔦屋重三郎と北斎、豪華狂歌本『画本狂歌 山満多山(えほんきょうか やままたやま)』

初代蔦重のもとで番頭を勤め、初代没後は婿養子となり店を継いだ二代蔦屋重三郎。 北斎との関わりは初代よりも深かったとされ、北斎自画作の黄表紙や北斎挿絵の『画本狂歌 山満多山』のような豪華な狂歌本を多数出版しました。

本作は、色刷りが美しい狂歌絵本で、山の手の神社仏閣や名所等を描いています。

出典:リビング東京Web

葛飾北斎 『画本狂歌 山満多山』 享和4年(1804) 大本3冊 すみだ北斎美術館蔵 通期展示(頁替あり)

北斎の名を世界に知らしめた名プロデューサーズ

江戸時代、北斎の画業と重要な関わりを持った板元が多数いました。

《冨嶽三十六景》をはじめ北斎の代表的な名所風景画シリーズを出版した西村屋与八。江戸を代表する老舗板元の鶴屋喜右衛門。 名古屋を代表する板元で『北斎漫画』誕生に貢献した永楽屋東四郎(えいらくやとうしろう)。 「琉球八景」「千絵の海」「詩歌写真鏡」など長大判の花鳥画シリーズを手がけた幕末を代表する板元、森屋治兵衛(もりやじへい)など、後に北斎の名を世界的に知らしめた名作を世に出した名プロデューサーズです。

出典:リビング東京Web

「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」展示風景 すみだ北斎美術館

西村屋与八の功績、名作《冨嶽三十六景》の出版

宝暦年間(1751—64)から三代続いた江戸を代表する書物・地本問屋、西村屋与八。堂号は永寿堂、商標は山形に三つ巴。 馬喰町二丁目(現・中央区日本橋馬喰町)に店を構え、蔦重最大のライバルの初代と続く二代目与八は、鳥居清長(とりいきよなが)、歌川豊国(うたがわとよくに)、鳥文斎栄之(ちょうぶんさいえいし)の名作を出版するなどの業績を上げています。

北斎の名を世界へと知らしめた名作《冨嶽三十六景》を世に送り出し、浮世絵における風景画の確立に功績を残しました。

出典:リビング東京Web

葛飾北斎 右から、冨嶽三十六景 凱風快晴 天保2年(1831)頃 大判錦絵 通期展示(半期で同タイトルの作品に差替)、冨嶽三十六景 尾州不二見原 天保2年(1831)頃 大判錦絵 前期展示:3月18日(火)~4月20日(日) どちらもすみだ北斎美術館蔵

北斎スケッチ『北斎漫画』誕生、永楽屋東四郎

名古屋を代表する板元、永楽屋東四郎。堂号は東壁(璧)堂(とうへきどう)で、北斎の時代は二代目にあたるそうです。 世界では北斎スケッチとして知られる北斎の絵手本『北斎漫画』を手がけました。

全15編の絵手本で、人や動植物、風景など約4000図が納められているそうです。江戸時代には12編が、北斎没後の明治に入ってからも3編が刊行されています。

 

出典:リビング東京Web

葛飾北斎 『北斎漫画』 文化11~明治11年(1814-78) 半紙本15冊(通期展示)ほか、「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」展示風景 すみだ北斎美術館蔵

北斎にインスパイアされた現代アーティストと浮世絵版画制作

展示会場には、北斎にインスパイアされた現代アーティストの作品が展示されていました。

現代アーティスト、福田美蘭(ふくだみらん)の《冨嶽三十六景 凱風快晴》。アダチ版画研究所とのコラボ作品です。 北斎の《冨嶽三十六景 凱風快晴》の「凱風」から、赤富士の背景の積雲の様子が「北斎の感性にある怪異な表現」と結びついて積雲の変化を連想させたとして、その「畏れ」を積雲の中にだまし絵の手法のアナモルフォーシスで表現したそうです。

本作は、鑑賞体験コーナーで実際に作品を手に取って浮世絵本来の楽しみ方が出来ます。積雲の中に何が見えるかは会場で…。

江戸時代からの浮世絵版画の技術を受け継ぐ出版元と、北斎にインスパイアされた現代アーティストのコラボは江戸の板元と絵師たちをイメージさせました。

すみだ北斎美術館「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」は、5月25日(日) まで。 是非お出かけください。

出典:リビング東京Web

福田美蘭 左上、冨嶽三十六景 凱風快晴 令和3年(2021) 木版画 すみだ北斎美術館蔵、左下、冨嶽三十六景 凱風快晴 版木 令和3年(2021) アダチ版画研究所蔵、右下、冨嶽三十六景 凱風快晴 鑑賞体験コーナー すみだ北斎美術館蔵 通期展示

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、千葉大学墨田キャンパス産純粋はちみつ(1‚900円)、足袋下 北斎 神奈川沖浪裏 写し(690円)を購入。 千葉大学墨田キャンパス産のはちみつは粘り気がありながら優しくほどよい甘味です。(期間限定、無くなり次第終了のため在庫はご確認ください。)

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ すみだ北斎美術館

〇すみだ北斎美術館
URL:https://hokusai-museum.jp/
住所:〒130-0014 東京都墨田区亀沢2丁目7番2号
TEL:03-6658-8936(9:30-17:30 休館日除く)
交通:都営地下鉄大江戸線「両国駅」A3出口より徒歩5分、JR総武線「両国駅」東口より徒歩9分、都営バス「都営両国駅前」より徒歩5分、墨田区内循環バス「すみだ北斎美術館前(津軽家上屋敷跡)停留所」からすぐ

〇北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで
会 期:2025年3月18日(火)~5月25日(日)
※前後期で一部展示替えを予定
前期 3月18日(火)~4月20日(日)
後期 4月22日(火)~5月25日(日)
開館時間:9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日:毎週月曜日 ※5月5日(月・祝)は開館、5月7日(水)は休館
会場:すみだ北斎美術館 3階企画展示室
観覧料:一般 1,000円、高校生・大学生 700円、65歳以上 700円、中学生 300円、障がい者 300円、小学生以下 無料
※観覧日当日に限り、『北斎を学ぶ部屋』、常設展プラスもご覧になれます。
※一般以外の料金対象者は年齢等の確認できるものをお持ちください。
※障害者手帳をご提示の方は、付添の方1名まで障がい者料金でご覧いただけます。
※前売券及び当日観覧券の発売日・オンラインチケット販売方法や、各種割引の詳細、団体でのご来館、最新のイベント情報は、すみだ北斎美術館公式ホームページをご覧ください。

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