京都市の中心、河原町から烏丸にかけては、カフェやパティスリー、ショコラトリーやジェラテリアなどがひしめく、スイーツ好きにとっては見逃せないエリアです。そこに、2024年秋にオープンした「Matricaria(マトリカリア)」は、ハイセンスなケーキと、京都らしい焼き菓子で、早くもファンの心をつかんでいます。自分へのご褒美はもちろん、手みやげやおみやげにも喜ばれそうですよ。
レトロ建築が立ち並ぶ三条通からすぐのパティスリー
「Matricaria」へは、京都駅から地下鉄で約5分の烏丸御池駅で下車します。明治時代からのレトロ建築が並ぶ三条通を東へ進み、堺町通を北へ曲がってすぐです。
ガラス越しに焼き菓子の並ぶテーブルが見える、白いタイルに覆われたビルの1階がMatricariaです。細長いアプローチの奥にある扉を開けてお店に入ります。
シェフパティシエの想いが形になったお店
店名のマトリカリアは、春から初夏にかけて咲く白い花のこと。焼き菓子のテーブルにも生けられています。花束に入ると隠れてしまうような、小さく清楚な花ですが、その花言葉は「お気に入りが集う喜び」。
店に並ぶお気に入りのお菓子、そのお菓子を囲んで集う人、そんなイメージを持って、シェフパティシエの秦 由衣子さんが名付けました。
店内の菓子工房は、ガラス張りになっており、そこには数々のスイーツを作る秦さんの姿
も。パティシエの手際よい職人芸についつい見入ってしまいますが、作り手にとってもお客様の顔が見えることは刺激や励みになるそう。
Matricariaのお菓子の特徴は、多彩な食感と素材へのこだわり。とくにクリーム類の軽い食感には、「アッという間に食べてしまった」「軽いので、いくつでも食べられる」という声が寄せられるそう。また、作るお菓子の種類により、数種類の小麦や砂糖も使い分けています。
シンプル&センスが光る生ケーキ
キャロットケーキは通年販売の定番スイーツ。ジンジャー、シナモンなどのスパイスが香る生地はしっとり、レーズンやクルミが食感のアクセントになっています。花が咲いたようなデコレーションは、クリームチーズとキビ糖を合わせたフロスティングクリーム。トッピングとしてテットドモアンヌというチーズがふわりとのります。
テットドモアンヌは、濃厚でそのままだと癖があると感じる人もいる、いわば大人のチーズ。薄く削られとろけるようなチーズからのかすかな塩気と、キビ糖のコクのある甘味とのバランスがよい一品です。見た目はシンプルだけど、食感と味のセンスが光ります。
いちごがサンドされたエクレアは季節限定の生ケーキ。サクサクのシュー生地に、メープルシロップの入ったカスタードが敷かれ、その上はスライスした真っ赤ないちご。ナッツの焼き菓子や、パルメジャーノチーズ、マトリカリアを思わせる白い小さな花をまとった姿は、春そのものです。
ここで味わいたいのは、ふわりとした食感の生クリーム。甘さが控えめなのはもちろん、「いくつでも食べられる」という声があることにも頷ける春風のような軽さでした。
京都らしいテイストの焼き菓子はおみやげに
京都らしい焼き菓子という意味では、九条ねぎを使ったサブレがおすすめです。七味がピリッとアクセントになった、ひと言でいうとスイーツとスナックの間のようなお菓子。
隠し味に使われている西京味噌とは白味噌のことで、その甘じょっぱさがサブレの味を深いものにしてくれます。また、発酵食品でもある味噌が入っているからか、チーズに通じるコクが感じられるのも面白いところ。
和菓子の素材を使った焼き菓子もありますよ。「桜とチーズのフィナンシェ」には、塩抜きし細かく刻んだ桜の塩漬けと白あんが混ぜ込まれており、花の香りとかすかな塩気が残ります。トッピングにはクリームチーズと形のままの桜の塩漬け。春の京都みやげにすると、話も弾みそうですね。
オープンからまだ半年も経っていませんが、京都のパティスリーとして、既に知る人ぞ知る存在となってきたMatricaria。そのため、人気の生ケーキなどは、午前中に完売してしまうこともあるそう。お目当てのスイーツがあるなら、できるだけ早い時間に訪れる方がよさそうですね。