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アニメオリジナル描写に反響!アニメ『カラオケ行こ!』は、実写映画に続くヒットとなるか?

  • 2025.7.29

中学生3年生とヤクザが築く奇妙な友情

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(C)2025 和山やま/KADOKAWA/アニメ「カラオケ行こ!」製作委員会

主人公・岡聡実(CV:堀江瞬)が中学生最後の合唱コンクールの日、祭林組若頭補佐、いわゆるヤクザである成田狂児(CV:小野大輔)からカラオケで歌の指導をしてくれと頼まれてしまう。始めは軽くあしらおうとする聡実だが、狂児はしつこく、聡実はしぶしぶカラオケ指導をすることに。聡実は、合唱部の部長として最後の活動となる合唱祭を前に、声変わりにより高い声が出なくなり始めていることに悩んでいた。

第1話では、2人の出会いと小気味良いやり取り、合唱部部長としての聡実の悩みの片鱗が描かれた。また、落ち込む聡実に対して、狂児が無意識に手を差し伸べるような描写もあった。

アニメと実写映画の表現の違いに注目

原作が1巻分の長さしかないこともあり、映像化する際には少なくとも何らかのオリジナル要素を入れることが必要になる。実写映画の場合は、映画という媒体になじませるために聡実のモノローグをカットしており、それによって聡実の感情を分からせる術として家族との描写や“映画を見る部”というオリジナルの部活の描写を入れている。原作からの改変という意味では、ある意味挑戦的な脚本であったが、聡実が言葉にできない鬱憤を齋藤潤は見事に表現していた。

アニメの場合は、全4話各30分であること、アニメというイラストで表現できるという実写映画よりも漫画により近い表現であることから、基本的には漫画と同じような構成で進行している。一方で、画面に変化をつけるために、漫画や映画でも描かれなかったさまざまなカットが挟み込まれている。例えば、2人の初対面となる狂児が祭林組のカラオケ大会の説明をする1回目のカラオケ指導の場面では、カメラワークを細かく切り替えて2人の会話をさまざまな角度から描いており、合間には狂児の会話の内容を具体的に表現するカットも使われている。なるべく画面に変化を付けることで、視聴者を惹きつけたいという意識が感じられる。

また、SNSでは原作漫画の表紙の絵を完全再現する描写が反響を呼んだ。自分の声変わりに悩み、雨に濡れてこのまま風邪をひけば大会に出なくてよくなるかもしれないと自暴自棄になりかけた聡実に、狂児が傘を差しかけ、歌の先生として頼っているかのような言葉をかける。実写映画でも中盤に合唱部部長としてのプライドを傷つけられて落ち込む聡実が、狂児から頼られたことでカラオケ指導を続行するという流れがあるが、アニメでは狂児が聡実の逃げ場所の一つとして機能していることが第1話の段階で描写されているのだ。

実写映画は、映画という媒体に合わせたオリジナル要素をふんだんに盛り込みつつ、2人の友情を通した聡実の成長や意識の変化を描いている。一方で、アニメは第1話の段階で狂児から頼られることで少し気持ちを持ち直す聡実の感情が描かれており、原作漫画とほぼ同じ構成で進むことを踏まえれば、実写映画よりも原作に忠実に2人の仲の深まりを描いていくことになると予想できる。

たった1巻の原作漫画に対して、映画、アニメのそれぞれで活躍するクリエイターたちが作品愛を元に練りに練った解釈を享受できるというのは、そうそうなくありがたいことと言える。全4話となるアニメ『カラオケ行こ!』が、どんな味わいを残すのか、楽しみに観ていきたい。



カラオケ行こ!
ABEMAにて毎週木曜日夜10時より最新話を無料放送中
[番組URL]https://abema.tv/video/title/25-290
【(C)2025 和山やま/KADOKAWA/アニメ「カラオケ行こ!」製作委員会】

ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202