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「完璧な映画」「絶対に観たほうがいい」たった1館の上映から日本アカデミー賞へ 日本の映画界を席巻する“傑作”

  • 2025.4.4

昨年8月に東京・池袋シネマロサで公開された『侍タイムスリッパー』。上映前に行われたカナダ・モントリオールの「ファンタジア国際映画祭」で観客賞金賞を受賞するなど、話題を集めていた本作は、口コミで話題を集め、日本の映画界を席巻。たった1館からの上映で始まったのだが、のちに全国348館に拡大し、現在でも上映が続くロングランとなった。

国内でも数々の映画賞を受賞し、今年3月には日本アカデミー賞最優秀作品賞・脚本賞の栄冠に輝いた。ユーキャン新語・流行語大賞の候補にもなった「侍タイ」は、Prime Videoでも配信開始に。視聴者からは、「オチまで含めて完璧な映画」「観てない人は絶対に観たほうがいい」といった声も届いている。劇場に何度も足を運ぶリピーターも続出した本作の魅力を紐といていきたい。

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(C)SANKEI

主演・山口馬木也が「本当の侍に見えた」

本作は、監督業と農家という二刀流で活動する安田淳一監督が、私財を投じ自主制作した。脚本を読んだ関係者が制作を後押しし、東映京都撮影所の協力のもと完成。本作は、2007年の時代劇撮影所にタイムスリップした幕末の侍が主人公だ。右も左もわからない現代で、出会った人たちに助けられながら、剣術を活かして「斬られ役」として奮闘していく姿が描かれている。

主人公・高坂新左衛門を演じたのは、NHK大河ドラマの常連でもある俳優・山口馬木也。進化に驚き、白米のおにぎりのうまさに感動…そんな現代に戸惑いながらも、幕末に思いを馳せ、精一杯生き抜こうとする侍の姿は、観る人に笑顔、そして涙をもたらした。

SNSでは、「本当の侍に見えた」「幕末の武士そのもの」「演技の上手さに驚愕」と称賛の声が相次いだ。山口は、役者生活25年で自身初となる長編映画での主演作。本作への出演により、第67回ブルーリボン賞主演男優賞を受賞した。

なかでも、話題となったのが冨家ノリマサ演じる風見恭一郎との殺陣のシーンだ。SNSでは「本当にヒリヒリした…」「真剣勝負圧倒された…」「生まれてから見てきた中で一番ハラハラしながら見た殺陣」との賛辞の声が続出していた。観客をスクリーンにくぎ付けにして、笑い・感動・緊張感を共有できる体験となった。これが、多くの人の足を映画館に運ばせる大きな魅力になった。

侍を取り巻く人々の人情味にホッコリ

手に汗握るチャンバラ活劇であり、コメディ要素も多い本作だが、にじみ出る人情味もまた魅了される理由のひとつ。タイムスリップした侍を記憶喪失の現代人だと考え、住職夫婦が面倒を見る。そして時代劇ドラマの助監督・優子(沙倉ゆうの)らが、彼を支える。守ろうとした江戸幕府が、とうの昔になくなった事実を知り、がく然とし一度は死を覚悟した新左衛門。しかし、新左衛門はそうした心優しい人々の助けで少しずつ元気を取り戻していく。

これまで培った剣術を「斬られ役」に生かそうと撮影所の門をたたくのだった。住職夫婦の味わい深い佇まいに、「愛とユーモアに溢れた住職夫婦大好きです」「リアクション最高」「微笑ましくて心の中でがんばれ…負けるな…って思いながら見守ってた。いつの間にか住職夫婦と同じ気持ちに」という声が届いていた。

また、優子にも「昭和マドンナ感が良きです!」「ヒロインというよりもマドンナが相応な立ち位置ではなかろうか?」「みんな大好き優子殿」と微笑ましい声が多数寄せられていた。

配信もスタートし、さらなるファンも増えそうな予感大の本作。SNSで「愛に満ちた優しい物語だったなあ。観終わってからも胸の内がじんわりと温かい」「人情味と爽やかさがあって観終わると清々しい気分に」という声も…。

観終わった後に心を豊かにしてもらえるような充実感を感じさせてくれるのも魅力だ。ぜひこの機会に、本作に触れてみてほしい。



映画『侍タイムスリッパー』

ライター:小松加奈
ライター/編集者。音楽・映画・ドラマ・アニメなどのエンタメ系を中心にインタビュー/レビュー/コラム記事などを手掛ける。