緑や水が身近で心地よい墨田エリア。江戸情緒が残る下町ならではの魅力がそこここにあります。押上駅をスタートして、まずは隅田川沿いに立つ桜もちの老舗へ。心地よい公園をのんびり散策、江戸切子の制作体験、和スイーツでひと休み、地元の偉大な画家・葛飾北斎ゆかりの美術館を鑑賞……。隅田川沿いや公園ではたくさんの桜も迎えてくれます。お花見の季節にぴったりのおさんぽコースを歩いてみましょう。
まずは、隅田川沿いに立つ「長命寺桜もち」の名菓を
押上駅のA3出口から、桜橋通りを15分ほど歩くと隅田川に突き当たります。その途中に広がる向島のエリアは、押上駅周辺の商業施設のにぎやかさとは打って変わって、料亭が点在する昔ながらの街並み。その向島の隅田川沿いに、創業300余年の老舗「長命寺桜もち」があります。
お店の前の墨堤(ぼくてい)通りは、江戸時代に8代将軍・徳川吉宗が桜の植林を命じたと伝わる隅田堤の跡。「長命寺桜もち」は、隅田堤の桜の葉を樽で塩漬けにした桜もちを初代が考案したのが始まりです。
春になると、今も江戸時代と変わらぬ美しい桜並木が隅田川沿いを鮮やかに彩ります。「桜もち」をテイクアウトして、川沿いの桜の下やすぐ近くの桜橋のベンチでお花見をしながらいただくのがおすすめです。
水戸徳川家下屋敷の遺構を活用した「墨田区立隅田公園」へ
桜を眺めながら、隅田川沿いを下流にしばらく歩くと、左手に「墨田区立隅田公園」が見えてきます。遊具、広場、魚釣り場などもある緑豊かな公園で、さんぽ途中にゆっくりするのにぴったりです。
江戸時代、ここは水戸徳川家下屋敷があった場所で、池などを有する庭園が今も公園の一部として活用され、当時の様子をしのぶことができます。公園には多種多様な植物とともに桜の木も植えられていて、こちらも人気の桜スポットです。
「墨田区立隅田公園」や隅田川沿いでは、2025(令和7)年は4月13日まで「墨堤さくらまつり」が開催され、4月6日までは向島の料亭の芸妓さんたちがお茶やお団子を提供する「向嶋芸妓茶屋」もオープン。江戸情緒が存分に楽しめる、向島ならではのイベントです。
「大横川親水公園」のさわやかな水際を通って
「墨田区立隅田公園」を出て東京ミズマチ沿いに進むと、南北に延びる「大横川親水公園」があります。
この公園は、大横川を埋め立てて造られたものですが、最初は魚釣り場、少し行くと水遊び場が現れ、またしばらく行くとアスレチックがあって…と、もともと流れていた川が形を変えて再生されているので楽しく散策できます。
「大横川親水公園」は総延長が約1800mあり、もっと南まで続いていますが、15分ほど歩いたら蔵前橋通りで公園の外へ。次は「すみだ江戸切子館」に向かいます。
「すみだ江戸切子館」で貴重な切子制作体験を
江戸切子は、江戸時代後期に南蛮渡来のガラス製品に切子細工を施したのが始まり。今も技術は引き継がれ、生産されている伝統工芸品です。
「すみだ江戸切子館」では、江戸切子の展示、販売がされているほか、江戸切子の継承と次世代の切子職人の育成も行われていて、職人さんの制作風景を見学することも。
また、実際に自分で切子細工を施し、オリジナルのグラスを作ることもできます。少しずつグラスを削りながら、自分の思うデザインに仕上げていくのはとても楽しい貴重な体験。出来上がったオリジナルのグラスは愛着を感じる一点ものです。
長屋をリノベーションした「北斎茶房」で和スイーツ
切子体験で集中力を使った後は、スイーツでひと休み。蔵前橋通りと並行している北斎通りまで南下して、「北斎茶房」に向かいましょう。
「北斎茶房」は開店から20年ほどの地元で愛されている名店です。長屋をリノベーションした建物は、天井が高く、居心地のよい空間。カウンター席にテーブル席、正面奥にはくつろげそうな小上がりがあります。
おすすめは、ていねいに炊いた丹波大納言のつぶあん、もちもちした白玉、もち米100%の最中の皮などが盛られた「茶房特製あんみつ【七福】」。そのほか、やわらかな食感の「とろりわらび餅」、抹茶寒天がたっぷりと入った「抹茶ぱふぇ」もぜひ味わってほしいひと品です。
ラストは葛飾北斎ゆかりの地に立つ「すみだ北斎美術館」
おさんぽの締めくくりは、世界から称賛される偉大な浮世絵師・葛飾北斎の作品や生涯を紹介する「すみだ北斎美術館」へ。北斎通りを西へ進むと、スタイリッシュな美術館の外観が現れます。このあたりは、北斎が生まれ、人生の大半を過ごしたゆかりの地です。
水や緑、下町情緒を身近に感じながら、時季によっては桜もたっぷり楽しめる墨田エリアのおさんぽ、おでかけしてみませんか。