1. トップ
  2. 『無理しないで』は絶対にダメ?!→『家族介護』でつい言ってしまいがち…意外な“NG声かけ”とは?【プロが監修】

『無理しないで』は絶対にダメ?!→『家族介護』でつい言ってしまいがち…意外な“NG声かけ”とは?【プロが監修】

  • 2025.5.20
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

大切な家族だからこそ、少しでも快適に、少しでも楽に過ごしてもらいたい――そのような思いで「家族介護」に励む方は多いでしょう。

しかし、介護経験がない中で手探りで始める場合、知らず知らずのうちに“危ない行動”を取ってしまっていることも少なくありません。

しかもそれが、本人や介護する側にとって大きな負担やトラブルにつながるケースも存在します。「“良かれ”のつもりがトラブルに」という事態は、誰にでも起こりうるのです。今回は、家族介護で陥りがちな“危険な行動”と、その回避法についてご紹介します。

実は危険?「何でもやってあげる」が招くリスク

介護を始めたばかりの頃、よく見られるのが「できることは全部やってあげよう」という姿勢です。

洗顔、着替え、食事の準備、トイレの手伝いなど、本人が少し手間取る様子を見ると、「待たせるのは悪い」「転んだら危ない」と、先回りしてすべて対応してしまう。実際、それが“愛情”だと思っている人が多いかもしれません。

しかしこの行動、自立を妨げてしまう原因になりかねません。人は、使わない機能はどんどん衰えていきます。自分で立つ、座る、歩くといった日常の動作を過剰にサポートしすぎると、本人の筋力や判断力が低下していく「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」を招くリスクがあるのです。

また、すべてを介助する側が引き受けることで、介護者自身の負担が急激に増大します。睡眠不足や慢性的な疲労、さらには腰痛などの身体的な不調も起こりやすく、介護うつといった精神的ストレスにつながるケースもあります。

「できることは本人にやってもらう」という意識は、決して冷たい対応ではありません。むしろ、本人の尊厳や身体機能を守るための大切な配慮です。手助けのバランスを見極めることが、家族介護では非常に重要になります。

ありがちな“声かけ”が本人の気持ちを傷つけることも

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

もう一つ見落とされがちなのが、「言葉かけ」のトラブルです。

介護の場面ではつい、「もうできないんだから無理しないで」「ちゃんとやってって言ったでしょ」といった強い口調になってしまうことがあります。でも実は、こうした言葉が本人の自己肯定感を下げたり、不信感を抱かせたりしてしまうことがあるのです。

本人は、身体が思うように動かないことに対して、すでに戸惑いや不安を抱えています。そこに追い打ちをかけるような否定的な言葉や命令口調は、信頼関係を壊すきっかけになりかねません。一見何気ない一言でも、本人に対して「家族に迷惑をかけている」「邪魔者扱いされている」と感じさせてしまい、介護拒否や情緒不安定の原因になることもあるのです。

また、家族だからこそ感情的になりやすく、遠慮がなくなってしまうのも介護の難しいところです。

怒りたいわけではないのについイライラしてしまい、後で自己嫌悪に陥る――そんな悪循環を経験した人も多いのではないでしょうか。

言葉ひとつで関係性が良くも悪くもなるのが、家族介護のリアルです。「見守る」「共感する」「励ます」といった声かけを意識するだけでも、本人の気持ちが安定しやすくなり、介護そのものもスムーズになります。

“やりすぎ”がトラブルを生む。介護は「支え合い」が基本

家族のために一生懸命やっていることが、気づかないうちに本人の自立を奪い、介護する側も疲弊させてしまう…。

まさに「“良かれ”のつもりがトラブルに」という事態は、介護現場では少なくありません。

だからこそ、介護では「やさしさ=全部やってあげること」とは限らないと心得ることが大切です。“手を貸しすぎない勇気”や“言葉を選ぶ思いやり”こそが、長く続く家族介護において最も重要な視点なのです。

必要以上に背負い込まず、地域の介護サービスやプロの力も積極的に活用して、「支えすぎない支え方」を選ぶこと。本人の意思を尊重しながら、家族も無理はしない。そんな介護のかたちが、これからは求められているといってよいでしょう。


監修:寺崎芳紀(株式会社アースソリューション 代表取締役)
東京都生まれ。明治大学政治経済学部卒業。大手介護事業会社にて数多くの介護事業所開発や運営に携わる。2007年より現職。経営コンサルタントとして医療機関・介護事業所運営のコンサルティングサービス等を行い、現在に至る。