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“やりたい放題”のパロディネタ作品『おそ松さん』が10年も愛され続けるワケ  “第4期の放送直前” 、ファン化の秘話

  • 2025.7.8

2015年の放送開始から社会現象を巻き起こした、赤塚不二夫原作のテレビアニメ『おそ松さん』シリーズ。放送10周年という節目を迎える今年、待望の第4期が7月8日より放送開始となる。放送当初、これほど長く愛されるシリーズになると予想した人は少なかったかもしれない。

『おそ松さん』シリーズの魅力とは何か、なぜこれだけ長く愛されるコンテンツとなったのか、振り返ってみたい。

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(C)SANKEI

『おそ松さん』シリーズに人はなぜ熱狂したのか

『おそ松さん』シリーズは、原作漫画である『おそ松くん』のメインキャラクターである、松野家の6つ子が大人になった姿を描いたギャグアニメだ。20歳を過ぎてもクズでニート、という大胆な設定を施し、下ネタやパロディネタも辞さない強烈なギャグが満載で、放送開始とともに大きな話題となった。

その1期第1話の衝撃はいまだに語り草だ。『うたの☆プリンスさまっ♪』や『進撃の巨人』シリーズなど、ありとあらゆるヒット作のパロディをふんだんに盛り込み、やりたい放題の内容でネットの話題をさらった。しかも、その第1話は、あまりに過激なパロディが原因か、配信サイトで配信中止となりBlu-ray&DVDパッケージにも収録されない幻の作品となってしまった。

しかし、その後もやりたい放題はかわらず、ニートで童貞の彼らは、下ネタも連発するしパロディも止めなかった。そんなやりすぎな内容で、毎週放送の度に話題となり、人気はどんどん上昇していったのだ。

だが、その人気を支えたのは派手なギャグやパロディばかりではない。個性を持った6つ子たちの関係性に女性ファンが熱狂した。むしろ、こちらの要素こそが『おそ松さん』シリーズを長寿コンテンツにした大きな要因だろう。

なにしろ主要キャラクターが6人いて、それぞれの関係性に無限に想像を膨らますことができる。長男だけど頼りないおそ松、なにかとカッコつけたがるカラ松、一番の常識人でアイドルオタクのチョロ松、皮肉屋な一松、常人には理解できない十四松、腹黒かわいいトド松。この6人がどんな組み合わせで行動するのか、その組み合わせによってそれぞれのキャラクターの意外な一面が見えてきて面白い。この”余白”こそが、ファンを夢中にさせたのだ。

アニメ、映画、舞台と人気を広げる『おそ松さん』シリーズ

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※Google Geminiにて作成(イメージ)

『おそ松さん』シリーズは、テレビアニメのみならず、多面的に様々なメディア展開をしている。これまでにテレビアニメは3シリーズ、劇場アニメを3作、そして実写映画に舞台化までされており、そのファン層を拡大している。

テレビアニメではだめな人間っぷりが強調されるが、劇場アニメ第1作『えいがのおそ松さん』では、6つ子がタイムスリップして、高校時代の自分たちと対面するという展開を通して、成長していく喜びや生きることのすばらしさを描いて驚かせてくれた。

実写映画はそのキャスティングで世間を騒然とさせた。トップアイドルグループのSnow Manが6つ子とオリジナルキャラクターに扮し、クズでニートな童貞を演じて話題となった。

舞台作品は2016年から続いており、演劇パートとライブパートで構成された『おそ松さん on STAGE』シリーズに喜劇『おそ松さん』、テレビアニメのパロディネタとして登場したイケメンになった6つ子から生まれた6人組ユニット・F6が行うライブシリーズ『F6 LIVE TOUR』など多彩な展開を行っている。

また、実写映画第2弾の制作が発表。今回6つ子を演じるのは、Aぇ! groupのメンバーと、関西ジュニアの西村拓哉。再び若手アイドルがキャスティングされることとなり、若手アイドルの登竜門のようになりつつある。

4期はどんな内容に?

待望のアニメ新シリーズとなる第4期がどんな内容になるのか想像もつかない。メインビジュアルは夏をイメージしたものとなっているが、PVでも「最高にくだらない夏が始まる」と放送時期に合わせて、夏を満喫する6つ子が描かれることになるようだ。

 

 

ダメな6つ子を描き続けてきたかと思えば、劇場版では彼らの成長を描いてファンを泣かせるなど、『おそ松さん』シリーズは常に私たちの予想を軽々と超えてきた。今回もあっと驚くような展開と、抱腹絶倒のギャグで最高の夏にしてくれるに違いない。


ライター:杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi