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なぜ46年も愛される? 今もなおファンを魅了する“ガンダムの世界観”と4月放送の新シリーズへの期待

  • 2025.3.26

1979年、今から46年前に放送された『機動戦士ガンダム』。そのシリーズは今なお終わることなく、新たな物語が生まれ続けている。特に今年は大きな盛り上がりを見せており、1月17日から劇場での公開が始まった『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-(以下ジークアクス・ビギニング)』は、4月から放送予定のテレビシリーズの数話の先行上映にもかかわらず興行収入30億円を超える大ヒットを記録。本放送への期待がさらに膨らむこととなった。

なぜ『ガンダム』シリーズはこれほど長い間に渡って愛され、新作が作られ続けてきたのだろうか、その魅力の源泉について改めて振り返ってみたい。

『ガンダム』の考え抜かれた世界観

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(C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム』がそれまでのロボットアニメと異なっていたのは、奥行きのある物語とドラマ、細部まで考え抜かれた緻密な世界観にある。巨大な人型ロボットが動き回るというのは、大きな嘘ではあるが、その嘘に強い説得力を与えるために、作品の細部にわたるまでリアルを突き詰めるように作られた作品だ。

その中で、ロボットを兵器として扱う戦争が描かれ、人の生き死にも発生する。そのリアルな世界観と生々しさも感じさせる登場人物たちの台詞のやり取りで、これがアニメであっても絵空事ではないと視聴者に感じさせることに成功した作品だったのだ。

宇宙に進出した人類が暮らすスペースコロニーという発想や、モビルスーツという巨大な兵器がどのような構造で動いているのかということも緻密に考え抜かれ、作品世界の政治状況などの設定にも気を配り、架空の世界なのに、歴史を感じさせて本当の出来事のように思えてくる。その気になればいくらでも物語を生み出せそうなくらい、最初に作られた世界観がしっかりとくみ上げられていることで、多くの人がこの世界に熱狂し、キャラクターたちをリアルな存在として感じることになったのだ。

その中に「ミノフスキー粒子」とか「ニュータイプ」とか聞きなれない言葉が出てきたりする。それが何かわからなくて不快にさせることなく、それが何なのかと知りたいという意欲を湧き起こさせる。それはリアリズムの徹底によって生まれた説得力ある作品だったからだ。

また、ただ悲惨な争いを見せるのではなく、敵陣営も味方陣営も欠点を抱えて、絶対正義のない世界を描いているのもポイントだ。人はいつになったら争いを止められるのかと問いかける内容でありながら、人類の革新を謳う「ニュータイプ」という概念に希望を託すような世界に多くの人が惹かれることになった。

『ガンダム』はアニメであっても、大きな現実の世界の一部を切り取ったかのような印象を視聴者に与える力があった。今、見ている物語はこの世界のほんの一部であり、もっと広大に広がっているという感覚を与えられると、人は色々想像したくなるものだ。そのために、どんどん続編が生まれることになり、今もなおクリエイターの想像力を刺激し続けているのだ。

とりわけ、第一話「ガンダム大地に立つ!!」は、非常に洗練されており、視聴者を作品世界に引きずり込む巧みな演出と脚本であるとアニメ評論家の藤津亮太は評している。段取り的にならずにいきなり出来事が進行していくような「進行中の出来事にカメラを放り込んだ」見せ方になっていて、視聴者の意識を「フレームの外」の拡がりを意識させるようになっていると藤津氏は語る(著・藤津亮太『富野由悠季論』筑摩書房、P119~121より)。

こうして広大な世界に放り込まれた視聴者もクリエイターも刺激され、様々な物語をその後、何十年にも渡って生み出すことになったのだ。

欠点もある魅力的なキャラクターたち

『機動戦士ガンダム』は欠点も抱えた登場人物たちの生々しい魅力にあふれた作品だ。内向的な少年アムロがモビルスーツのパイロットとしての才能を開花させていく中で、多くの責任を背負わされていき、反発しながらも成長していく等身大の人間らしさが、視聴者の心を捉えた。

また、アムロの宿命のライバルとして登場するシャア・アズナブルも冷静沈着なカリスマという側面と個人的な復讐心と家族への屈折した感情、女性とのトラブルなどを抱える人間味あるキャラクターとして描かれ、作品人気を牽引する存在となった。『ガンダム』は人間関係のドラマもリアリズムにこだわり、「親父にもぶたれたことないのに」や「認めたくないものだな、若さゆえの過ちというものは」などという名セリフを数々生み出すことになったが、そんなドラマとしての魅力もふんだんに持っている作品だ。

『ジークアクス』にかかる期待

そうした深い要素が感じられる『機動戦士ガンダム』第一話を、『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明も絶賛していると藤津氏は『富野由悠季論』で紹介しているが(同著P142)、1月に公開された『ジークアクス・ビギニング』でそんな第一話を大幅に改変していることで、観客を驚かせた。

『ジークアクス』という作品は、『機動戦士ガンダム』の架空戦記という体裁を採っており、第一話のエピソードでガンダムに乗り込むのがアムロではなくシャアだったら、というifの展開を描いている。

すでに数多くの物語を生み出してきた「ガンダム」シリーズだが、この架空戦記という発想によって、新たな物語と世界の広がりを展開できるようになったと言える。このifの世界は正規の『機動戦士ガンダム』とどの程度異なり、どの程度共通しているのか、ファンとしては気になっているところだろう。

こういう大胆な発想をしても作品が壊れることがないのは、それだけ富野由悠季監督が中心となって生み出した「ガンダム」の世界観が強固で緻密にくみ上げられているからだ。奥深い『ガンダム』の世界はこれからも拡大・発展を続けていくだろう。

ABEMA「ガンダム特集」
ABEMAは、ガンダムシリーズ45周年を記念し、「ガンダム特集」を期間限定で実施! 平日毎日「ガンダム」シリーズを順次無料放送するほか、毎週土日には、シリーズ作品の全話無料一挙放送を行っている。
[番組URL]https://abema.tv/tag/b19c5575-609e-4ed9-b7c5-2ffd228b6e36
※各シリーズ、放送後1週間は、放送エピソードを全話無料で視聴できます。
(C)創通・サンライズ



ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi