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難解な作品が人気となった“理由”とは?SNSでも話題となった“アニメだからこそ”出来たこと

  • 2025.3.26

3月15日に最終話を迎えたTVアニメ『チ。 ―地球の運動について―』。本作は漫画を原作としつつ、数々の演出によってアニメならではの面白さが生まれた作品だった。本稿では、『チ。』の魅力をさらに引き上げた“3つのアニメ演出”に迫りたい。

合計“4回”!章ごとに変化するオープニング

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

『チ。』は主人公交代制の作品であり、主人公が死ぬと次の章に移り変わった。そして、章が新しくなるのと同時に変化したのがオープニングだ。第1章にて主人公・ラファウの顔のアップから始まっていたオープニングは、第2章ではオクジーに変化。第2章から第3章に切り替わったときは、カットが大幅に追加された。

オープニングにて建物の間にたたずんでいたヨレンタの姿は、行方がわからなくなった第2章を最後に消えてしまう。しかし、第3章からヨレンタは大人になって再登場し、オープニングでも異端解放戦線の組織長になった後ろ姿を見せた。ストーリーに合わせ、大幅なカットの追加だけでなく細かい点も変わったオープニング。全25話のなかで4回も大きく変化し、章が変わるたびに私たちを楽しませてくれた。

オープニングが一番変化したのは、最終章だ。キャラクターのカットが交互にはさまる冒頭は、キャラクターではなく真っ暗な画面に。加えて、これまで登場してきたメインキャラクターたちが次々に映し出されるという、最終章にふさわしい演出が。オープニングから展開を予想する視聴者も多く、本編とあわせて重要な考察要素となっていた。

エンディングにも変化があったが、歌唱アーティストは2クールを通してロックバンドであるヨルシカが務めた。1クール目では「アポリア」、2クール目では「へび」がエンディングテーマになったのだ。『チ。』の“変化する部分”と“変わらない部分”のバランスが絶妙だ。

最終話後のモザイクアートにもいきた画面の“暗さ”

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

『チ。』のアニメにおいて、ほとんどのシーンは真っ暗闇だった。星がきらめく夜のシーンが多いのが原因だろう。本作で描かれた時代は、現代ほど街のあかりが多くない点も理由として考えられる。だが、それにしても真っ暗闇なのだ。

しかし、その暗さは星空の美しさをよりいっそう際立たせた。暗闇が光を強調させたことで、星空に主人公たちが魅了された説得力が生まれたように思う。印象的なセリフやシーンのときにパッと明るくなる演出も効果的に使われていた。

最終話が放送された後、X(旧Twitter)にて『チ。』のアニメ公式アカウントが本作の場面を集めてつくったモザイクアートを投稿。黒い背景でつくられたモザイクアートを構成する一つひとつに、これまでの暗闇のカットたちがたくさん使われていた。暗い画面の演出は、『チ。』らしさを醸し出すとともに、モザイクアートにも活用されたのだ。

“声”で正体判明?SNSでも考察が巻き起こる

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

漫画とアニメで大きく違う点といえば、「声がついているかどうか」だ。『チ。』では、アニメ化してついた声によって謎の人物の正体が判明した場面があった。たとえば、ヨレンタの父が初登場したとき。顔が隠されていたため、原作では誰なのかわからなかった。だが、アニメでは津田健次郎の声によりヨレンタの父がノヴァクだと早々に判明し、SNSでも話題になっていた。

また、最終章にてアルベルト・ブルゼフスキが話した司祭の正体は、原作でははっきりと明かされていなかった。しかし、アニメのエンドクレジットにて、司祭役の欄に間島淳司の名前が。間島は、第2章で登場していた新人の異端審問官・レフの声も担当している。つまり、司祭の正体は同じ声優が務めるレフだと受け取れる。

オープニングとエンディングの変化や、モザイクアートにつながった画面の暗さ。加えて、考察しがいのある声。アニメならではの演出によって面白さがパワーアップした『チ。』は、難解な内容にもかかわらず人気作となった。演出と作品の持ち味の両方をいかした、すばらしいアニメ化だった。

チ。 ―地球の運動について―
ABEMAでは『チ。 ―地球の運動について―』毎週土曜日夜24時10分より無料独占・見放題最速配信
放送後1週間、最新話を無料で視聴できる。
[番組URL]https://abema.tv/video/title/568-32
【(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会】


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari