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受験の朝に大ゲンカ! 【中学受験】を完走した先輩ママのリアルな体験談

  • 2026.11.3
cocreco写真:yamasan/イメージマート

今回お話を伺った田中さん(仮名)は、ライターとして中学受験に関する取材をたくさんこなして知識はありましたが、それでも「実際に親として伴走すると、思いどおりにならないことばかりでした」と振り返ります。

しかし、転塾やパパの言葉をきっかけに「親が背負い込みすぎない」伴走の形を見つけました。本記事では田中さんの実体験から、親子が笑顔で乗り切るヒントをお伝えします。

佐野倫子(さの・みちこ)

東京生まれ、早稲田大学卒。現在、東京大学大学院情報学環教育部在学中。航空業界・出版社勤務を経て作家・教育ジャーナリストに。おもな著書に『中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと』(講談社)、『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)。2人の男の子の母。現在中受伴走2周目中。

小4からの転塾 塾選びで大切にしたい「子どもの個性」への理解

──まず、塾に通い始めたきっかけから教えてください。

田中さん:小学3年生の4月に日能研に入りました。最初は学童代わり、という気持ちが強かったですね。近くにはサピックスもありましたが、親のサポートが大変と聞いたことがあったので、日能研を選びました。

しかし通ってみたら、うちの子は宿題をちっともやらなくて……。秋ごろ、塾に相談したときには、「家で勉強をしないのでは難しい」という話になり、本人も塾に行きたがらなくなってしまって。結局、日能研に通ったのは半年ほどでした。

──その後は、どうされたのでしょうか。

田中さん:夫に相談したら、転塾先を探してくれました。四谷大塚やグノーブルなど、いろいろな塾の説明会に夫が行ってくれたんです。そこで選んだのが、小規模で手厚いと評判だったスタジオキャンパスでした。3年生の2月(新4小2月)から通い始めました。

印象に残っているのは、面談で「どんなことが好きで、どんなお子さんですか?」と聞いてくださったことです。先生方が子どものパーソナリティーに関心を持ってくださるところがよかったですね。

【より良い中受伴走のためのメモ】

塾選びでは、合格実績やカリキュラムに目が向きがち。でも、宿題が進まない子にどう声をかけるのか、勉強以外の姿にも目を向けてくれるのか。毎日通う子どもにとって、先生がどう働きかけてくれるかを事前に知っておくのは大きいものです。「うちの子が課題をしないとき、どんな相談ができるだろう」など、順調にいっているときだけでなく、つまずいたときの対応も説明会で聞いておくとよいでしょう。

宿題をやらない子どもにイライラ 親の成功体験を押し付けないコツ

cocreco写真:yamasan/イメージマート

──受験生活で一番大変だったのは、いつでしたか。

田中さん:4年生ですね。一番、私が直接的な伴走をしていた時期でもあります。家で一緒に勉強して、理科や社会をクイズにしたり、漢字をホワイトボードに書いたりしていました。ただ、できなかった問題に付箋を貼って、進捗を細かく管理する、というようなことは、私にはできなかったです。

というのも、私は常に勉強は自主的にやるタイプだったので、親がガミガミ言うことに違和感があって。大学もそこまで苦労せずに国立大学に進学しました。だからまったくやらない子どもを見ているともどかしくて……。

でも娘は言わないとやらない子なので、とにかく「宿題だけはやりなさいよ!」と、必死に子どもを机に向かわせようとしていました。

5年生になったぐらいで、ようやく「娘と自分とは違うんだ!」という認識が持てるようになりました。宿題はやらなくても、「性格も明るいし、とってもいい子」と、勉強と切り離して思えるようになったのです。

【より良い中受伴走のためのメモ】

親御さんが勉強に対して成功体験があると、「このくらいやればできるはず」という基準が、知らず知らずのうちに内在しています。でも、その基準が我が子に当てはまらないことは往々にして起こり得ます。「自分ならできた」という考えから少し離れて、目の前の子どもがどこで困っているのかを見ながら伴走することが大切です。

小5の壁の乗り越え方 勉強は塾に任せて親は「心のサポート」へ

──5年生で考え方が変わり、伴走に変化はありましたか?

田中さん:5年生では、塾に「丸投げ」すると決めました。家で私が教えると、喧嘩になるばかりだったので、これは時間がもったいないと痛感して。週5日、塾の授業と自習室に行っていましたね。6年生になると週7日。6年生では、同じ塾の個別指導も利用していました。算数は最後まで苦手でしたけれど、諦めずに取り組みました。

【より良い中受伴走のためのメモ】

「塾に任せる」と聞くと、親が手を抜いているように感じる方もいるかもしれません。でも、親子でぶつかり続けるより、先生に間に入ってもらったほうが進むことも。

また、自習室に通う日数が多ければそれでいい、ということではありません。わからないところを質問しているか、通塾が多くて疲れていないか、などの塩梅は親が観察する必要があります。学習そのものは塾に任せ、親は塾とコミュニケーションを取り心のサポートに徹する。そんな役割分担も立派な伴走です。

夫婦の役割分担 客観的なパパの言葉が中学受験を救う

──転塾先を探してくださったパパの様子はどうだったのでしょうか。

田中さん:勉強には一切タッチしませんでした。でも、塾選びや学校選びなど、大きな方針には積極的にかかわってくれて、それはとても助かりました。

私が「なんでできないの……!」と子どもの学習状況を見て落ち込んでいると、夫は「小学生だし、頑張ってるよ!」と言ってくれるんです。子どもの成績を上げることに関心が強くなかったのかもしれませんが、よい距離があったのだと思います。

──日々の勉強の様子をつぶさに見ていると、どうしても「まだできていないこと」が目に入りますものね。そこから少し離れているパパには、別の姿が見えていたのかもしれません。

田中さん:土日にはどんどん学校見学にも行ってくれました。夫は地方出身なので、「こんなに学校を選べるなんて恵まれている!」とポジティブで。「娘にはここが合っているよ」と言ってくれたりもしました。

学校選びは「ピンとくる」はずだったけれど……

cocreco提供:Tomoharu_photography/イメージマート

──志望校は、どのように決めましたか。

田中さん:学校はそれはたくさん見に行きました。「ピンとくるかどうか」を大事にしようと思っていたんですけど、なかなかピンとこなくて……。

そこで、まずは親が「いいかな」と思った学校を絞り、最終的には子どもが見て決める、ということにしました。最終的に、学園祭や体験授業で、理科の授業に惹かれたと言っていたところにしました。

【より良い中受伴走のためのメモ】

志望校が決まるきっかけは、必ずしも劇的な「ひと目ぼれ」とは限りません。「理科の体験が楽しかった」という感想にも、その子が学校で過ごす時間を想像する手がかりがあります。見学のあとに「この学校気に入った? 行きたい?」と結論を急ぐより、「どこが楽しかった?」「何が印象に残った?」と聞いてみるとヒントがあります。親が大切にしている条件と、子どもの心が動いた場面。その両方をもって志望校を考えていけるといいですね。

入試当日の朝にも 思いがけない出来事が

──いよいよ迎えた入試本番は、いかがでしたか。

田中さん:実は2月1日の朝に、夫と娘がケンカをしてしまったんです。受験会場には夫が付き添うはずでしたが、いざ家を出るというとき、娘が私に少し反抗的な態度を取ったことに夫は腹を立てて。「お母さんにそんな口をきくな!」と。

それは普段ならありがたいのですが、第一志望の受験の朝ですから、まずいと焦りましたね……。急遽私が付きそうことになりました。きっと夫も娘も緊張していたのだと思います。

──よりによって受験日の朝に! その後、気持ちは落ち着きましたか。

田中さん:受験学校へ歩いて向かううちに、娘は気持ちが落ち着いたようです。ホッとしました。ただやっぱり緊張はしていて、入り口で別れたときも、何度も振り返っていましたね。夫もあとから反省していました。

この2月1日の午前の入試で合格をいただけて。娘も気に入っている学校だったので、「これで入試は終わり!」となりました。

「さらに偏差値の高い学校に2日以降も挑戦したら?」と促したのですが、まったく耳はかしてくれませんでした。最後まで私が舵を取るということはありませんでしたね……。

【より良い中受伴走のためのメモ】

受験当日は、親も子も平常心ではいられないことがあります。田中さんのように、いくら準備しても想定外のことが起こるもの。親も完璧ではないとはいえ、当日の心はしっかりと整えておきたいですね。

受験を終えて思うこと

cocreco写真:アフロ

──受験前に戻れるとしたら、変えたいことはありますか。

田中さん:学習習慣を、もう少し低学年のうちにつけておけばよかったと思います。日能研に入った時点で、勉強の習慣が全くなかったのは反省点です。当時は、「受験勉強が始まったらどんどんやるだろう」とイメージしてしまっていた、という点も含めてですね。

──一方で、やっておいてよかったと思うことは何でしょうか。

田中さん:本を借りて、常にたくさん家に置いておいたことですね。本を手に取れる環境をつくっておいたおかげで、読書が大好きだったので、それには助けられたと感じます。

───◆───◆───子どもを追い詰めたくない。自分の価値観を押しつけたくない。頭ではそう思っていても、我が子の宿題が終わらなければ焦るし、成績が伸びなければ心配になる。そのギャップに親は悩みます。

だからこそ、先生を頼る。自分とは違う見方をする家族の言葉を聞く。そして我が子のことを少し客観的に観察してみましょう。

伴走の仕方は、途中で変えてもいいんです。すべてを親が引き受けなくてもいい。今、悩んでいる保護者に、田中さんの経験が届くことを願っています。

取材・文/佐野倫子

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cocreco『中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと』(講談社+α新書)著:佐野倫子
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